日揮ホールディングスのESG・サステナビリティの取り組みや将来性は?株価推移、配当情報も

※ このページには広告・PRが含まれています

日揮ホールディングスは、日本の総合エンジニアリング企業です。主な事業内容は、石油・ガスプラント、化学プラント、発電所、水処理施設、環境保全プロジェクトなどがあり、海外にも広範なプロジェクトを展開するなどグローバルな規模で活動しています。

また、日揮ホールディングスは、サステナビリティ経営にも積極的に取り組んでおり、環境や社会の持続可能性を重視しています。温室効果ガス削減や再生可能エネルギーの活用、廃棄物の最小化などの環境保全活動を行っているほか、社会的な課題に対しても取り組んでおり、地域社会との協力や人権の尊重、労働安全衛生の確保などにも力を入れています。

そこでこの記事では、日揮ホールディングスのESG・サステナビリティの取り組み内容や将来性について詳しく解説しています。株価推移や配当情報についても紹介しているので、日揮ホールディングスへの投資を検討している方は、参考にしてみてください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2023年6月時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. 日揮ホールディングスの特徴
  2. 日揮ホールディングスのESG・サステナビリティの取り組み内容と将来性
    2-1 E(環境)
    2-2 S(社会)
    2-3 G(ガバナンス)
    2-4 ESG・サステナビリティの取り組みに対する将来性
  3. 日揮ホールディングスの株価推移
  4. 日揮ホールディングスの配当情報
  5. まとめ

1 日揮ホールディングスの特徴

日揮ホールディングスは、エンジニアリング分野で国内大手の会社です。世界各地で石油や化学、LNGプラントの建設を手がけており、各種プラント施設の建設から運営までを一貫して受注することで、顧客の事業活動を支えています。2023年3月期の売上高は6,068億円であり、国内外の売上高構成率はおおよそ国内2割であるのに対し、海外8割となるなどグローバルに展開しています。(※参照:日揮本ホールディングス「ファクトシート」)

日揮ホールディングスは、「総合エンジニアリング事業」「機能材製造事業」のセグメントを中心にビジネスを展開しています。総合エンジニアリング事業では、主にエネルギートランジション対応とビジネス領域の拡大を目的に事業を展開しており、プロジェクトの遂行実績はすでに世界80ヵ国で2万件以上に及びます。

エネルギートランジションとは、従来の化石燃料に依存するエネルギーシステムから、持続可能なエネルギー源への移行を指す用語です。エネルギートランジションは、地球温暖化や環境汚染といった課題に対処し、持続可能な社会を構築するための重要な取り組みです。

特に、石油精製プラントの設計・建設・運営について独自の高い技術を持っており、原油や重質油をより価値の高い製品(ディーゼル、ジェット燃料等)に変換する流動接触分野や水素化分解などの重質油分解装置の分野で、豊富な実績を積み上げています。

また、装置構成が複雑になることから難易度が高いと言われるエチレンプラントの分野でも、日揮は豊富な実績と知見を持っています。エチレンプラントとは、石油精製プラントの一部として使用され、エチレンという重要な基礎化学物質を生産する化学工業の基盤となる施設であり、日揮ホールディングスは持続可能性やエネルギー効率に配慮しながら、高品質なエチレンプラントを提供することで、顧客のニーズに応えています。

一方、機能性製造事業の流動接触や触媒では国内唯一のメーカーであるほか、流動接触プロセスにおいて使用される触媒の一種であるハニカム触媒やハードディスク研磨用シリカゾルの分野でもリーディングンパニーの地位を築くなど、ナノ材料の制御技術やセラミックス製造加工技術などのオンリーワン技術が大きな強みとなっています。

2 日揮ホールディングスのESG・サステナビリティの取り組み内容と将来性

日揮ホールディングスは、社会課題の解決と持続可能な発展に向けた重要課題として、E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)の3カテゴリーについてマテリアリティを定めて、サステナビリティを追求しています。

2-1 E(環境)

日揮ホールディングスは、環境への配慮を重視し、化石エネルギーによる環境負荷の低減や、再生可能エネルギーの比率増加、生態系の保護や生物多様性の維持、地球温暖化の抑制に役立つ製品や技術の開発に取り組んでいます。

