Harvestone、バンカメと業界初のCCSタックスエクイティ完了。290億円規模

低炭素バイオ燃料製造業者Harvestone Low Carbon Partners(HLCP)は9月5日、米銀大手バンク・オブ・アメリカと業界初の炭素回収・貯留(CCS)に係る2億500万ドル(約290億円)規模のタックスエクイティを完了した(*1)。

今回の取引は、ノースダコタ州アンダーウッド近郊に位置するHLCPの完全子会社であるBlue Flint Ethanolと関連会社のBlue Flint(BFE)に関連するものとなる。両社は共同で生物起源二酸化炭素(CO2)の生成、回収、貯留を行っている。

Blue Flintは、CO2を回収する米国で3番目のバイオリファイナリーだ。2022年8月のインフレ抑制法(IRA)成立後、CCS事業を開始した最初の事業体にもなる。操業は2023年10月に開始され、既に12万5,000トン以上のCO2を回収・貯留している。今後、同社の施設は年間20万トン以上のCO2を回収する見込みであり、これは約4万2,000台分の自動車のCO2排出量に相当する。

HLCPのジェフ・ズーガー最高経営責任者(CEO)は「Blue FlintのCCSプロジェクトは、同施設の排出量を劇的に削減するとともに、排出原単位が大幅に低いエタノールを生産し、ノースダコタ州のエタノール市場と農業市場を強化するのに役立っている」と述べた(*1)。

HLCPはバリューチェーン全体のオーナーとして、タックスエクイティ(#1)を組成するユニークな機会を得た。具体的には、バンク・オブ・アメリカがCO2回収の税額控除(45Q)に参加し、利用可能な場合に、バイオリファイナリー施設から発生するクリーン燃料税額控除(45Z)を申請することができる。バンカメは、タックスエクイティファイナンスを通じた資金提供により、米国初のバイオリファイナリー炭素回収プロジェクトの1つを支援する。

Blue Flintの資産から発生する全ての税額控除は、生産過程で排出される生物起源CO2を回収するCCSインフラに関連する。CO2を回収した後、圧縮して液体にし、クラスVIの圧入井戸(CO2圧入用の井戸)を通じて地下深くの地層に安全かつ恒久的に圧入する。

HLCPは、米投資ファンドのエナジー・キャピタル・パートナーズ傘下の低炭素バイオ燃料メーカーである。トウモロコシを原料とする3つの乾式製粉エタノール施設を運営しており、年間約2億2,000万ガロンのエタノールを生産している。

Blue FlintとDakota Spirit AgEnergyの施設はノースダコタ州にあり、Iroquois Bio-Energy Companyの施設はインディアナ州に位置する。これら3つのエタノール工場は全て、CCSの取り組みに適した地質の上に位置するというユニークな立地にある。HLCPは運営する施設でネットゼロを達成することを戦略として位置づける。

(#1)タックスエクイティ…金融機関が税額控除と引き換えに環境プロジェクトに資本を提供するファイナンスの一形態。

【参照記事】*1 Harvestone Low Carbon Partners「Harvestone Low Carbon Partners and Bank of America Close $205 million Carbon Capture and Sequestration Tax Equity Financing

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フォルトゥナ

日系・外資系証券会社に15年ほど勤務。リサーチ部門で国内外の投資家様向けに株式レポートを執筆。株式の専門家としてテレビ出演歴あり。現在はフリーランスとして独立し、金融経済やESG・サステナビリティ分野などの記事執筆、翻訳、および資産運用コンサルに従事。企業型DC導入およびiDeco加入者向けプレゼンテーション経験もあり。
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