本記事では、株式会社ICHIZEN HOLDINGSの代表取締役である水野倫太郎氏から寄稿をいただき、Web3.0と地方創生におけるブロックチェーン技術の可能性についてご紹介します。ICHIZEN HOLDINGSは、Web3事業支援や地域活性化を推進するインキュベーション企業であり、水野氏の視点を通じて、Web3.0が地方創生に与える影響や、NFTを活用した地域経済の発展に向けた取り組みについて考察いただきました。
目次
昨今、Web3.0やNFTを取り入れる地方自治体が増えてきています。関係人口の増加・可視化や収入の向上、地域活性化、環境保全など、様々な取り組みが生まれています。
Web3.0やNFTと地方創生・地域活性化がどのような点で相性が良いのかについては、前回の記事「ブロックチェーン・Web3.0の時代は本当に到来するのか?人類・世界の発展の仕方から考える」の続きとして、ブロックチェーンが世界に投げかけるテーマという大きな観点から考えていきます。
前回の記事では、ブロックチェーン・Web3.0の時代が来ると考えている理由について語っていますので、もしまだ読まれていない場合はぜひそちらからお読みください。
本記事もWeb3.0事業者としてポジショントークましましですので、考え方の1つとして捉えていただければと思います。
ブロックチェーンのテーマ:財産権の回帰
地方創生とブロックチェーンの相性を考える前に、ブロックチェーンという技術がどのようなものか、その技術が世界に投げかけるテーマは何かについて考えていきます。
ブロックチェーンの特性を大雑把にいえば、
- 改ざんが難しい
- 分散性がある
という点が挙げられます。
このようなブロックチェーンが世界に投げかけるテーマは、「財産権の回帰」だと考えています。ここでは「財産権の回帰」というテーマを、これまでの歴史と照らし合わせながら紐解いていきます。
そもそもブロックチェーンが使われた仮想通貨が出てきた&流行した理由の1つは、「法定通貨や政府(中央)って信用できない」という考えが広がっていたからだと思います。
その上で、最初の仮想通貨であるビットコイン(BTC)は、マイニングというインセンティブ設計によってユーザー数(分散性)を拡大し、ローンチされてからの約15年にわたってシステム自体がハッキングや不具合を一度も経験していません。ビットコインはP2P(ピア・ツー・ピア)の概念を改めて世界に広めた立役者であり、自分たちで全てを管理するという観点から、分かりやすく「財産権の回帰」を行うものだと思います。
ビットコインの次に出てきたのがイーサリアムです。ビットコインは基本的にお金の取引を記録するものですが、イーサリアムでは画像など様々なデータも含めた、お金以外の取引記録が可能なものです。これによって、イーサリアムはこれまでは気づかれていなかった、本当は価値のあるものを可視化し、財産になりうる権利を回帰することができるようになりました。
このように、ブロックチェーン自体が「財産権の回帰」をテーマにした技術だと考えています。
NFTの革命的な部分
地方創生との相性について述べるには、次にNFTやWeb3.0がどのように革命的な存在であるのかについてお話する必要があります。
2021年・2022年あたりでNFTバブルになりましたが、NFTはなぜあれほどの熱狂を生み出したのでしょうか。もちろん、NFTが簡単に作成でき、当時は想像できない値動きをするため、注目されたこともあります。
私は、あれだけNFTそしてWeb3.0が革命的な存在になった本質は「インセンティブ設計によりユーザーの獲得、およびユーザーに行動の促進ができる」からだと思っています。
NFTバブルの火付け役となった「STEPN」を見てみましょう。STEPNは、NFTスニーカーを購入して移動することでトークンが稼げるMoveToEarnのブロックチェーンゲームです。歩くだけで多くのトークンを稼げるという単純さが、人々を熱狂させました。
このSTEPNをちょっとうがって見ると、STEPNが本当に革命的な部分は、「歩く・移動する」という価値を可視化・金融化したところだと思います。これまで価値があると明確に認識されていなかった行為や行動に対して、価値を見出し還元するということです。そして、その結果としてトークンがもらえるというインセンティブ設計によって、ユーザーはスマホを片手に歩き始めました。つまり、行動を変える事に成功したのです。
STEPNに限らず、多くのNFTプロジェクトでは継続的なマネタイズが課題として挙げられますが、STEPNはトークンを対価に移動データという一次情報を取得しているので、そのデータを用いたマネタイズはいかようにもできると思います。
