損保ジャパン、SBIトレーサビリティの相互連携による日本産食品の輸出促進スキームとは

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今回は、損保ジャパン、SBIトレーサビリティの取り組みについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

  1. 損保ジャパンとは
    1-1.損保ジャパンの概要
    1-2.損保ジャパンの主な保険サービス
  2. SBIトレーサビリティとは
    2-1.SBIトレーサビリティの概要
    2-2.SBIトレーサビリティの主なサービス内容
  3. 両者の相互連携による日本産食品の輸出促進スキームとは
    3-1.日本産食品輸出促進スキームの概要
    3-2.日本産食品輸出促進スキーム開発の背景
  4. 新たな日本産食品輸出促進スキームの仕組み
    4-1.手続きをデジタルで一気通貫に完結する
    4-2.「SHIMENAWA(しめなわ)」とは
    4-3.「SHIMENAWA(しめなわ)」の特徴
  5. 今後の展開
    5-1.サービス対応範囲のさらなる拡張
    5-2.両社の今後の方針
  6. まとめ

23年2月7日、損害保険ジャパン株式会社とSBIトレーサビリティ株式会社は、日本産食品のさらなる輸出促進への貢献を目的としてた新たなスキームを23年内を目処に展開する計画を明らかにしました。

損保ジャパンは、SBIトレーサビリティが新たに立ち上げた、サプライチェーンの透明化を実現させるプラットフォーム「SHIMENAWA(しめなわ)」上に専用保険を提供し、輸送途上での万が一の事故を補償することで、安心・安全な物流をサポートし、日本産食品の輸出促進を図ります。

今回は、損保ジャパンおよびSBIトレーサビリティにより新たに展開される日本産食品の輸出促進スキームについて、その概要や仕組みなどを詳しく解説していきます。

①損保ジャパンとは

1-1.損保ジャパンの概要

SOMPO
損害保険ジャパン株式会社とは、1888年10月に創業された損害保険市場において国内トップクラスのマーケットシェアを誇る歴史ある企業です。

損保ジャパンでは「Innovation for Wellbeing」というブランドスローガンを掲げ、SOMPOグループの中核会社として、クライアントの安心・安全・健康に資する最高品質のサービスを展開することで、すべてのクライアントのより良い生活と、持続可能な社会の実現に尽力しています。

近年世界において気候変動による自然災害の激甚化や少子高齢化による人口構造の変化、またデジタル技術の進化による産業構造やビジネスモデルの変化、さらには新型コロナウイルス感染症の影響による生活スタイルの変化など、様々な変化を通してリスクが多様化して起こっています。

損保ジャパンでは21年度からスタートした中期経営計画において「すべての人々・地域・社会にたくさんの笑顔と活力あふれる確かな明日をお届けする」というビジョンを発表し、社会に存在するさまざまなリスクからクライアントを守る新たな商品のほか、デジタル技術を活用した利便性の高いサービスの提供などを積極的に行っています。

1-2.損保ジャパンの主な保険サービス

損保ジャパンが提供している主な保険サービスは、下記の通りです。

  • 法人向け:事業活動全般の保険/従業員の保険/自動車の保険/企業財産の保険/賠償責任の保険/事業休止の保険/海外出張の保険/海外進出の保険、サービス/船舶の保険
  • 個人向け:自動車、バイクの保険/自転車、歩行中の保険/火災、地震の保険/特約火災保険/医療、ケガの保険/旅行、レジャーの保険/生命保険確定拠出年金/マイカーローン

②SBIトレーサビリティとは

2-1.SBIトレーサビリティの概要

SBI Traceability
SBIトレーサビリティ株式会社とは、21年4月に設立されたブロックチェーン技術を活用したトレーサビリティ・サービスを提供している国内企業です。SBIトレーサビリティでは「サプライチェーンの壁を越え、新たな信用を創造する」というビジョンのもと、アメリカのR3社が開発を行っている「Corda(コルダ)」を活用したブロックチェーンベースのトレーサビリティ・プラットフォームを開発しています。

SBIトレーサビリティによると、15年9月国連サミットにおいて「SDGs(持続可能な開発目標)」が採択されたことを背景に、製品が適切な原材料や生産環境、プロセスを経て作られ流通してきたものかどうかということが、消費者の購買行動を大きく左右する機運が高まっています。昨今では原材料の収穫や生産を含めたサプライチェーン全体の透明性や、アカウンタビリティ(説明責任)が強く求められています。

そんな中、SBIトレーサビリティでは新たなトレーサビリティ・プラットフォームを開発することによって、上記のような消費者のニーズに対応するソリューションを提供しています。

