仮想通貨に対するFATFのマネーロンダリング防止ガイドラインが産業育成の契機に

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マネーロンダリング(資金洗浄)対策を推進する政府間機関である「金融活動作業部会(FATF)」が仮想通貨(暗号資産)に関するガイドラインを発表してから1年が経過しようとしている。仮想通貨関連事業者と業界が直面している課題について、ブロックチェーンセキュリティの専門家が解説した。新興テクノロジーメディアForkast Newsが5月5日、伝えている。

FATFは2019年6月、仮想通貨に関する勧告を公開した。「トラベルルール」と呼ばれる金融機関に対する個人情報管理規定が「VASP(仮想資産サービスプロバイダー)」にも適用され、国内外の仮想通貨交換業者は送金者と受取人の情報を交換するよう推奨された。交換業者は今まで「仮想通貨アドレス」だけを用いて送金できたため、インフラの整備が必要となっている。36か国2地域とその他9つのFATF型地域体(FSRB)からなる190か国以上の国が適用に同意しているため、FATF勧告は国際的に大きな影響力を持っている。

シルクロードからハッキング、あるいはビットコインの身代金スキームまで、一般的に仮想通貨は「何らかの犯罪に結びつく」という共通認識がある。ブロックチェーンセキュリティ大手サイファートレース社は、詐欺や窃盗を含む犯罪による仮想通貨の被害額が2020年1月から5月までに13億6,000万ドル(約1478億円)に達したと発表した。

同社のデイヴィッド・ジェバンズCEO(最高経営責任者)によると、ビットコインが犯罪者に選択される要因の一つとして、現金化手段やビットコインのまま支払うオプションが増加したことが挙げられる。例えば、米国だけでも約4,000台のビットコインATMが設置されている。ビットコインを含む多くの仮想通貨の取引は匿名で行えるため、銀行や他の金融機関は仮想通貨を取り扱うビジネスを警戒してきた。ジェバンズ氏は仮想通貨の正当化には犯罪者の取り締まりが不可欠と強調している。

しかし、近年では匿名である現金取引よりもビットコインのような取引の方が簡単に犯罪者を追跡できるという指摘もある。現在は、犯罪行為や不穏な行動を特定できるフォレンジック技術が発達している。サイファー・トレースはVASPをサポートするため、プライバシーを危険に晒さずに送受信者の情報を安全に共有するオープンソース「TRISA(トラベルルール・情報共有機構)」をリリースした。また、VASPが適切なAML(マネーロンダリング対策)対策を講じれば、疑わしい活動が早期に特定され、犯罪者に辿り着くことができる。

ジェバンズ氏はまた、規制当局が事例に基づくリスクベースのアプローチを行い、「イノベーションの促進と消費者の安全性を脅かすリスクとのバランスを取る必要がある」と加えた。違法活動、詐欺、テロ資金調達から人々を保護するのは規制当局の仕事だが、締め付けすぎると産業育成を損なう。同氏はまた、高度なブロックチェーン分析技術が補完できるとして、「仮想通貨会社に従来の金融機関の全ての規制を必ずしも適用する必要はない」と語っている。

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HEDGE GUIDE 編集部 Web3・ブロックチェーンチーム

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