今回は、JPYCについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- JPYC株式会社とは
1-1.JPYC株式会社の概要
1-2.JPYC株式会社の事業内容 - JPYCの特徴
2-1.対応ネットワークが多い
2-2.円に変えることなく利用可能
2-3.さまざまなユーティリティがある
2-4.今後のメタバース展開 - まとめ
仮想通貨はその価格変動の大きさから、実際の生活における物品の購入に利用することは困難という印象をお持ちの方は多いでしょう。しかし、日常生活でも利用可能なコインとして開発される仮想通貨もあります。円やドルといった法定通貨や金などの価格を連動させることによって普段遣いにも利用しやすくなるというものです。
このように開発された仮想通貨はステーブルコインと呼ばれ、日本円に対応しているステーブルコインの代表例には「JPYC(JPYCoin)」があります。JPYCは、Web3スタートアップ企業であり国内のブロックチェーン業界を牽引している「JPYC株式会社」によって発行されており、そのユースケースを拡大しています。
今回は、JPYCの発行元であるJPYC株式会社について、その事業内容や特徴を解説していきます。
①JPYC株式会社とは
1-1.JPYC株式会社の概要
JPYC株式会社とは、19年11月に設立された日本国内のWeb3関連のスタートアップ企業です。
代表取締役を務める岡部典孝氏は、21年8月19日に「一般社団法人 ブロックチェーン推進協会(BCCC)」の理事に就任したほか、21年11月8日には「一般社団法人 DeFi協会アドバイザー」に就任するなど、国内のブロックチェーン業界において最も著名な人物の一人となっています。
岡部氏はまた、21年12月22日に発表された「一般社団法人 日本ブロックチェーン協会(JBA)」と仮想通貨およびブロックチェーンの総合番組「CONNECTV(コネクTV)」が共催する「Blockchain Award 03」において「Person of the Year(Japan)」として選出され、21年にブロックチェーン界隈で最も活躍した人物として表彰されました。
このように業界から大きな注目を集めている岡部典孝氏率いるJPYC株式会社は、「社会のジレンマを突破する」というミッションのもと、Web3に関連したさまざまなプロジェクト推進およびサービス提供を行なっています。
1-2.JPYC株式会社の事業内容
JPYC株式会社の事業内容は、大きく下記の2つに分けられます。
①前払式⽀払⼿段JPYC(JPYCoin)の発⾏および販売
JPYCの主な事業として、ブロックチェーンのトークン規格である「ERC20」でつくられた前払式⽀払⼿段「JPYC(JPYCoin)」の発行および販売を行なっています。JPYC株式会社は自社のミッションとして、「資本の流動性向上を実現させ、誰もがイノベーションを起こしやすい土壌を創る」ことを挙げているJPYCは、その方法の一つとして「ステーブルコイン」の存在があるとしています。
JPYC(JPYCoin)は、21年1月に日本で初となるERC20規格の自家型前払式支払手段(※)としてローンチされました。JPYC(JPYCoin)は日本円ステーブルコインとして開発され、VプリカなどEコマースで幅広く使用できるポイントとの交換や松屋銀座店頭での代理購入によって1JPYC=1円で商品の購入が可能となっているなど、さまざまなユーティリティを有しています。
※自家型前払式支払手段:前払式支払手段の発行者よりサービス提供を受ける場合や商品購入をする場合に限って、対価として使用することができる前払式支払手段のことを指します。
②コンサルティング
JPYCではステーブルコインの発行や販売のほかに、NFTをはじめとするブロックチェーン全般に関するコンサルティング業務も行なっています。
なお、JPYC株式会社の主な収益源は、JPYCが決済に使用された場合にかかる若干の手数料と、コンサルティングフィーによるものだということです。
②JPYCの特徴
JPYC株式会社の核となるJPYC(JPYCoin)の特徴について、解説していきます。
2-1.対応ネットワークが多い
JPYCはEtherum(イーサリアム)、Polygon(ポリゴン)、Gnosis(ノーシス)、Shiden(シデン)、Avalanche(アバランチ)、Astar(アスター)という多くのネットワークに対応しており、さまざまなプロダクトで利用可能となっています。
2-2.円に変えることなく利用可能
JPYCを用いることによって、ユーザーはデジタルコインから円に交換することなく、物品の購入が可能です。
一般的に仮想通貨でそのまま物品を購入できるケースは少なく、仮想通貨取引所において日本円に換金する必要があります。しかしその際に換金手数料がかかったり、日本円をATMから引き出す際の手数料や手間がかかったりと、かなりの行程を踏む必要があります。
一方でJPYCはあくまでも通貨建資産であり、資金決済法上の自家型前払式支払手段となっているため、仮想通貨よりも手軽に、普段の生活に利用することが可能です。
2-3.さまざまなユーティリティがある
ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)、日本円で購入したJPYCは、JPYC社の公式サイトを通じてAmazonなど各種ECサイトで使用できるVISAのポイントと等価交換が可能となっており、二次流通の価格と関係なく「1JPYC=1円」で商品を購入することができます。
また、これ以外にも下記のようなシーンで利用することが可能です。
①Vプリカギフトとの交換
Vプリカギフトとは、インターネット上のビザ加盟店においてクレジットカードと同様に利用可能なネット専用ビザプリペイドカードのことで、JPYCはこのVプリカギフトとの交換が可能です。
②giftee Boxとの交換
giftee Boxとは、最大500種類におよぶラインナップの中から好きな商品を自由にえらべるギフトのことで、JPYCはこのgiftee Boxとの交換も可能です。
③松屋銀座における代理購入
JPYCは21年12月6日から、松屋銀座の対象売場における代理購入に利用可能となっています。代理購入の流れとしては、JPYC保有者が購入を希望する商品をJPYC株式会社に申し込み、JPYC株式会社が松屋銀座から商品の代理購入を行なって販売するという仕組みです。
なお、実際の店舗における商品の代理購入はこれが初の試みとなっており、サービス提供期間は22年11月30日までの予定だということです。
④ふるさと納税
JPYCはふるさと納税制度において、JPYC決済による特定の自治体への金銭の寄附を行うことが可能になる計画です。なお、21年9月に第一弾としてJPYCを用いた徳島県海陽町へのふるさと納税をスタートする予定が明らかにされていましたが、その後サービスの開始延期が発表されており、22年7月現在も未だ調整中のようです。
2-4.今後のメタバース展開
22年8月、JPYCは長崎出島のサイバー企業アドミン社と事業提携を発表しました。円建てステーブルコインJPYCのメタバース空間上での普及推進を図るために協力します。JPYCを活用した現実と仮想空間を仲介する決済機能やメタバース上におけるJPYC経済圏の実装に向け、DecentralandやThe Sandbox等の主要なメタバース空間にて開発を進めていく計画です。
③まとめ
JPYC株式会社は日本円ステーブルコインであるJPYCの発行および販売を行なっており、JPYCの保有者は日常生活でのさまざまなシーンにおいて、これを日本円に交換することなく利用することが可能です。
また、公式サービスにおいてJPYCを購入した場合に限り、イーサリアム以外のパブリックチェーン上において、JPYCを扱うのに必要となるガス代(手数料)がプレゼントされるということで、さらにお得に利用することが可能です。
JPYCは今後その利用用途をさらに拡大していく予定となっており、今後利用できる幅が拡大すると考えられるため、動向が注目されます。
中島 翔
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