気候テックスタートアップOverstoryは10月19日、シリーズB(資金調達ラウンド)で1,400万ドル(約21億円)の資金を調達したと発表した(*1)。調達した資金を元手に、山火事や停電リスクの軽減に資する人工知能(AI)を活用した植生管理(#1)製品の導入拡大を目指す。
今回の投資ラウンドは、米フェイスブックの共同創業者エドゥアルド・サベリン氏が立ち上げたBキャピタルが主導した。国際環境NGOの米ザ・ネイチャー・コンサーバンシーや気候変動に関心の高いトップクラスの投資家も参加している。これにより、Overstoryの資金調達総額は2,500万ドルに達した。
新たな投資を受け、Overstoryは地球上のあらゆる樹木の位置、大きさ、健康状態、樹種に関する洞察を提供するグローバル植生インテリジェンス・プラットフォームの販売拡大を加速させる。
同社は、ユーティリティ(電力・ガス・水道)向けに、AIを活用したより効率的な植生管理ソリューションを提供する気候テックスタートアップだ。同ソリューションは、山火事の軽減や生物多様性の保全などへの貢献が期待されている。
設立から5年余りで、公益事業会社向けAIベースのソリューション分野で世界的リーダーとなる。カリフォルニア州を拠点とするPG&Eを含む米国の上位5社のうち3社を始め、カナダ、ブラジル、欧州のトップ公益事業会社も顧客とする。
Overstoryによると、同社の特殊なAIは、既存のデータやワークフローと統合されているため、電力会社の顧客は、山火事や停電のリスクがある送電線沿いの地域を即座に見つけることができるという(*1)。
同AIアルゴリズムは、世界中の70万マイル(約112万キロメートル)を超える送配電専用用地(T&R right-of-way)を対象に、樹木医や林業の専門家とのパートナーシップの下で開発され、より正確な洞察を提供する。
Overstoryのソリューショを活用する米国の送配電事業者は、年間平均停電時間(SAIDI)を含む効率性の向上やコスト削減を実現することで、投資リターンは13倍に達する(*2)。
2023年7月は世界史上最も暑い月となった。ハワイ・マウイ島からギリシャまで山火事が猛威を振るっている。そのような中、気候変動や生物多様性に迫る危機の解決に資するOverstoryのような高度な植生管理技術への需要が高まっている状況だ。
世界のユーティリティ植生管理市場は、2022 年の 242 億 8,000 万ドルから 2029 年までに 392 億 7000 万ドルまで、7.1% の 年平均成長率(CAGR) で成長すると予想されている(*3)。
着実な成長が見込まれる市場において、Overstoryはまず、強みとするAIを活用した衛星データの解析により、電力会社へ植生の可視性、リスク分析、および森林管理の最適化の提案に注力する方針だ。
(#1)植生管理…雑草や低木から枝や木に至るまで、不要な植生を管理し、除去するプロセス。不適切な植生管理は、停電や最も壊滅的な山火事の主な原因となっている。
【参照記事】*1 Overstory「Overstory Raises $14M Series A to Help Solve Climate and Biodiversity Crises」
【参照記事】*2 Overstory「Smarter vegetation management for utilities」
【参照記事】*3 フォーチュン・ビジネス・インサイト「ユーティリティ植生管理市場」

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