政府は3月15日、仮想通貨交換業者や仮想通貨取引に関する規制強化策を盛り込んだ、金融商品取引法と資金決済法の改正案を閣議で決定した。各メディアが報じている。相次いだ交換業者のハッキング被害やマネーロンダリング対策の不備、仮想通貨の投機対象化している現状を踏まえ、投資家保護のためのルールの明確化を目指したものとなっている。
この改正案は、金融庁が開催する「仮想通貨交換業等に関する研究会」が2018年12月に報告した仮想通貨規制に関する内容となっており、要点は大きく6つの項目に分けられている。具体的には、暗号資産(仮想通貨)を巡る経緯と対応、暗号資産の交換・管理に関する業務への対応、暗号資産の取引の適正化等に向けた対応、暗号資産を用いた新たな取引への対応、情報・データの利活用の社会的な進展を踏まえた対応、情報通信技術の進展を踏まえたその他の対応、が盛り込まれている。
このうち、投資家の観点から注目すべきは3点だ。まず、法案では顧客資産をコールドウォレットなどの信頼性の高い方法で管理することを義務付けた他、業務の円滑な遂行を目的としてホットウォレットで管理する顧客の暗号資産について同種・同量の暗号資産の保持を義務付けるとされたことだ。これは、2017年から2018年は交換業者でハッキングによる仮想通貨の不正流出が相次いだことから、仮想通貨の流出リスクへの対応として考案された。
次に、暗号資産の取引適正化に向け、移転記録が公開されずマネーロンダリングに利用されやすいなど匿名性の高い問題がある仮想通貨に対応するために交換業者が取り扱う暗号資産をチェックする仕組みを整備すること、交換業者の倒産時には顧客の暗号資産を優先的に変換する規定を整備することとした。
最後に、暗号資産を用いた新たな取引への対応として、詐欺的な事案も多い等の指摘があるICOに適用されるルールも明確化される。投資家に対し仮想通貨を対価としてトークンを発行する行為に金融商品取引法が適用されることを明確化、株式等と同様に発行者による投資家への情報開示の制度やトークン売買の仲介業者に対する販売・勧誘規制等を整備する。
金融庁は本国会での法案成立を目指し、2020年6月までに同法案を施行する見通しだとしている。金融庁は「近年の情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するため」としており、ブロックチェーン技術も注目されていることがうかがえる。ブロックチェーンは国際送金の変革だけでなく、広い分野での活用が期待される画期的な技術ではあるが、悪意のある者によって情報が錯綜するだけでなく、投資家が被害に遭うケースも度々発生している。今回の改正案は投資家保護のためのルール明確化をさらに促進させるものだ。仮想通貨市場が再び盛り返しを見せるためにも、改正案の施行により市場が健全化することを期待したい。
【参照記事】「情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための 資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案」 説明資料
立花 佑
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