DFINITY財団とローランド・ベルガー提携、ブロックチェーンを活用したリサイクルインセンティブの形とは?

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地球の未来を守るため、企業のリサイクル活動と環境保全が急務です。しかし、これらの取り組みをどう評価し、目に見える形で示すかが課題となっています。

国際的には、ディフィニティ財団がリサイクル活動に報酬を与える革新的なブロックチェーン技術を導入しようとしています。

この記事では、ブロックチェーンを活用したリサイクルクレジット発行プラットフォームの開発と、日本国内の企業による具体的なリサイクル活動の事例を紹介します。

目次

  1. リサイクル活動のインセンティブを与えるプラットフォームとは
    1-1. 発行されたクレジットの信憑性を確保
  2. 企業がブロックチェーンを使って取り組んでいるリサイクルとは
    2-1. コカ・コーラボトラーズジャパンの「使用済みペットボトルのリサイクル」
    2-2. Green Token by SAPのGreenTokenシステム
    2-3. アウディが循環経済性を追求する廃棄自動車の検証
    2-4. ソーシャルアクションカンパニーの「actcoin」で社会貢献活動を促進
  3. 国外編、ノルウェーの成功事例、ペットボトルのリサイクルシステム
  4. ブロックチェーンを活用したリサイクルや温室効果ガス排出量の追跡
    4-1. リサイクルの促進
    4-2. CO2排出量の管理
  5. まとめ

①リサイクル活動のインセンティブを与えるプラットフォームとは

スイスの非営利団体ディフィニティ財団(DFINITY Foundation)は2023年10月16日、欧州のグローバルコンサルティングファーム、ローランド・ベルガー(Roland Berger)と協力して、リサイクル活動にインセンティブを与えるグローバルスタンダードの基盤技術の開発を発表しました。このプロジェクトでは、ディフィニティ財団が支援するレイヤー1ブロックチェーン「ICP(インターネットコンピューター)」を用いて基盤技術を構築します。

ローランド・ベルガーは昨年6月、世界的な廃棄物問題への対応として、VRC(Voluntary Recycling Credits:自主リサイクルクレジット)基準の導入を発表しました。この基準は、新たに開発されるプラットフォームでトークン化され、リサイクル業者や廃棄物生産者は、トークンを受け取り、リサイクルクレジットとして売買・取引が可能になります。

これにより、リサイクル業者や廃棄物生産者は、リサイクル活動によるインセンティブを受け取ることができます。

1-1. 発行されたクレジットの信憑性を確保

発行されるクレジットはブロックチェーンに基づいているので、取引履歴に透明性があり、追跡も保証されます。この透明性により、、廃棄物生産者・リサイクル業者を含めた全ての関係者が購入、販売、取引するクレジットの信憑性を信頼することができます。クレジットの発行元が証明されているのもクレジットの信憑性を確保しています。

またブロックチェーン技術により、クレジットが一度記録されると、変更や複製ができないことが保証されるため、それによりVRCシステム全体の完全性が保証されます。

②企業がブロックチェーンを使って取り組んでいるリサイクルとは

「環境対策」は今や国際的な焦点となり、企業には前向きな行動が求められています。その一環として、「プラスチックのリサイクル」の推進に向けて、ブロックチェーンの活用が注目されています。この技術を活用し、新たな挑戦を行っている企業をご紹介します。

2-1. コカ・コーラボトラーズジャパンの「使用済みペットボトルのリサイクル」

同社では、東京都内のファミリーマートを舞台に、「使用済みペットボトルのリサイクル」に関する実証実験を始めました。この「コカ・コーラのブロックチェーンによるPETリサイクル」という実証実験は、東京都内のファミリーマートにて行われ、旭化成、ファミリーマート、伊藤忠商事、伊藤忠プラスチックス(CIPS)もこのプロジェクトに参画しています。

同実験は、「BLUE Plastics(ブルー・プラスチックス:Blockchain Loop to Unlock the value of the circular Economy)」というプロジェクトの一部として行われます。このプロジェクトは旭化成が主導し、資源循環社会の実現に向けたデジタルプラットフォームを開発するというものです。また、このプロジェクトのトレーサビリティ(追跡可能性)システムには、日本IBMのブロックチェーン技術が導入されています。