2-2.SBIトレーサビリティの主なサービス内容

SBIトレーサビリティの主な事業内容は、下記の通りです。

・ブロックチェーン基盤「Corda」を活用したトレーサビリティ・サービス
各商品(ブランド)に対してトークンを発行し、商品の品質や、原材料の調達から生産、流通までの一連のサプライチェーンにおけるそれぞれの工程で共有が必要な情報を、エンタープライズ・ブロックチェーンベースである「Corda(コルダ)」に記録し、管理することによって、「真贋証明」や「SDGs貢献証明」といったトレーサビリティサービスを展開している。

・オープン・アライアンスによる総合的なサービスの提供
パートナー企業の持つ優れた商品や技術をSBIトレーサビリティが手がけるトレーサビリティ・サービスと紐づけ、合わせて提供することで、これまでにない先進性を持つ総合的なサービスを構築している。

・SHIMENAWA(しめなわ)
商品の産地、加工会社、流通経路について信頼のおける仕組みを用いてトレースした情報を提供している。今回の日本産食品輸出促進スキームにも活用されているサービスの一つ。

③両者の相互連携による日本産食品の輸出促進スキームとは

3-1.日本産食品輸出促進スキームの概要

Scheme
前述の通り、23年2月7日、損保ジャパンとSBIトレーサビリティは23年内を目処に新たな日本産食品の輸出促進スキームを展開することを明らかにしました。このスキーム開発は日本産食品のさらなる輸出促進への貢献を目的としているということで、両社の基幹システムを相互連携することによって、輸出者の利便性をより向上させていくとしています。

今回の相互連携では、SBIトレーサビリティが新たに立ち上げたサプライチェーンの透明化を実現させるプラットフォーム「SHIMENAWA(しめなわ)」上において、損保ジャパンが専用保険を展開することで、輸送途上における万一の事故を補償し、より安心で安全な物流をサポートするとともに、日本産食品の輸出促進を図っていくということです。

3-2.日本産食品輸出促進スキーム開発の背景

近年、SDGsがより社会に浸透してきたことや、国内外における産地偽装などが社会問題化していることに伴い、食品の生産環境や流通経路なども消費者の購買決定における重要な要因の一つとなっています。また、「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律」が施行されたことなど、日本産食品の輸出促進に関しても、日本国内における大きな課題として取り組みが強化されています。

そんな中、損保ジャパンとSBIトレーサビリティは、企業において「責任あるサプライチェーン」の構築がより重要性を増していると説明し、API連携を通した新しいスキームの構築による協業によって、これらの社会的課題の解決に向け検討を行ってきました。

今回発表された新たな日本産食品輸出促進スキームでは、日本産食品のブランドそのものの信用および信頼をさらに高めることに寄与し、生産者にとってはより一層輸出しやすく、消費者にとってはより一層安心で安全な食品を購買できる社会の実現を目指していくということです。

④新たな日本産食品輸出促進スキームの仕組み

4-1.手続きをデジタルで一気通貫に完結する

損保ジャパンとSBIトレーサビリティが手がける新たな日本産食品輸出促進スキームでは、トレーサビリティサービスと保険の申込手続きをデジタルで一気通貫に完結することが可能です。

具体的には、SBIトレーサビリティが提供している「SHIMENAWA(しめなわ)」と、損保ジャパンが提供している「MARINE My Page」を連携させることによって、これまではそれぞれに必要であったトレーサビリティサービスと保険の申込手続きをデジタルで一気通貫に完結する仕組みをするということです。

詳しい手順としては、「SHIMENAWA(しめなわ)」のトレーサビリティサービスを利用する輸出者(生産者)が「外航貨物海上保険」の手配を希望するケースにおいて、同プラットフォーム上の情報を損保ジャパンの「MARINE My Page」にAPI連携することで、トレーサビリティサービスと保険の申込みがシームレスに完結するということです。

これによって、輸出者(生産者)は申込みに関する複雑で分かりにくい手続きを省略できるとともに、輸入者は対象品目にマッチした補償が付帯された食品をスムーズに入手することが可能になるというわけです。

4-2.「SHIMENAWA(しめなわ)」とは

SHIMENAWA
前述した通り、今回発表された新たな日本産食品輸出促進スキームでは、SBIトレーサビリティが手がける「SHIMENAWA(しめなわ)」と呼ばれるトレーサビリティサービスが活用されています。ここでは、SHIMENAWAのサービス内容について詳しく解説していきます。

SHIMENAWAとは、ブロックチェーン技術を駆使することでデータに「命(新たな価値)」を吹き込み、サプライチェーン上でつなげることによって、有形および無形の商品の付加価値を最大化するトレーサビリティサービスとなっています。

