【元暗号資産取引所トレーダーが解説】ステーブルコインの基礎と今後のポイント

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今回は、ステーブルコインについて、大手暗号資産取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では暗号資産コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

  1. ステーブルコインの種類
  2. ステーブルコインの長所と短所
  3. まとめ

暗号資産(仮想通貨)のトランザクションは短時間と僅かな手数料で処理されるので便利です。しかし、一般的に暗号資産(仮想通貨)の課題の一つとして、ボラティリティ(価格変動の度合い)の高さが挙げられます。

需給バランスの変化や、規制の変更、ネットワーク状況の変化、その他予期せぬ事象や特殊な事象等の影響により、価格が乱高下する可能性があり、投資するにあたって価格変動の大きさはリスクと考えられます。

暗号資産の価値は完全に市場原理に委ねられていることは興味深いものですが、使い勝手の面ではあまりよくありません。そのため実用面で見ると、暗号資産はまだ決済面のユースケースを確立できてないと言われています。

そんな中、価格変動リスクを取り除く目的で作成された暗号資産が「ステーブルコイン」です。ステーブルコインは、日本円や米ドルのような法定通貨と同じ価格を維持するように設計されています。

市場には複数のステーブルコインが存在しますが、その価値の裏付け方法にはいくつか種類があります。この記事では、ステーブルコインの仕組み、その利点と課題についてご説明していきます。

①ステーブルコインの種類

法定通貨に裏付けられたステーブルコイン

ステーブルコインのうち代表的なものをご紹介していきます。最も一般的なステーブルコインは、法定通貨に1:1の比率で裏付けされたものです。

この種のステーブルコインは、発行体が準備金を保有することでその価値を裏付けています。ユーザーはいつでも発行体からステーブルコインと等価の法定通貨を引き出す(償還)ことができます。

この種のステーブルコインの弱点は、十分な準備金を保有しているかどうか発行体を信頼しなければならないということです。現実的に、ユーザーは発行体が相当額の資産を保有しているかどうかを判断することはできません。そのため発行体は監査資料を公開するなど透明性を保つことで信頼性を高めています。

暗号資産に担保されたステーブルコイン

ステーブルコインの中には、イーサリアムなどの暗号資産を担保に発行されているものがあります。ネットワーク上のスマートコントラクトに暗号資産をロックして自動的に発行できるので、この種のステーブルコインには発行体が必要ないという利点があります。

しかし、コインの全体的な政策(ガバナンス)がトークンホルダーの投票によって決定されることに注意する必要があります。ガバナンスの参加者はそれぞれが自己の利益最大化と資産保護を目的に行動し、結果的にネットワークの最適化が維持されると考えられています。しかし、特定のエンティティが過半数を得てしまえば、自身の都合の良い様に政策を変更するかもしれません。市場を含むステーブルコインのユーザーは、これらのガバナンス機構を信頼することになります。

アルゴリズムによって制御されるステーブルコイン

アルゴリズムによって制御されるステーブルコインは、法定通貨や暗号資産などの裏付け資産に担保されているわけではありません。

この種類のステーブルコインは、スマートコントラクトとトークンの供給量を管理するアルゴリズムによって価格が調整されています。供給量の管理というのは、各国の中央銀行が通貨を管理するために使用している手法とよく似ています。アルゴリズム型のステーブルコインは、価格が目標価格を下回ると供給量を減らします。反対に、価格が目標価格を上回ると、供給量を増やします。アルゴリズム型のステーブルコインは経済原理に対応して、価格の自動調整が行われます。

②ステーブルコインの長所と短所

ステーブルコインはトレーダーや投資家にとって暗号資産市場のボラティリティからの避難資産として利用されています。価格急落の場面で多額の資産をステーブルコインに避難させることができることで、暗号資産市場全体の価値を安定させる上で重要な役割を担っています。実際のところ、ステーブルコインの発行量は大幅に増加しており、2019年初頭から現在までに5倍以上に増加しています(下図)。
Stablecoin_supply

また、ステーブルコインは一定の価格を維持しながら少ない手数料と短時間で世界中に送金できるので「価値交換手段」としても機能します。そのため、ステーブルコインは日常の決済利用だけでなく、債権債務決済や国際送金、融資などの従来の金融取引でも機能する可能性があります。

ステーブルコインの課題は、価格を安定させるために分散性を犠牲にしている点です。また、ステーブルコインはそれぞれ、発行体やガバナンス機構、アルゴリズムなど、信頼が必要な部分があります。このようにステーブルコインは暗号資産の利用を促進する可能性を含む一方で、課題が残されています。

③まとめ

ステーブルコインが、暗号資産市場で重要な役割を担っていることは間違いありません。日本の暗号資産取引所でステーブルコインの取り扱いはありませんが、中国のCBDC(中央銀行のデジタル通貨)や、フェイスブックのDiem(旧リブラ)の開発が進展していることもあり、今後ますますステーブルコインへの注目が高まるでしょう。デジタル通貨の開発動向がビットコインの相場と絡めて語られるケースも少ないので、最新状況をチェックし続けることが大切です。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12