欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)は3月8日、ロシアへのエネルギー依存を低下させる新たなエネルギー計画を発表した(*1)。ロシアのウクライナ侵攻を受け、エネルギー価格が急騰するなか、エネルギーの安定供給に向けた政策の見直しを急ぐ。
欧州委は新計画に基づいて対策を実行することで、2022年末までにロシア産ガスの購入を3分の2程度減らせると見込む。この目標を実現させるために、調達先の多様化や水素生産の増加、家庭のエネルギー効率改善などを進める。また、加盟国に対して10月1日までに少なくとも90%を目標にガスを貯蔵するよう求めるほか、企業や家計を支援するために国家補助(State aid)規制の緩和も検討する。
ロシアによる軍事侵攻がつづくなか、欧州ではエネルギーをロシアに大きく依存する現状に対して批判が強まっている。域内は21年にガス輸入の約45%をロシアに依存しているほか、20年の原油輸入の約25%はロシア産原油になる(*1)。欧州委は21年のロシアからの輸入量に相当する1,550億立方メートルのガスの消費を徐々に減らすことで、1ヶ国からの調達に過度に依存する体制から脱却できるという。
フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長は、エネルギー価格高騰の影響を緩和すべく、ガスの調達先の多様化とクリーンエネルギートランジションを加速させなければならないと述べている(*1)。
11日にはEU首脳会議にてロシア産化石燃料からの依存を解消することで合意(*2)。27年までの達成を目指し、5月中旬までに具体策を提案するという。ただし、ドイツを中心にロシア産エネルギーへの依存度が高く、慎重な姿勢を示す加盟国もある。ひきつづき欧州のエネルギーに関する動きを見守りたい。
【参照記事】*1 欧州委員会「Joint European action for more affordable, secure and sustainable energy」
【参照記事】*2 欧州連合「Opening remarks by the President: Informal meeting of HoSG」

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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