丸紅株式会社(以下、丸紅)は2月8日、オランダに本拠を置くCircularise B.V.(以下、サーキュライズ社)と業務提携契約を締結した。サーキュライズ社が開発するトレーサビリティ管理プラットフォームを日本およびアジアの化学品市場向けに展開することを目的とする。今後、実証実験を進め、サーキュライズ社との合弁会社設立を視野に入れた事業化を目指す。
近年、サーキュラーエコノミーの実現が求められているなか、その実現のためには、循環型サプライチェーンにかかわる各ステークホルダーが提供する製品・サービスに関して、透明性の高いトレーサビリティ関連情報などを共有することが必要であると丸紅は認識している。
同プラットフォームは、ブロックチェーン技術とゼロ知識証明(※1)を基本に、サーキュライズ社が独自開発した「Smart Questioning」技術を使用する。これにより、製品の設計・仕様、加工条件、リサイクル履歴などのトレーサビリティ関連情報や、カーボンフットプリント・リサイクル比率などの資源効率を示すデータ、企業のSDGs対応情報や第三者認証情報といった環境対応指標を機密性を保ちながら選択的に開示することでサプライチェーンの透明化に貢献できる。こうした技術が評価され、サーキュライズ社はサーキュラーエコノミーを促進するソリューション提供企業として、2020年9月に欧州委員会より「EU Horizon 2020」(※2)対象企業に選出された。
丸紅は、まずプラスチックなど化学品分野の取引先の参加を広く募り、同プラットフォームを活用した実証実験を進めて、技術的有効性や今後強化すべき機能などを確認していく。事業展開の際には、サーキュライズ社との共同事業契約を締結し、日本およびアジアで同プラットフォームの提供を開始する予定だ。丸紅はサーキュライズ社とお互いの資源を活かし、持続可能な社会の実現に貢献していくとしている。
化学品分野の循環型サプライチェーンにおける同プラットフォームの概念図(出典:丸紅株式会社)
同プラットフォームではブロックチェーン技術を用いて、使用原料に関するトレーサビリティ関連情報や環境対応指標を実際の物流に連動した形でソフトウェア上に疑似的に再現し、デジタルツイン(※3)を実現する。川上のステークホルダーが出荷時に製品情報を記帳(情報アップロード)し、川下のステークホルダーが製品を消費する際に記帳消込する。ブロックチェーン技術によりトークン化されたこれらの情報は書き換え不能なため信頼性が高く、情報の透明性が保たれる。さらに、「Smart Questioning」技術により、各ステークホルダーによって情報を選択的に開示できる。
たとえば、自動車業界において川下のステークホルダーがあるプラスチック成型品の原料情報を知りたい場合、自動車メーカー(上図のOEM・ブランド)や加工・成型メーカーを通じて段階的に樹脂メーカーへ問い合わせるのではなく、同プラットフォーム上で、プラスチック成型品の仕様からリサイクル履歴・比率といった環境対応指標まで確認できる。製品情報をアップロードする際に開示したい情報を設定できるため、川上のステークホルダーは、機微情報も機密性を保って選択的に開示できる。
※1:暗号学において、ある知識を持っていることを、その知識に関する情報を何も明らかにすることなく証明する手法のこと
※2:全欧州規模で実施される、研究および革新的開発を促進するための欧州研究・イノベーション枠組み計画のこと。2014~2020年の間にEUから約800億ユーロ(約10兆円)の公的資金が投入された
※3:現実世界にある情報・データを同時に仮想世界に送り、現実世界と同じ状態を構築すること
【プレスリリース】オランダ・サーキュライズ社との業務提携について~サーキュラーエコノミーの実現に向けたトレーサビリティ管理プラットフォームのアジア展開~
【関連記事】プラスチック大手DOMOら、ブロックチェーンを活用したサーキュラープラットフォームを始動
※本記事は、世界のサーキュラーエコノミーが学べるメディア「CIRCULAR ECONOMY HUB」丸紅、蘭サーキュライズ社と業務提携。サーキュラーエコノミー実現に向けたプラットフォームをアジア展開へ より転載された記事です。
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