SHIMENAWAは、ブロックチェーン基盤の「Corda(コルダ)」を採用しており、「NFC(Near Field Communication)」や「RFID(Radio Frequency IDentifier)」といった無線通信技術とのデジタルペアリングなどで共有される情報の真正性を担保する仕組みによって、信頼性のより高い「エンド・ツー・エンド(E2E)」のトレーサビリティを実現しています。

このように、SHIMENAWAはトレーサビリティに関する独自の仕組みを用いることによって、サプライチェーンの壁を越え、新たな信用を創造することに尽力しています。

4-3.「SHIMENAWA(しめなわ)」の特徴

①企業間取引で優位性があるブロックチェーン基盤を採用している
SHIMENAWAでは企業間取引において優位性を有しているブロックチェーン基盤「Corda(コルダ)」を採用しているため、より安心で信頼性の高いトレーサビリティの実現が可能となっています。

Cordaは、世界で350社を超える金融機関や規制当局、中央銀行、システムベンダなどによって構成されたコンソーシアムにおいて企業間取引を想定して設計および構築されました。Corda上で動く複数のアプリケーション間においてデータの移転や連携が可能なため、複数システム間をシームレスにつなげることができ、これによってバリューチェーン融合が可能になるということです。

イーサリアムに代表される公開型(パブリック)ブロックチェーンのように、取引を全ノードで共有することはせず、必要なノード間でのみ共有する仕組みを採っているため、他社に自社の取引内容を知られる心配がありません。このほか、イーサリアムなどのパブリックチェーンのいくつかは、トランザクションの並列処理を実行できていないため、利用者が急増すると処理スピード遅延する問題が生じています。一方で、Cordaは関係者ノードとの通信であるため、トランザクションの並列処理の実行が可能となっており、処理スピードはネットワークサイズに依存しないというメリットがあります。

このように、SHIMENAWAではさまざまなメリットを兼ね備えているCordaをブロックチェーン基盤として採用することで、より信頼性の高いトレーサビリティシステムを提供しています。

②付加価値が高い情報を共有することによって、差別化の実現を可能にしている
SHIMENAWAでは、付加価値が比較的高い情報を耐改ざん性のあるデータ構造を有したブロックチェーン基盤「Corda」に記録し、真正性が高い情報として取引者間で共有することによって、差別化の実現を可能にしています。

③作り手、商品やブランドの「こだわり」を見える化している
SHIMENAWAでは、スマートフォンで「NFC/RFIDタグ」をタップし、二次元コードを読み取ることによって、作り手や商品、ブランドそれぞれの「こだわり」や魅力などを、より深く知ることができます。

⑤今後の展開

5-1.サービス対応範囲のさらなる拡張

損保ジャパンとSBIトレーサビリティは今後のサービス拡大に向けて、食品品目ごとの専用保険をさらに拡充していく考えを明らかにしているほか、食品以外の製品やこれらの国内物流についても、専用保険の開発を検討しているということです。

このほか、外航貨物海上保険以外の、生産物賠償責任やリコールリスクに対応する専用保険などの開発についても見据えた協業を進めていくとしており、輸出者および輸入者どちらにとっても利便性の高いサービスの提供に尽力していくとしています。

5-2.両社の今後の方針

損保ジャパンは、「“安心・安全・健康のテーマパーク”により、あらゆる人が自分らしい人生を健康で豊かに楽しむことのできる社会を実現する」という「SOMPOのパーパス」の実現に向けて、ブランドスローガンである「Innovation for Wellbeing」に則った独自色のある商品の開発を進めていくとしています。

そして、これらの商品開発を通して、今後も社会の健全な発展に資する新たな保険やサービスを提供することによって、サステナブルな社会の実現に貢献していくと説明しています。

また、SBIトレーサビリティは、「ブロックチェーンを活用してグローバルで最も透明なサプライチェーンプラットフォームとなる」というミッションの実現に向けて、ブロックチェーン技術を駆使したトレーサビリティサービスの提供を続けていくとしています。そして、このサービスを通して、産地や生産者のブランドを守り、安心且つ安全な商品を消費者に届けることによって、持続可能な社会の実現に貢献していくということです。

⑥まとめ

今回、損保ジャパンおよびSBIトレーサビリティの相互連携によって、新たな日本産食品の輸出促進スキームが発表されました。

23年中を目処に開発が進められているこのスキームでは、SBIトレーサビリティが提供している「SHIMENAWA(しめなわ)」と損保ジャパンが提供している「MARINE My Page」を連携させることによって、トレーサビリティサービスと保険の申込手続きをデジタルで一気通貫に完結する仕組みを提供するということで、輸出者と輸入者の両方にとって利便性の高いサービスであると期待されています。

今後はリリースに向けて開発が進められていくほか、サービス対応範囲のさらなる拡張も計画しているということで、引き続きその動向に注目していきたいと思います。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12