実証実験は6月15日から8月31日までの約2ヶ月間、ファミリーマートの秋葉原富⼠ソフトビル店、三軒茶屋東店、⼭王⼤森駅前店の3店舗で行われました。昨年度の2022年9月〜11月にも東京都葛飾区のファミリーマートで実験が行われ、その結果は、ペットボトルの回収量が通常の2倍以上に増えたそうです。さらに回収されたボトルの品質(洗浄やラベル除去)も大幅に向上したとのことです。

2-2. Green Token by SAPのGreenTokenシステム


DIC株式会社は実証実験においてSAPのGreenTokenシステムを用いています。これにより、生産初期段階からサプライチェーンに沿って原材料を追跡し、リサイクル原料の製造工程や検査工程、物性情報や品質情報を可視化することを目指しています。SAPは、そのグローバルネットワークを活用して、社会に対してポジティブな貢献を行っている企業です。

GreenTokenはプライベートブロックチェーン技術を駆使し、プラスチック素材の原材料から製品の製造・販売・使用、回収、粉砕、再利用までを追跡し、サプライチェーンの透明性を高めます。つまり、資源ライフサイクルの全過程を追跡するシステムです。

さらに、GreenTokenシステムではデジタルツイン技術を導入しています。原材料の属性や、カーボンフットプリント、市場回収品の出自、サステナビリティ認証データなどの情報をトークンに記録します。これにより、リサイクル原料が他の原材料と混合され、新たな製品が生産された場合でも、そのリサイクル原料を正確に追跡することが可能になります。

またDIC社は、食品パッケージ市場という注力分野における循環型社会の実現を目指しています。2020年11月には、パートナー企業と共同でポリスチレンの完全循環型リサイクルに取り組む計画を発表しました。両社が持つ技術やリサイクルシステムを活用し、新たなモデルを提唱しています。

この新モデルでは、マテリアルリサイクルに適していない市場回収品を再生するためにケミカルリサイクル技術を用いて、ポリスチレンを原料であるスチレンモノマーに還元します。これは完全な循環型リサイクルの実現を目指したものです。また、サステナビリティへの注目が高まる中、プラスチック素材のリサイクル需要が増し、リサイクル原料の出自や含有物質の情報が必要とされています。

2-3. アウディが循環経済性を追求する廃棄自動車の検証

2023年3月、自動車メーカーのアウディは、「マテリアルループプロジェクト」において、廃棄自動車の循環経済性を検証するために、オランダのCirculariseが開発したブロックチェーンベースのトレーサビリティシステムを導入しました。解体後の車体は細断され、スチール、アルミニウム、プラスチック、ガラスの各材料群に分けられますが、Circulariseは解体からリサイクル、さらに新車への再利用に至るまでの全ての材料の流れを追跡するため、ブロックチェーンベースのトレーサビリティシステムをプロジェクトに提供しました。

注目すべきは、Circulariseのトレーサビリティシステムがブロックチェーン技術とゼロ知識証明をベースに、独自開発の「Smart Questioning」技術を使用している点です。製品の設計・仕様、加工条件、リサイクル履歴等のトレーサビリティ関連情報やカーボンフットプリント、リサイクル比率等の資源効率を示すデータ、企業のSDGs対応情報、第三者認証情報といった環境対応指標を、機密性を保ちながら選択的に開示することでサプライチェーンの透明化に貢献しているそうです。

2-4. ソーシャルアクションカンパニーの「actcoin」で社会貢献活動を促進

引用:actcoin

社会貢献活動を推進するため、国内のソーシャルアクションカンパニーは、ブロックチェーン技術を用いて個々の環境保全貢献活動を明確化しています。これまで評価できなかった一人ひとりの社会貢献活動を可視化し、より多くの人々の活動(ソーシャルアクション)を定量化する手段として、2019年にブロックチェーンを用いた社会貢献アプリ「actcoin」のサービスを開始しました。

2022年12月2日、福岡県北九州市は、この「actcoin」を開発するソーシャルアクションカンパニーと連携協定を結び、一緒に気候変動に対抗するプロジェクト「KitaQ Zero Carbon」を推進しています。このプロジェクトは市民生活との接点を増やし、取組の見える化を図り、脱炭素型ライフスタイルへの移行を促すことを目指しています。

③国外編、ノルウェーの成功事例、ペットボトルのリサイクルシステム

日本国内だけでなく、海外でもブロックチェーンを用いたプラスチックリサイクルの取り組みが進行しています。ノルウェーの首都オスロで活動するスタートアップEmpowerは、「プラスチック・ポジティブ」という理念のもと、様々な活動を展開しています。

