脱炭素をテーマとした「メタネーション」とは?関連した銘柄をピックアップ

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一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / @fukuokasho12))に解説していただきました。

目次

  1. メタネーションとは
    1-1. メタネーションの概要
    1-2. メタネーションの歴史
  2. メタネーションの特徴
    2-1. 二酸化炭素排出量を二割削減
    2-2. 2つのフェーズでのメタン生成
    2-3. 導入が容易
    2-4. カーボンリサイクルの実現
  3. 東京ガス(9531)
  4. ENEOSホールディングス(5020)
  5. IHI(7013)
  6. まとめ

日本政府による「2050年カーボンニュートラル」の宣言を受けて国内においても脱炭素に向けた動きが加速していますが、中でも近年はガス分野の脱炭素化に寄与する「メタネーション」技術が大きな関心を集めています。

メタネーションとは、二酸化炭素と水素から「メタン」を合成するテクノロジーを指し、これを用いることによって現在の都市ガスの原料である天然ガスを合成メタンに置き換えられるとして期待されています。

メタネーションが話題になるにつれて、その関連株の将来性にも注目が集まっており、多くの投資家が今後の投資先として検討しています。そこで今回は、そんなメタネーションについて、その概要や関連する銘柄をいくつかピックアップして解説していきます。

①メタネーションとは

1-1. メタネーションの概要

「メタネーション」とは、水素と二酸化炭素を化学反応させてメタンを合成することを指します。このプロセスによって生み出されたメタンは、「カーボンニュートラルメタン」または「合成メタン」と呼ばれており、空調やキッチン、または給湯などの燃料として天然ガスの代わりに活用することができます。ガスを使う際には二酸化炭素が生じますが、これを原料として再利用することでさらなる合成メタンを作り出せるため、排出と回収によって二酸化炭素を相殺できるというメリットがあります。

最近では、脱炭素への取り組みが年々活発化していますが、新規に脱炭素化エネルギーの社会実装を実施するには莫大な時間と投資が必要になることが懸念されています。しかしそんな中、都市ガスをメタネーションに置き換え、既存のインフラで輸送や供給を行うことにより、社会的なコストを抑えながら、ガス分野における「ネット・ゼロ」を目指すことができるというわけです。

このように、メタネーションは利便性の高いテクノロジーとして大きな注目を浴びており、日本政府はこれを「カーボンリサイクル」の有望なテクノロジーの一つとしているほか、2030年以降における脱炭素社会実現の柱の一つとしています。

1-2. メタネーションの歴史

メタンの合成および製造技術のパイオニアとしては、フランスの化学者であるポール・サバティエ(Paul Sabatier)氏が知られています。サバティエ氏は、1911年、水素と二酸化炭素を高温・高圧の環境に置いた上でニッケル触媒を使った場合、メタンと水が生成できることに気づきました。これは「サバティエ反応」と名付けられ、1912年にはノーベル化学賞を受賞しました。

サバティエ氏によって早い時期からメタンの製造技術が開発されていたものの、実際にその製造に成功したのは1995年になってからのことでした。東北大学および東北工業大学名誉教授である橋本功二氏の研究グループが、太陽光発電で生み出した電力を使って水を電気分解し、そこから取り出した水素を用いることによって世界初となる合成メタンの製造に成功したのです。このプロセスにおいては、メタンが燃焼した際に発生する二酸化炭素を装置に戻すことができる仕組みが用いられていたため、これによって再生成サイクルが確立されました。この成果は日本を含むヨーロッパなどで活発に研究されており、現在では関連するさまざまな取り組みが行われています。

2. メタネーションの特徴

2-1. 二酸化炭素排出量を二割削減

近年、昼夜や季節によってその出力が変動する太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーが広く普及しており、それに伴って、再生可能エネルギー由来の余剰電力が増加しています。そんな中、都市ガス、化学品原料、合成ガスなどにメタネーションのテクノロジーを用いることによって、日本の二酸化炭素排出量のおよそ二割を削減できると言われています。

2-2. 2つのフェーズでのメタン生成

いわゆるカーボンニュートラルメタンは、2つのフェーズを経て生成されます。第1フェーズでは、再生可能エネルギーによる水の電気分解が行われ、第2フェーズがメタネーションとなります。

第1フェーズの水の電気分解においては、太陽光発電や風力発電などの余剰電力を用いて水を水素と酸素に分解します。そして、次の第2フェーズでは、水の電気分解で得られた水素を使ってメタンを生成するメタネーション反応を起こします。具体的には、水素と二酸化炭素を化学反応させ、メタンと水を発生させるというものです。