例えば、化石エネルギーによる環境負荷の低減に関しては、石炭や石油に比べて二酸化炭素や窒素酸化物の排出量が少ない液化天然ガス(LNG)のプラント建設を手掛けるとともに、低音から中温に対応した排ガス向けの脱硝システムを開発することで、環境負荷の低減を実現しています。

1973年にグループ初のLNGプラント建設をブルネイで手掛けて以降、約50年にわたり世界の生産量の30%以上を占めるLNGプラントを設計・建設し、LNGプラント完工実績は52系列、総生産量は年間1億6247万トンに及びます。(※参照:日揮ホールディングス「環境負荷の小さい化石エネルギープラントの建設」)

生態系の保護と生物多様性の維持については、プラント建設工事現場の周辺に生息する希少動物や植物の保護に努めています。例えば、LNGカナダ建設プロジェクトにおいては、建設予定地内に流れていた河川を建設作業の影響が及ばない場所に移動させることで、環境に配慮したプロジェクトを進めています。

同時に、国内の建設現場における産業廃棄物の再資源化や有害物質の漏洩件数、CO2排出原単位のような環境指標について評価を毎年行っており、過去3年の実績データは以下の通りです。

環境指標 2019年度 2020年年度 2021年年度
産業廃棄物再資源化等率 85.2% 88.3% 98.4%
有害物質などの漏えい件数 0件 0件 0件
エネルギー起源CO2排出原単位(1時間当たり) 0.61kgCO2 0.40kgCO2 1.91kgCO2

※出典:日揮ホールディングス「建設工事現場周辺の希少動植物の保護

2-2 S(社会)

日揮ホールディングスの社会に対する取り組みとしては、「人権の尊重と働きがい」「世界各地域における共創共生」「生活の質の向上」に焦点を当てています。

中でも「人権の尊重と働きがい」については、人財の多様性を促進させるため、国籍や人権、性別や年齢、障害や宗教などの違いを尊重した上で、多様性の確保に努めており、例えば、女性の採用を促進する取り組みとして、子供の看護休暇や子育て支援を充実させています。

また、2025年時点における女性管理職の人数を2020年比で2倍に増やすため、女性の管理職登用を積極的に推し進めた結果、2021年度の女性管理職比率は35人になるなど、女性の活躍が期待できる環境づくりも進んでいます。

2019年度 2020年年度 2021年年度
女性管理職者数 26人 30人 35人
女性管理職比率 2.2% 2.5% 2.8%

※出典:日揮ホールディングス「ダイバーシティ&インクルージョンの推進(人財多様性の確保)

このほか、配偶者の転勤や駐在を理由に退職した場合、3年以内であれば退職時の部門に戻れるWelcome back制度を用意することで、女性社員の再雇用を推進しています。そのほか、障がい者が働きやすい人事制度を整えたり、グループ企業を退職した元社員を積極的に再雇用する取り組みを進めたりしています。

2-3 G(ガバナンス)

日揮ホールディングスは、ガバナンスに対する取り組みとして、「コーポレートガバナンスの強化と向上」「コンプライアンスの遵守」「コーポレートリスクや事業リスクへの対応」の課題解決に向けた活動を行っています。

中でもコンプライアンスの遵守については、コンプライアンスを経営の基軸に添えた上で、グループコンプライアンス体制を構築しています。

例えば、コンプライアンス・コミッティーと呼ばれるコンプライアンス活動に取り組むための情報共有の場を設けた上で、グループ横断型の取り組みを実現しています。また、贈賄を防止するために、取引を行う予定のエージェントやコンサルタント、ベンダーなどに対してコンプライアンス上の事前審査を実施するとともに、寄付や献金など腐敗行為につながる可能性がある取引についても補足ができるよう事前審査を義務付けています。

加えて、社員のコンプライアンス意識を向上させるため、階層別および目的別に研修を実施し、2021年度は実施件数27回、受講人数846人に及びました。(※参照:日揮ホールディングス「コンプライアンス」)

また、コンプライアンスホットラインを設けることで、コンプライアンス違反を目撃した際に、社員が匿名で相談したり、通報しやすい環境を整えたりしています。

コーポレートリスクや事業リスクへの対応については、各種リスクに対する管理を徹底しています。特にプロジェクト規模が大型化するほど、会社全体の損益に大きな影響を及ぼす可能性があるため、プロジェクトにおけるリスク項目として、技術リスクやプロジェクト運営リスク、契約条件およびその他の重大リスクなどに分類した上で、各リスクの対応策が定められています。

