今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の中村翔太 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。
目次
はじめに、私たちが普段ブロックチェーンを利用した分散型アプリケーションにアクセスする際に、ブラウザを起動し、ウォレットアプリを接続して利用する場合がほとんどです。
例えば、NFTをマーケットプレイスで購入、販売、作成、他にはDAOに提出されたプロポーザルに対して、投票やDEXと呼ばれる分散型取引所で暗号資産をトレードしたりすることが挙げられるでしょう。そして、どのように「ブロックチェーンに接続・通信しているか」という意識をすることなく利用できているはずです。
本記事では、ブロックチェーンとユーザーや開発者を繋ぐ仕組みを提供しているノードプロバイダーについて執筆していきます。
ノードプロバイダーとは
そもそも「ブロックチェーン」は、特定のルールでネットワークの状態を検証するアプリケーション(EthereumやBitcoin)を実行しているコンピュータ(ノード)どうしが互いに通信をする集合体です。ノードを使用せずにブロックチェーンにアクセスする方法はありません。また、ノードの実行にはある程度の専門知識が必要であり、尚且つセットアップには最大数週間と非常に長い時間がかかります。
そこで、上記の課題を解決するために、ノードプロバイダーは、完全に同期された最新のノードを24時間年中無休で実行し、私たちが独自のノードを実行することなくブロックチェーン上の情報にアクセスする方法をAPIという形で提供しています。
事例紹介
alchemy
Alchemyは、CEOのNikil Viswanathan氏と CTOのJoe Lau氏により設立された最も人気なノードプロバイダーの1つで「ブロックチェーンを10億人にもたらす」というビジョンを掲げており、ブロックチェーン開発プラットフォームのリーディングカンパニーとして、世界197カ国で数百万人のユーザーに利用されています。スタンフォード大学、Coinbase、Google会長、Charles Schwab、そして世界をリードする組織の創設者やエグゼクティブからの支援をうけ、世界中のトップ企業のために数十億ドル規模の取引を支援しています。そして、ユーザーからの評判は、ノードから返されるはデータの正確性を保証していると評判が高いため、高い信頼性を確保しています。また、現時点でEthereumやSolana、Astarをはじめとした、8個のブロックチェーンに対応しており、それぞれのメイン及びテストネットワークに対応しています。
各種APIの提供以外にも「Alchemy University」という無料のコーディングスキル学習リソースを提供しており一般公開されています、2023年第一四半期の時点で、46,000人以上が登録しており約20,000人がコースを修了しているとしています。現時点で公開されているコースは「Ethereum Developer Bootcamp」「JavaScript Fundamentals」「Road to Web3」の3つが公開されています。
INFURA
Infuraは、MetaMaskやTruffleの提供元であるConsensysによって提供されています。また、Infuraチームは「開発者が素晴らしいWeb 3.0アプリケーションを構築できるよう、最高のインフラとツールを提供するよう努める」というミッションを掲げサービスの開発提供をしています。EthereumはもちろんのことCELOやAvalanche C-Chainなどのレイヤー1の他にPolygonやArbitrumといったレイヤー2ソリューションや、Interplanetary File System (IPFS)への接続もサポートしており、執筆時点で計11のネットワークに対応しています。無料で利用できるプランも用意されており、ユーザーは毎日約100,000件のリクエストを送信することが可能です。
最も普及しているブラウザウォレットアプリの1つであるMetaMaskはInfuraを利用しており、Consensys Softwareとして緊密に連携することで、高品質なエクスペリエンスを継続できるよう目指しているとしています。2016年のDevCon2で本サービスの公開をしてから、現在では400,000人を超える開発者のコミュニティに成長しています。
moralis
Moralisは、2021年にIvan Liljeqvist氏とFilip Martinsson氏によってスウェーデンで設立された比較的に新しいWeb3スタートアップ企業で「Empowering Those Creating Tomorrow」をビジョンに掲げています。暗号通貨交換プラットフォームを運営するアメリカの上場企業であるCoinbaseなどからの出資も受けており、期待値の高いプロジェクトとなっています。Moralisが提供するAPIは、執筆時点でEVMチェーン9種とAptos,Solanaの計11種に対応している他、クロスチェーンに対応しています。またWeb3 API周りの応答時間は、他者と比較した際に優位点として挙げられ、その他にも高い信頼性やデータの扱いやすさにも定評があります。
具体的なユースケースとしては「XDEFI Wallet」や「NFTrade」「Delta Investment Tracker」などのWeb3プロジェクトがMoralisを利用して提供されています。また、dApp開発者からの意見の多くが「データクエリが簡単で高速」というものが見受けられ、開発者だけでなくdAppの利用者のユーザー体験の向上にも強みを持っています。
おわりに
本記事ではブロックチェーンエコシステムを支えるノードプロバイダーについて紹介させていただきました。普段dAppsを使用する上では意識せずに扱うことができますが、それらを知っておくことで、「どのプロジェクトがどこのノードプロバイダーを利用しているのか?」「それが成長性やユーザー体験にどのような影響を与えるのか?」など、一歩踏み込んでブロックチェーンエコシステムを見渡せるようになれると思います。ですので、開発者以外の方にも是非ノードプロバイダーの存在を記憶にとどめていただきたいと思います。
Fracton Ventures株式会社
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