経済産業省は5月31日、「SDGs経営ガイド」を発表した。世界の先進国でメガトレンドとなっているSDGs(持続可能な開発目標)について、同省は昨年11月に「SDGs経営/ESG投資研究会」を立ち上げ、6回にわたり議論。大企業・ベンチャー企業の経営者、機関投資家、アカデミア、国際機関から出された意見を整理し、企業が本業を通じてSDGsに取り組むSDGs経営のエッセンス、そして投資家がこれを評価する視座などをまとめている。さらに、日本企業のSDGs経営の優れた取り組みを世界にPRすることで、海外から日本企業への投資を促すことを狙う。
ガイドは2部構成で、Part1では「SDGs 価値の源泉」としてSDGsに関する現状認識を多様な観点から示した上で、Part2「SDG 経営の実践」で企業が「SDGs経営」を実践する際に有用な視点を整理した。Part1のIIは「投資家にとってのSDGs―SDGs経営とESG投資」のタイトルで、投資家を取り巻く環境変化、長期的な企業価値の評価とSDGs、SDGs経営を行う企業のパフォーマンスについて言及している。
環境変化については、「持続可能性に対する人々の意識が高まる中、各国の規制や顧客の選好の変化がESG投資という形で機関投資家の投資判断に影響を与えている」と提起。ポイントとして「最近では機関投資家もSDGsやESGに関する感度を上げている。特に欧州の機関投資家の要請で、ファンダメンタルの運用の中にESGをインテグレート(統合)している。気候や人権などについては、投資家も対応する動きがあり、今後も進む」「欧州投資家はESGの意識が高い。既存の運用にESGを取り込まなければ、契約が取れない、選考で落とされるというのが欧州、特に北欧・ユーロ圏の流れ」といった海外のトレンドを挙げる。
さらに、長期的な企業価値の評価とSDGsという視点に立ち「投資家が知りたいのは、企業の過去ではなく、未来における価値。投資先の企業が語るビジョンは、社会の未来像と合致するものなのか。それを測る物差しがESGでありSDGs」と定義。「企業にはESGに関するリスク対応やストラテジーを作ってもらい、それを投資家が評価することが、必然的に企業の長期的な企業価値を評価することになる」という指摘を紹介している。
ESG投資の運用額は2017年時点で2500兆円規模とされ、政府や経団連も推進を施策の柱に据え、公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も「ESG投資と投資先企業のSDGsへの取り組みは表裏の関係にある」とESG投資に注力している。一方で、SDGsの取り組みは企業がそれぞれに模索しており、中小企業には十分に浸透していない。識者の意見や先進企業の事例を要約した同ガイドは、国や経済界の現状を知るうえで参照すべき資料といえる。
【参照リリース】経済産業省「「SDGs経営ガイド」を取りまとめました」
【レポート】経済産業省「SDGs経営ガイド」
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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