Empowerが提供するシステムは、地域の人々にプラスチックごみを回収してもらう代わりにデジタルトークンを付与します。そして、そのプラスチックごみが回収後にどのように再利用されるのかまでを、ブロックチェーン技術により追跡可能にしています。この企業は2018年に設立され、2020年現在では多くのプラスチック廃棄物収集業者、廃棄物管理会社、リサイクルプラスチック製造業者などと提携。ヨーロッパ、アジア、アフリカなど世界15か国でシステムの試験運用を行っています。

Empowerの本拠地であるノルウェーでは、ペットボトルのリサイクルシステムが既に確立されています。ノルウェーで販売されるペットボトルの97%は、スーパーマーケットなどに設置された回収ボックスに戻され、リサイクルされています。これはペットボトルの価格に少額のデポジット(保証金)が上乗せされており、それが回収ボックスに返却した際に返ってくる仕組みとなっているからです。

先進国ではペットボトルのリサイクルに関するシステムが導入されていますが、ノルウェーのリサイクル率は特に高いです。その背景には、プラスチック製造・販売業者に課される環境税があります。全国のリサイクル率が95%を超えるとこの環境税が免除されるため、事業者は自社のリサイクルへの取り組みを強化しています。

しかし、ペットボトル以外のプラスチックのリサイクルは、ノルウェーでもまだ十分に進んでいないとのことです。分別されてリサイクルされると思われていたプラスチックが、実際には焼却されるだけというケースも存在します。このような問題の解決は、リサイクル技術のさらなる発展によって実現されると考えられます。

④ブロックチェーンを活用したリサイクルや温室効果ガス排出量の追跡

環境持続性への配慮を企業活動に取り入れることは、今やほぼ必須となっています。多くの企業がサステナビリティへの取り組みを進め、その一環として様々なプロジェクトを発表し、具体的な行動を起こしているところもあります。

しかし企業が行うサステナブルな取り組みの結果や成果が、消費者に適切に伝わっていなかったり、「サステナビリティ」という言葉を騙り、実際の行動は表面的なものにとどまっている企業も存在します。そこでブロックチェーンを使うことで、データを追跡することができ、データの改ざんやあいまいさを排除し、消費者に対して情報を信頼性高く提供することが可能になります。

4-1. リサイクルの促進

ブロックチェーンは、リサイクルの促進にも一役買っています。例えば、製品の流通過程や廃棄物の処理をブロックチェーン上で追跡し、リサイクル可能な資源の再利用を推進することが可能です。さらに、リサイクルされた製品に対しては、ブロックチェーン上で認証証明を発行し、環境に配慮した製品の製造を奨励することもできます。またリサイクルの実績をあげた企業には、トークン化したクレジットを発行し、そのトークンを売却(オフセット)することでインセンティブを得ることの可能です。

4-2. CO2排出量の管理

ブロックチェーンを用いることで、CO2排出量のトラッキングや管理がより容易になります。企業はCO2排出量の削減目標を設定し、その達成度をブロックチェーン上で監視・管理することができます。さらに、CO2排出量を証明する認証証明をブロックチェーン上で発行し、排出量の透明性を向上させることが可能です。そしてリサイクル同様、カーボンクレジットをトークンで発行し、トークンを付与された企業は、市場で取引(オフセット)することでインセンティブを得ることも可能です。

⑤まとめ

ブロックチェーンは仮想通貨の基盤として利用されるというイメージから、今では、金融や不動産、物流、食品トレーサビリティなどの様々な分野で活用されてきました。さらに、持続可能な地球環境を守るためのリサイクル促進やCO2排出量削減のためにも、ブロックチェーンの活用が期待されています。

リサイクル活動は個人から大企業まで、誰もが努力すれば取り組める活動でもあります。ただ個人も大企業も長く継続して続けていくためには、リサイクル活動のインセンティブであったり、活動した実績の可視化は重要なポイントになってくると言えます。そのためにもブロックチェーンの技術を使って、システムが構築されることで、誰もが参加しやすくなるのだと言えるでしょう。

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立花 佑

自身も仮想通貨を保有しているWebライターです。HEDGE GUIDEでは、仮想通貨やブロックチェーン関連の記事を担当。私自身も仮想通貨について勉強しながら記事を書いています。正しい情報を分かりやすく読者の皆様に伝えることを心がけています。