STEPNをはじめとした、うまくエコシステムが循環しているWeb3.0プロジェクトでは、ユーザーがプロジェクトの期待する行動を取ることで、その行動の対価としてトークンを受け取るという設計が巧妙にできています。
Web3.0の世界では、現実世界での行動や性格にかかわらず、NFTスニーカーを使って歩いたり走ったりするだけで、エコシステム内で「ポジティブな行動をしているユーザー」として認識されるのです。
地方創生✖︎ブロックチェーン=善い人が得をする世界
「財産権の回帰」がテーマとなっているブロックチェーンでは、STEPNの場合もそうですが、もっと分かりやすく現実においても善行を積む人が報われる世界を実現できるはずです。
ただ、その理想はトークンの射幸性と複数のウォレット所持という観点から実現するまでにはいくつもの壁があります。特に複数のウォレット所持によって、オンチェーン上では複数の人格を保有することも可能になっています。この状態では、なかなかブロックチェーンによって善い人が得をする世界を築くことは難しいです。
ここでようやく地方創生・地域の出番です。前の記事でも触れたように、今後ブロックチェーン・Web3.0の世界が来ると仮定した場合、ウォレット問題は非常に重要だと思います。
賛否両論ありますが、マイナンバーカードからウォレットを生成したり、ウォレットと個人を結びつけることが当たり前になる時代が来れば、ウォレット毎にクレジットスコアを貯め、信用力を高めるというのが非常に重要だと思います。
この観点でNFT(SBT)というのは、ウォレットを通して自分自身を証明する手段として非常に適していると思います。そして、都道府県・地方自治体・関連団体が発行するNFTは、その地域への貢献や繋がりを証明するものとして、ウォレットの信用力を高めるうえで相性が良いです。関係人口の創出や可視化・税収の増加・観光の促進など、具体事例ベースでも、NFTやWeb3.0はもちろん相性が良いとは思います。
ブロックチェーンという技術から考えると、今後訪れるであろうWeb3.0という時代において、信用力を高める手段としてWeb3.0と地方創生・地域活性化は相性が良いのだと考えています。
「貢県」を可視化する「デジさと」で次の時代の信用基準を
弊社株式会社ICHIZEN HOLDINGSでは、前回の記事「ブロックチェーン・Web3.0の時代は本当に到来するのか?人類・世界の発展の仕方から考える」と本記事「地方創生とブロックチェーン・Web3.0・NFTの相性|技術のテーマから考える」で語ってきたような考え方をもとに、人々の貢県/貢献を可視化するNFTマップ「デジさと」を開発・運営しています。
デジさとは、ウォレット内の地域に関係するNFTの保有数に応じて「貢県度」をスコアリングするプラットフォームです。2024年9月時点では把握している293個の取り組みのうち、EVM互換のあるNFTに対応しています。
デジさとでは、NFTの販売機能やふるさと納税の寄付受付機能があり、メールアドレスの登録だけでウォレットも自動的に生成されるため、普通のECサイトのようにNFTを取り扱うことができます。
デジさとで可視化する「貢県度」は、今後訪れるであろうWeb3.0の時代における1つの信用基準へと昇華させていきます。「貢県度」を起点として、まずはその地域で使えるクーポンなどの提供から始めていき、ゆくゆくは本当のクレジットスコアのように取り扱うことを目指しています。
そんなデジさとでは第一弾目の取り扱いプロジェクトとして、山形県西川町における「次世代アート型まちづくり」の寄付NFTを販売しています。本プロジェクトは、山形県西川町と世界経済フォーラムの傘下組織「Global Shapers Tokyo Hub」が共同で、町のシンボルとなる巨大なアートオブジェクトを作り上げるものです。町の方々との対話を進める中で、「つなぐ」をテーマにアートオブジェクトを制作しています。
こちらのNFTを購入していただくと、寄付証明書NFTが受け取ることができるだけでなく、アートの説明看板に自分の名前など好きな文字を入れることが出来たり、ビールをもらうことができたりと、ここだけの特典があります。もし少しでもご興味持っていただけたら、ぜひ寄付をお願いいたします。
「西川町70周年町おこしアートNFTーGlobal Shapers Tokyo」への寄付はこちら
水野 倫太郎
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