主なリスク例 対応策
地震、豪雨、暴風雨などの想定を超える自然災害や感染症の世界的流行による事業活動への影響 顧客に対する必要な納期や契約金額の変更の要請および協議自然災害発生時の対応手順規定化、安否確認システムの導入および防災訓練などを実施
為替変動リスク 複数通貨建てによるプロジェクトの受注契約、海外調達
外貨建ての発注および為替予約
資機材・原材料費等の高騰リスク 資機材の早期発注
調達先の多様化
製品価格への転嫁

2-4 ESG・サステナビリティの取り組みに対する将来性

日揮ホールディングスは持続可能な社会の実現に向け、未来に向けた課題解決に取り組んでいます。中でも自社開発や外部の事業会社とパートナーを組んだオープンイノベーションを通じて、環境関連技術のビジネス化に取り組んでいます。

具体的には、廃プラスチックのガス化やCO2の分離や回収、再利用、CO2が発生しないアンモニアを活用した取り組みなど、未来に向けた先進的な取り組みを行っています。CO2削減や温暖化対策など地球規模の課題解決に向けた取り組みは、世界全体でさらに活発化することが予想されるため、日揮グループが強みとする環境関連技術のニーズが増加することも期待されています。

3 日揮ホールディングスの株価推移

日揮ホールディングスの最近の株価推移は、横ばいの展開が続いています。例えば、2023年1月~5月までの値動きを見てみると、1,500円~1,800円のレンジを行ったり来たりしています。コロナショック直後からの値動きを遡ってみると、2020年3月16日に付けた安値は678円であり、そこから半年後の9月には2000円台まで株価が反発しています。

しかし、週足ベースで見ると、株価チャートは下降トレンドに転換しており、2022年1月には再び1,000円を割り込む水準まで下落しています。また、長期的な時間軸で株価推移を確認してみても、下降トレンドが続いています。下降トレンドに転換したタイミングは、2014年1月6日に付けた上場来高値4,259円の後であり、そこからは大陰線を描いて株価の下落が続いています。

なお、上場来高値から比較すると株価が半分近くまで下落しているものの、2023年3月期の業績予想は最終利益ベースで黒字に転換する見込みです。今後の株価は、業績に連動して株価チャートが上昇トレンドに転換するかどうかなども焦点になるでしょう。

4 日揮ホールディングスの配当情報

日揮ホールディングスは、株主還元策の一環として配当金による支払いを実施しています。基本的な配当方針は各期の業績に連動させる考え方に基づいており、目標となる配当性向を定めた上で利益配分を行っています。具体的には、連続配当性向30%を目安とするとともに、1株当たりの年間配当額が15円を下回らないよう下限となる金額を定めています。各年度の年間配当金の推移は、以下の通りです。

各年度 年間配当金
2022年度 36.0円(予定)
2021年度 15.0円
2020年度 12.0円
2019年度 12.0円
2018年度 28.5円

日揮ホールディングスの配当金は、期末配当の年1回実施されます。2019年度~2021年度までは、2018年度の年間配当金を下回る展開が続いていたものの、2022年度は36.0円を予定しているため、直近5年間で最も多い年間配当金の支払いを期待できる見込みです。

まとめ

日揮ホールディングスは、ESG(環境、社会、ガバナンス)およびサステナビリティに積極的に取り組んでおり、環境関連技術のビジネス化にも力を入れています。再生可能エネルギー、省エネルギー、廃棄物処理などの持続可能な社会の実現に向けたニーズは年々増加しているため、日揮ホールディングスが持つ高度な技術力は、新たなビジネスチャンスを創出することが可能です。

日揮ホールディングスのESG取り組み内容や投資に関心のある方は、この記事を参考にご自身でもお調べになった上で検討してみてください。

The following two tabs change content below.

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

HEDGE GUIDE 編集部 ESG・インパクト投資チームは、ESGやインパクト投資に関する最新の動向や先進的な事例、海外のニュース、より良い社会をつくる新しい投資の哲学や考え方などを発信しています。/未来がもっと楽しみになる金融メディア「HEDGE GUIDE」