炭素管理スタートアップのカーボンファクト(CarbonFact)は4月30日、シリーズA(資金調達ラウンド)で1,500万ドル(約23億円)を調達したと発表した(*1)。ファッション業界特化の環境データ収集と報告の自動化を支援するソリューションの提供を強化する。
今回のラウンドは、欧州ベンチャーキャピタルのAlvenが主導した。同社は2022年のシードラウンド(創業前または創業後間もない企業が行う資金調達)も主導している。
カーボンファクトによると、ファッション業界は新しいサステナビリティ報告規則により、サプライチェーン全体にわたって手作業で大量のデータを検証、統合する必要があり、困難な規制環境に直面している。
ファッション業界における炭素排出量の測定は複雑な作業である。欧州連合(EU)の製品環境フットプリント区分規則(PEFCR)のように、専門的な知識を必要とする基準が常に改訂されているためだ。
1着の衣服が環境に与える影響を計算するためには、重量、原産地、製造時のエネルギー使用量など、100以上のデータポイントが必要となる。ファッション企業は、サプライチェーンが複雑かつ多層的であるため、排出量を追跡する上で大きな課題に直面している。
さらに、製造アウトソーシングと自社のデータを手作業で収集・統合することは、ミスを招きやすいだけでなく、新しい法律によって報告要件が増すに連れて、持続不可能なものとなっている。
一方、規制圧力の高まりにもかかわらず、ファッション業界の排出量は減少するどころか増加している(*2)。
そのような市場環境において、カーボンファクトはデータ収集と報告プロセスを自動化し、サプライチェーンの複数の層から正確かつ一次データの収集を可能にすることで、このような課題に対処している。
同社のソフトウェアは、企業のITシステムに接続し、ギャップや異常を特定するためにデータを分析する。さらに機械学習を用いることで、データが不完全な場合でも不足している部分を体系的に補い、信頼性の高いフットプリント計算を行える。
プラットフォーム上で、各ブランドの炭素集約的な製造工程を特定するとともに、削減計画を策定し、1年間の排出量情報に関するレポートを自動的に作成、エクスポートする。複数のフレームワークと整合させ、新しい法律や基準へのコンプライアンスを確保することもできる。
カーボンファクトのマーク・ローラン共同創業者兼最高経営責任者(CEO)は「すべての製品やサプライチェーンに関するデータをスプレッドシートで管理するのは不可能であり、ファッションブランドが限られた手作業で気候変動の進捗状況を測定し、報告できるようになるべきだ」と述べた(*1)。
同社は2021年に設立され、フランス・パリを本拠地とする炭素管理ソフトウェアのスタートアップだ。アパレル、ラグジュアリー、フットウェアブランド向けに、排出量の測定、報告、削減、EUの企業サステナビリティ報告指令(CSRD)などの規制を満たすためのソリューションを提供している。
シードラウンドから1年半で、コロンビア、ニューバランス、カーハートなどの大手アパレル・靴ブランドを含む150社以上の顧客を獲得した。
カーボンファクトは24年第1四半期に需要が急増したが、これは繊維セクターに対する排出量測定・開示の規制圧力の高まりを物語っていると見ている。
24年3月には、新しいモデリング・ツール群を発表した。このツールにより、ファッションブランドが製品設計やサプライヤーを変更する場合、製品の製造前にカーボンフットプリントを算定することができる。
同社の今後1年間の優先課題は、繊維小売業者や製造業者が今後の規制に合わせて排出量を測定し、削減計画を構築するのを支援することと、グローバル・オンボーディング(#1)・チームを拡大することである。
(#1)オンボーディング…新人の定着を目的とした人事諸施策。
【参照記事】*1 カーボンファクト「Carbonfact raises $15M Series A to help fashion automate environmental reporting」
【参照記事】*2 BOF「The Year Ahead: Why Fashion Can No Longer Ignore the Climate Crisis」
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