二酸化炭素(CO2)を再利用してコンクリートを生成する技術を開発したカナダのスタートアップ、カーボンキュア・テクノロジーズは7月11日、新たな投資ラウンドで8,000万ドル(約111億円)超の資金を調達したと発表した(*1)。コンクリート業界の脱炭素化に向けたグローバル展開と高品質なカーボンクレジットの供給拡大を目指す。
同投資ラウンドは、スイスを拠点にインパクト投資を手掛けるブルー・アース・キャピタルが主導した。マイクロソフトの気候イノベーションファンド、アマゾンのクライメート・プレッジ・ファンド、ビル・ゲイツ氏が立ち上げたブレイクスルー・エナジー・ベンチャーズといった既存株主も加わった。
今回の資金調達を通じ、カーボンキュアは大気中から毎年数百万トンのCO2を削減・除去するというミッションの実現加速やサービス提供地域の拡充などを目指す。
コンクリートは石灰石を焼いて取り出したセメントに骨材を混ぜることで強度を高められる。カーボンキュアは石灰石を焼いた際に発生したCO2をセメントに注入する技術を有し、同技術を活用することで、高強度のコンクリートを生成すると共に、CO2排出量を4~6%削減できる(*2)。
現在は世界30ヵ国で事業展開する。カーボンキュアの技術は、今日までに2,800万立方メートル超の低炭素コンクリートの製造に利用されている。約29万トンの炭素排出を削減し、これは年間6万4,000台超のガソリン車の排出量に相当するとしている。
カーボンキュアは、優れた技術の開発を促進し、世界が直面する課題の解決を目的としたグローバルコンペ「Xプライズ」のCO2有効活用分野で大賞に選ばれた。世界最大の経済専門チャンネルCNBCが、世界を変えるイノベーションを起こしている先進的かつ有望な株式非公開企業を選ぶ「Disruptor 50(ディスラプター50)」にも選出されている。
カーボンキュアによると、世界の建築物ストックは2060年までに倍増すると見込まれ、これは向こう40年間にわたり毎月新たにニューヨーク市を建設することを意味するという(*2)。
また、建設資材の製造および建築に関連した排出「エンボディド・カーボン(Embodied Carbon)」は、2020年から50年までの世界の新規建築により発生するカーボンフットプリントの約50%を占める(*2)。一方、気候変動の国際的な枠組み「パリ協定」の下、エンボディド・カーボンを30年までに50%、50年までにゼロにしなければならない。
世界の建設業界がCO2の大幅削減を求められる中、高強度とCO2削減効果をもたらす技術を有するカーボンキュアは、新たな投資マネーを呼び込んで更なる成長が期待できそうだ。
【参照記事】*1 カーボンキュア「CarbonCure Secures $80M USD In New Equity Round Led By Blue Earth Capital」
【参照記事】*2 カーボンキュア「End Users」

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