2-3. 導入が容易

メタネーションがここまで注目を集めているのには、大きく分けて二つの背景があると考えられています。

まず一つ目は、脱炭素社会への移行過程における、二酸化炭素の削減ソリューションとしての重要性です。最近では脱炭素の実現に向けて、国内外で再生可能エネルギーを水素に変換して貯蔵および利用する「Power to Gas(P2G)」技術の実証が積極的に進められています。しかしその一方で、水素の利活用には「水素パイプライン」や「水素ステーション」などをはじめとする新たなインフラの構築や、水素利用に向けた要素技術開発が必要なため、まだまだ多くの課題が残っているのが現状です。

そんな中、メタンは水素と比較して、エネルギー供給システムの大きな構造変化を伴わずとも導入することができます。実際、メタンは天然ガスや都市ガスのおよそ9割程度を占める成分として知られており、パイプラインや貯蔵タンク、LNG火力発電所、タンカーなどといった既存のエネルギーインフラを有効活用することができます。

無論、メタネーションは水素生成と比べて変換工程が一つ多くなっているため、およそ10~20%程度のエネルギーロスが生じることが分かっており、燃料製造費用も増加してしまいますが、既存のガスネットワークを活用できるため、生成から輸送や使用に至るまでの全体的な費用を抑えることができると考えられています。

2-4. カーボンリサイクルの実現

メタネーションは、官民一体となって検討が進められている「CCU(Carbon dioxide Capture and Utilize:CO2の回収・有効利用)」の手段として関心を集めています。

前述した通り、メタネーションでは再生可能エネルギーなどから生じる余剰電力によって生み出されたいわゆる「二酸化炭素フリー水素」と、火力発電所などから排出される二酸化炭素を原料にしてメタンが作られますが、利用する際の二酸化炭素排出量が合成する際の回収量と相殺される仕組みとなっているため、全体としてみれば大気中の二酸化炭素の量は増加ぜず、カーボンニュートラルな燃料と言うことができます。

そして、このカーボンニュートラルメタンを再び発電所や工場などで使い、二酸化炭素を回収するというサイクルを形成すれば、「カーボンリサイクル」を実現することができます。このように、今まで懸念されていた二酸化炭素を資源化することに成功すれば、サスティナブルな循環型社会形成に大きく貢献できると考えられています。

では、次の項からは実際に、関連銘柄をいくつかピックアップして紹介していきます。

3. 東京ガス(9531)

引用:東京ガス

「東京ガス株式会社」は、主にエネルギー・ソリューションに関連する事業を展開するガス会社で、都市ガス事業者として世界最大、日本最大手のシェアを誇っています。1885年10月1日に創立された歴史ある国内企業の東京ガスは、「未来をつむぐエネルギー」というグループスローガンのもと、資源・エネルギーの環境に調和した利用によって、地域と地球の環境保全を積極的に推進し、社会の持続的発展に貢献することを目指しています。

また、中長期的に取り組むべきサステナビリティ上の重要課題に基づいた事業活動を推進するとともに、「執行役の合理的な意思決定を支援する会議体(経営会議)」および、社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を活用することで、グループ全体のサステナビリティ経営を推進しています。さらに、特に重要な事項については取締役会に報告するなど、サスティナブルな経営に尽力しています。

東京ガスの事業内容は多岐にわたります。主要な分野は以下の通りです:

  • エネルギー・ソリューション:都市ガスの製造・販売、LNG販売、電気の製造・供給・販売、エンジニアリングソリューション事業、ガス器具・ガス工事・建設などが含まれます。
  • ネットワーク:ガス導管事業、都市ガス供給事業など。
  • 海外:海外における上流事業、中下流事業など。
  • 都市ビジネス:不動産開発、土地・建物の賃貸・管理など。

東京ガス株式会社は、これらの事業を通じて、日本および世界のエネルギー分野における重要な役割を果たしています。

メタネーションへの取り組み

東京ガスでは、経営ビジョンである「Compass2030」において、事業活動全体で、クライアント先を含めて排出する二酸化炭素を「ネット・ゼロ」にする挑戦を行うと説明しており、その鍵を握るのがメタネーションであると語っています。具体的には、「ハイブリッドサバティエ技術」、「PEMCO₂還元技術」、「バイオリアクター技術」という3つの革新的なメタネーション技術を用いてカーボンニュートラルを実現するということです。

これらのメタネーション技術の研究開発は数年前から始められており、現在は社会実装に向けてラボベースで検討が進められている段階だということです。なお、これらは今すぐ社会実装できる段階ではないため、当面のメタネーション技術の主流になるのは既存技術である「サバティエ反応」を用いたメタンの合成技術になるとしています。

東京ガスでは、2020年代前半に小規模実証、同後半には国内での地産地消などによる活用を進めており、2030年には海外で大量に製造した合成メタンを日本に輸送し、東京ガスが供給する都市ガスの1%分を合成メタンに置き換えることを目指しています。また、その後は商用化を順次拡大し、2050年には東京ガスが目標としているカーボンニュートラルを実現するということです。

