この記事では一風変わったアプローチで気候変動の問題の解決を目指す「Return」プロトコルについて解説します。ブロックチェーンの特徴と人間心理を汲み取った非常に興味深いプロジェクトです。
目次
Returnとは?
「Return」は、気候変動問題の解決に取り組むブロックチェーンのプロジェクトに対して個人・企業・コミュニティが気軽に楽しく支援できるようにするプロトコルです。主にブロックチェーンを活用してカーボンクレジットの売買を行うプロジェクトを対象としており、Returnプロトコルからそれらのプロジェクトに支援を行うことができます。
ではなぜわざわざReturnプロトコルから支援を行うのでしょうか。Returnプロトコルでは「Impact Identity」という概念を採用しています。「Impact Identity」とは、個人や企業が気候変動に対してどれだけ貢献したかが可視化できる仕組みです。
Returnプロトコルでは1ウォレットアドレスに対して1つのImpact Identityが付与されます。Impact IdentityはSBTとして配布され、譲渡ができません。また、貢献金額(削減に寄与した二酸化炭素排出量)に応じて、クリエイティブが変化するダイナミックNFTとなっています。
合計7つのランク(Tier)が存在しており、そのランクは全員が閲覧でき、リーダーボードも存在します。
また、Impact IdentityはSBTであり貢献に応じてクリエイティブが変化しますが、更に外観をカスタマイズできる「Skin」が存在します。現在は4種類のSkinが発表されており、特定のアクションによって配布されます。Skinによって自身のImpact Identityをカスタマイズできる他、SkinはNFTとして売買することが可能です。
また、同様のプロジェクトに資金提供をするメンバーとはコミュニティが構築され、同じ価値観を持つ人と繋がることも可能です。
Returnの利用方法は?
では、Returnの利用方法について見ていきます。利用は非常に簡単です。
- アカウント作成
- 資金提供するプロジェクトを選択
- Impact Identityが付与
- コミュニティ内での活動やスキンの取得で更なる貢献
4ステップをより細かく見ていきます。
①アカウント作成
MetaMask等のウォレットを持つ人はウォレットコネクトで、ウォレットを持たない人はWeb3Authを活用してその場でウォレットを作成することができます。
②資金提供するプロジェクトを選択
実はReturnプロトコルでは2種類の資金提供方法が選択できます。自身で資金提供するプロジェクトを選択する「Active Track」と資金プールに資金提供し自動運用される「Autopilot Track」です。自分で選ぶかプロトコル側が自動で運用してくれるかの2択です。
③Impact Identityが付与
初回の資金提供が完了したタイミングで、自身のウォレットにSBTであるImpact Identityが付与されます。以降はそこに貢献履歴が反映されていきます。また、マイページでプロフィールを設定したり、スキンのカスタマイズ等も可能です。
④コミュニティ内での活動やスキンの取得で更なる貢献
これらを続けていき、更に別のプロジェクトを支援したり、スキンを獲得するなどをして貢献を続けていきます。
▶️実際の利用はこちらから
Returnの展望は?
Returnの究極的な目標は気候変動を食い止めることです。現在世界的な問題として地球温暖化が加速し、環境問題が悪化しています。このままのペースで進めば、地球の平均気温は上昇し人類が生きていくのに深刻な影響を与える環境問題が頻発すると言われています。よって、二酸化炭素排出量を削減するための動きである「カーボンクレジット市場」が急速に成長しており、そのカーボンクレジットの売買をNFTとして行うプロジェクトが多数出現しています。こうした細かい市場の状況やプロジェクトの概要は関連記事をご覧ください。
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しかし、プロジェクトが多数生まれている中でもまだまだ資金の流入が足りないと考えたファウンダー等は、その繋ぎとなるReturnプロトコルを開発することにしました。Returnプロトコルの肝は、貢献証明となるオンチェーンデータを可視化し、デジタルアイデンティティとすることです。
現在のカーボンクレジット市場は事業的な収益を当てにすることも可能ですが、その収益だけでは弱いインセンティブであり、人々の善意だけに頼っています。しかし、それにウォレット上に存在するデジタルアイディンティの形でSBTを発行することで、社会的なインセンティブを付与することを考えました。
現代において、特に欧米のZ世代を中心に環境に良い取り組みをする企業や人に賞賛が集まるようになっています。この動きはこの先世界的に加速していくと見込まれています。また、web3が浸透した世界ではウォレットの中に何が入っているのかがその人のデジタル上でのアイデンティティを示すようになると言われています。多くの人がTwitterのPFPで自身を表現している感覚に近いですね。
その世界的なトレンドの中で、環境に良いことをしているという社会的な証明をウォレットの中に組み込むことがReturnプロトコルが実現しようとしていることです。逆に言えば、ウォレット内にその証明を残したいというインセンティブで気候変動のプロジェクトに資金提供する人を増やすという狙いです。
個人的にこの取り組みは非常にユニークだと感じます。オンチェーン情報を可視化するという点において、Phiに近い発想です。Phiはすでに大きな盛り上がりを見せているため、オンチェーン情報を可視化して保有しておきたいという需要は一定存在すると考えられます。
現在は気候変動領域のプロジェクトが中心ですが、今後よりライトな取り組み(例えば海岸のゴミ拾いイベントへ参加など)に対してもPOAP的なバッジが割り振られるようになるなど、社会貢献をした証となるデジタルアイデンティティとなっていく未来も想像できます。やはり、デジタルアイデンティとして機能するにはその存在を認知する人間の絶対数が必要です。ReturnのImpact Identityについて知る人が増えれば増えるほど、Tierが向上した際の社会的なインセンティブが満たされます。
プロジェクトとしては非常に面白いと感じますので、この先はこの認知度をいかに上げていくのか、そして社会的なインセンティブをどのように向上させていくのかに注目していきたいと感じました。
mitsui
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