今回は、日本円ステーブルコインを発行しているYEN株式会社について、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- YEN株式会社とは
1-1.YEN株式会社の概要および事業内容 - 日本円ステーブルコイン「YEN」の特徴
2-1.複数のブロックチェーンに対応している
2-2.さまざまなユースケースがある
2-3.日本円ステーブルコイン「JPYC」との交換が可能
2-4.「Y-TORA2」からの交換が可能 - YENの購入方法
3-1.日本円での購入
3-2.仮想通貨での購入 - まとめ
最近、暗号資産(仮想通貨)およびブロックチェーン業界で特に注目を集めているのが、「日本円ステーブルコイン」です。
日本円ステーブルコインとは、日本円の価格に連動した動きを採るように設定されたコインで、その使い勝手の良さから、日常生活での利用をはじめとして多くのユースケースが期待されています。
そんな中、22年6月8日に「YEN株式会社」によって新たな日本円ステーブルコイン「YEN」の発行および販売がスタートされました。そこで今回は、日本円ステーブルコインの発行を行うYEN株式会社について、その概要や事業内容などを解説していきます。
①YEN株式会社とは
1-1.YEN株式会社の概要および事業内容
YEN株式会社とは、22年1月に創業されたばかりのかなり新しい国内企業で、「自家型前払式支払手段」の発行および運営を行っています。
自家型前払式支払手段とは、前払式支払手段の発行者との間に限り、代価の支払いに際して使用することが可能な前払式支払手段のことを指します。具体的には、発行者との間でのみ使用が可能な商品券や、特定のゲーム内においてのみ使用が可能なコインもしくはポイントなどが挙げられます。
YEN株式会社ではこの自家型前払式支払手段として、日本円ステーブルコインである「YEN」を発行し、運営しています。
YENは、元々「公益研究基盤機構(PPRP) 一般社団法人」において発行および販売が行われていた「TORA」、「Y-TORA」、「Y-TORA2」という3種類の日本円ステーブルコインの実証実験を踏まえて、22年6月8日より発行および販売が開始されたばかりのコインです。
YEN株式会社では、YENをより多くのユーザーに利用してもらえるよう、参入障壁を低く設定しており、これまでに仮想通貨やブロックチェーンに馴染みのなかったユーザー層も取り込んでいくのではと期待されています。
②日本円ステーブルコイン「YEN」の特徴
YENは、ブロックチェーン技術(ERC20)を活用した日本円連動型のステーブルコインです。常に1 YEN = 1円で物品の売買に利用可能です。メタマスクなど、お持ちのウォレットやUniswapなどの二次流通市場で、日本円建てのコインとして使うことができます。
2-1.複数のブロックチェーンに対応している
YENは現時点において、PolygonブロックチェーンおよびBNBチェーンに対応しており、今後はAvalanche、Solana、Astarなど対応チェーンをさらに拡大していく予定です。
2-2.さまざまなユースケースがある
YENには下記に挙げるような、多岐にわたるユースケースがあります。
①仮想通貨の保有者による物品の決済利用
対応している仮想通貨を保有しているユーザーが、物品の購入に際して仮想通貨を使用したい場合、それをYENに変換し、YEN株式会社からECサイトにおける代理購入を依頼することによっていつでも「1YEN=1円」で物品を購入することが可能です。
②「ERC20」に対応するDeFiが利用可能
YENは「ERC20」規格のトークンであるため、設計上、ERC20規格のトークンを扱う「DeFi(分散型金融)」で利用が可能です。今後、分散型貸出プラッ トフォームなどでYENを貸し出すなどといった活用方法もできるようになるでしょう。
③クリプトアーティストなどの物品の購入に利用可能
NFT(非代替性トークン)を発行し、販売することで仮想通貨を獲得しているクリプトアーティストなどは、手に入れた仮想通貨を分散型取引所(DEX)である「Uniswap(ユニスワップ)」などでYENに交換することで、物品の購入が可能となります。
2-3.日本円ステーブルコイン「JPYC」との交換が可能
YENは現在日本国内において利用されている日本円ステーブルコイン「JPYC」との交換が可能で、「YEN SHOP」において「1YEN=1JPYC」の割合で交換することができます。