4. ENEOSホールディングス(5020)

引用:ENEOS

ENEOSホールディングス株式会社は、2010年4月1日に設立されたENEOSグループの持株会社です。ENEOSホールディングスでは、「エネルギー・資源・素材における創造と革新を通じて、社会発展と活力ある未来づくりに貢献する」というグループ理念のもと、エネルギーと非鉄金属の両事業領域において、上流から下流にわたるさまざまなビジネスを展開しています。

また、「エネルギー・素材の安定供給」と「カーボンニュートラル社会の実現」との両立に向けた挑戦を行っており、国内燃料油の販売実績シェアはおよそ50%で国内第1位となっているほか、太陽光などによる発電能力については2023年3月末時点で239万kwを誇っています。

なお、ENEOSホールディングスの主な事業内容は、下記の通りとなっています。

  • エネルギー事業
  • 石油および天然ガス開発事業
  • 金属事業を行う子会社およびグループ会社の経営管理ならびにこれに付帯する業務

メタネーションへの取り組み

2023年8月29日、ENEOSホールディングスは大阪ガス株式会社と共同で、大阪港湾部における「グリーン水素」を活用した国内初となる国産「e-methane(合成メタン)」の大規模製造に関する共同検討をスタートしたことを発表しました。この検討は、海外で製造したグリーン水素を効率的な水素の貯蔵・輸送手段の一種であるメチルシクロヘキサンに変換して輸送し、国内で回収した二酸化炭素と組み合わせて、国産合成メタンを大規模に製造するものとなっています。なお、今回の発表では、2030年までに大阪港湾部にて6,000万m3/年(1万Nm3/h、一般家庭約25万戸相当)規模での製造設備構築および製造スタートを目指すとしています。

前述した通り、ENEOSホールディングスはグループの長期ビジョンにおいて「エネルギー・素材の安定供給」と「カーボンニュートラル社会の実現」の両立を掲げており、脱炭素社会・循環型社会の実現に向けた本格的な水素の大量消費社会を見据えて、国内外で「二酸化炭素フリー水素サプライチェーンの」構築に取り組んでいます。

そんな中、今回スタートする検討を通して国産の合成メタンの大規模製造設備を構築し、カーボンニュートラルとエネルギー安定供給の早期実現に向けて取り組んでいくということです。

5. IHI(7013)

引用:IHI


株式会社IHIは、1889年1月17日に設立された歴史ある国内の製造会社で、三菱重工業、川崎重工業と共に三大重工業の一角を成しています。IHIでは、「技術をもって社会の発展に貢献する」、「人材こそが最大かつ唯一の財産である」という経営理念のもと、ESGを軸とする経営を徹底するとともに、事業変革のために不可欠なデジタル基盤の高度化、また企業体質の変革を成し遂げる上で最も重要である変革人財の育成・獲得を進めています。

また、「サステナビリティ推進体制」を整備し、サスティナブルな社会を実現するために、ESG経営の基本方針や具体的施策を検討しているほか、実施状況を評価・改善することを目的としてESG経営推進会議を設置するなど、環境への取り組みを積極的に行っています。

なお、IHIの主な事業内容は、下記の通りとなっています。

  • 資源、エネルギー、環境関連事業
  • 社会基盤関連事業
  • 産業システム、汎用機械関連事業
  • 航空、宇宙、防衛関連事業

メタネーションへの取り組み

2022年10月、IHIは二酸化炭素と水素を化学反応させて、1時間に12.5Nm³の合成メタンを製造する小型メタネーション装置の販売をスタートすることを発表しました。

この装置は工場や研究所、また事業所などにおけるカーボンニュートラル実現に向けた検討を目的として、メタネーション装置を試験運用したいというニーズから製品化されたものとなっており、設計標準化を行うことによって導入コストを抑え、短納期での納入を実現しています。

また、メタン合成に必要な機器をコンパクトな筐体にパッケージ化しているため、短期間で容易に据付することができるだけでなく、装置を複数導入することによって、メタン製造量を拡張することも可能だということです。

6. まとめ

近年、脱炭素社会への取り組みの一環としてメタネーションに大きな注目が集まっています。メタネーションとは水素と二酸化炭素を化学反応させてメタンを合成することを指し、他の脱炭素プロジェクトと比較してその導入障壁が低いことから、国内外での普及が急速に進んでいます。

今回紹介したように、メタネーションはその利便性や効果が高く評価されていることから、いくつかの国内企業がすでにを導入を行っており、こうしたメタネーション関連株は大きな将来性を秘めていると言えるため、投資家の方々は一度、メタネーションへの取り組みを参考に投資先を選んでみても良いかもしれません。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12