米国有数の公的年金であるニューヨーク州退職年金基金は3月25日、ロシアのウクライナ侵攻は許容できない投資リスクと判断し、ロシア企業からダイベストメント(投資撤退)すると発表した(*1)。
ニューヨーク州退職年金基金は3月1日、ロシア企業に対する新規投資を停止するとともに、ダイベストメントを含めて保有資産の精査を行ってきた。トーマス・ディナポリ会計監査官は、ロシアのウクライナ侵攻は許容できない投資リスクをもたらしていると指摘(*1)。ロシアが経済危機に向かうなか、ダイベストや投資制限を通じて州年金基金資産を保護していると説明した。同基金は2,797億ドル(約34兆円)の運用資産総額のうち、ロシア企業の上場株と関連ファンドへ約1億1,000万ドルの投資を行っている(*2)。
ロシアのウクライナ侵攻を受け、ディナポリ会計監査官はマクドナルド(ティッカーシンボル:MCD)やペプシコ(PEP)などの米国企業に対し、ロシア事業を精査するとともに事業の停止または撤退することを促す書簡を送っている。また、ニューヨーク州退職年金基金の投資スタッフは外部委託の投資マネージャーに対し、ロシアへの投資エクスポージャー(#1)を精査するとともに、許容できないほど高い投資リスクを軽減するようコンタクトをとってきたという。
多額の資産を運用する年金基金が、ロシア関連資産への新規投資の停止や売却の方針を表明している。たとえば、米国最大の年金基金であるカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)は3月2日、ロシア企業に対する新規投資の停止を決定した(*3)。同日時点において、カルパースはロシアの上場株と不動産を約7億6,500万ドル保有しており、投資ポートフォリオ全体の0.17%ほどだという。
ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点から、今後も世界各国の年金基金がロシア関連資産への新規投資の停止やダイベストの動きが広がりそうだ。
(#1)エクスポージャー…投資家の保有資産のうち、価格変動リスクや特定のリスクにさらされている金額や割合のこと。
【参照記事】*1 ニューヨーク州退職年金基金「DiNapoli Orders Divestment of Russia Holdings」
【参照記事】*1 ニューヨーク州退職年金基金「NYS Comptroller DiNapoli Prohibits New Russian Investments and Directs Investment Review」
【参照記事】*1 カルパース「CalPERS Responds to Governor Gavin Newsom」

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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