JPYCとは、JPYC株式会社によって発行および運営が行われているコインで、「Vプリカギフト」や「giftee Box」との交換ができるほか、松屋銀座における代理購入やふるさと納税での利用も可能なステーブルコインです。
このほか、YENとJPYCは同じ日本円ステーブルコインとして発行されていますが、YENはJPYCとの違いについて、下記いくつかの点を挙げています。
- PolygonおよびBNBからスタートし、AvalancheやSolana、Astarなどにも対応していく予定
- 日常における決済手段としてだけでなく、NFTやブロックチェーンゲームなどといった多岐にわたる用途に対応していく予定
- JPYCをはじめとするその他の前払式ステーブルコインとの交換が可能
また、YENは今後、前払式ステーブルコインの交換に特化したプラットフォームを構築する予定だといい、JPYCに限らずその他の日本円ステーブルコインについても業界の共創を推し進めていきたいと語っています。
2-4.「Y-TORA2」からの交換が可能
YENは現在、「Y-TORA2」からの交換が可能となっています。
Y-TORA2は22年6月17日に販売を停止したステーブルコインで、現時点でY-TORA2をすでに保有しているユーザーは、Y-TORA2からYENへの交換を200%増の割合で実施することが可能です。具体的には、1,000Y-TORA2を保有している場合は、2,000YENを受け取ることができるといった格好です。
200%増での交換を実施する理由としてYEN株式会社は、Y-TORA2を購入したユーザーがそれをYENに交換する過程において、追加でかかってくる労力や、ウォレットの管理にかかる手間などを考慮した結果だとしており、Y-TORAを購入したユーザーに対して総合的に不利益な状況が発生しないように配慮したということです。
なお、Y-TORA2からの交換については、YEN株式会社が提供している専用フォームに必要事項を記入し、交換希望額のY-TORA2を指定のウォレットアドレスへ送信することで実行できます。
③YENの購入方法
YENはYEN販売所公式サイト「YEN SHOP」において、日本円または仮想通貨で購入することができます。
3-1.日本円での購入
- フォームに必要事項を記入する
- 日本円を支払う
YEN SHOPが指定している銀行口座に、YENの購入金額分の振り込みを行う。 - YENを受け取る
入金が確認された翌営業日までに、指定したウォレットアドレスに対してYENが送金される。
3-2.仮想通貨での購入
- ウォレットを接続する
YEN SHOPにおいて、対応している仮想通貨ウォレット(Metamask、WalletConnect、Portis、Fortmatic、Authereum、Frame)を接続する。
なお、前述の通り、現時点における対応ネットワークは「Polygon」および「BNBチェーン」となっています。 - 交換したい仮想通貨を選択
YENに交換したい仮想通貨を選択し、金額を入力する。 - YENを受け取る
スワップが完了したYENが、ウォレットに入金される。
【関連記事】MetaMaskのウォレット作成方法、OpenSeaへの連携方法について解説【NFTマーケットプレイス導入準備】
④まとめ
YEN株式会社は22年1月に創業されたばかりですが、日本円ステーブルコインであるYENの発行および運営を行う業界注目の国内企業となっています。
YENはさまざまなユースケースを有しており、今後さらに活用の場が広がっていくと予想されているため、興味のある方はまず国内取引所で口座を開設し、YENの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
中島 翔
最新記事 by 中島 翔 (全て見る)
- 脱炭素に向けた補助金制度ー東京都・大阪府・千葉県の事例 - 2024年10月22日
- 韓国のカーボンニュートラル政策を解説 2050年に向けた取り組みとは? - 2024年10月7日
- NCCXの特徴と利用方法|ジャスミーが手掛けるカーボンクレジット取引所とは? - 2024年10月4日
- Xpansiv(エクスパンシブ)とは?世界最大の環境価値取引所の特徴と最新動向 - 2024年9月27日
- VCMIが発表したScope 3 Flexibility Claimとは?柔軟なカーボンクレジット活用法を解説 - 2024年9月27日