【イベントレポート】JBA定例会「パブリックブロックチェーンで日本企業はどう世界で戦っていくべきか」

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ブロックチェーン技術の普及・発展に取り組む一般社団法人日本ブロックチェーン協会(JBA)は2月24日、ブロックチェーン技術の応用を中心に次世代の分散型WebであるWeb3.0の実現を目指すStake Technologies株式会社の代表取締役CEO 渡辺創太氏を招き、「パブリックブロックチェーンで日本企業はどう世界で戦っていくべきか」と題したZoomを使用したオンライン定例会を実施した。

左上から司会進行の上野直彦氏、Stake Technologies・CEO渡辺創太氏、JBA古里拓氏

目次

  1. 日本発パブリックブロックチェーンを開発するStake Technologies
  2. パブリックブロックチェーン領域の日本の立場は周回遅れ
  3. パブリックブロックチェーンの戦略と戦術
  4. 具体的な価値の作り方
  5. 具体的にトークン設計
  6. 資金調達の方法について
  7. ネットワークエフェクトが重要なプロダクト機能開発
  8. ネットワークエフェクトの重要ポイント
  9. 最後に

日本発パブリックブロックチェーンを開発するStake Technologies

最初に渡辺氏は、自己紹介を行った。


Stake Technologiesは、日本発のパブリックブロックチェーンとなるPlasm Networkを開発している。ミッションとしてWeb3.0を目指している日本の企業。

Web3.0を簡単に説明するとWeb1.0は読むことができるWeb、Web2.0は読み書きすることができるWeb、Web3.0は読み書きできるWebに新たにブロックチェーン技術などを活用しトラスト(信用)をオンライン上で構築していくWebとなる。Web3.0の実現にはブロックチェーンの領域で、スケーラビリティの問題、相互運用性の問題など乗り越えなければならない課題が多々あるという。

現在、パブリックブロックチェーンと呼ばれるブロックチェーン技術は900ぐらい存在するが、それらはほとんど相互接続されていないという。インターネットのアナロジーに例えるなら、日本から米国のネットワークに接続できないような状況だ。となると次のパブリックブロックチェーンのフェイズは、様々なブロックチェーンが相互につながっていくことになる。Stake Technologiesは、そこに注力した技術を開発する企業であると、渡辺氏は自社を解説する。

渡辺氏は、元々シリコンバレーのブロックチェーンスタートアップで2年間働き、帰国後、東京大学大学院ブロックチェーン共同研究員となり、2019年にStake Technologiesを設立した。その他にも内閣府の主導するTrusted Web推進協議会タスク・フォースメンバーになるなど、ブロックチェーン業界で活躍をする。

パブリックブロックチェーン領域の日本の立場は周回遅れ

今回は、すでに世界で戦う渡辺氏に「パブリックブロックチェーンで日本企業はどう世界で戦っていくべきか」をテーマに、日本人が世界でどう戦っていけるのかを伺う。

テーマを語る背景として渡辺氏は、将来はエンタープライズ向けのサービスを提供する会社も、コンシューマー向けサービスを提供する会社も、パブリックブロックチェーンを使う未来が来ると想定している点を挙げる。

米国では、すでにその取り組みは始まっており、例を挙げると、テスラがビットコインを購入しプロダクトの中に組み込んでいくといった事例や、Twitterの共同創業者のジャック・ドーシー氏の会社Square(スクエア)がビットコイン関連の金融サービスを提供し始めたり、米通貨監督庁が連邦政府の認める民間の銀行が決済などにステーブルコイン(法定通貨とペッグするデジタル通貨)の利用は可能であると書簡にまとめたりという事例があるという。

責任は自分を含めた民間にあると前置きをしつつも、客観的に、日本企業はパブリックブロックチェーン領域では数周の遅れを取っていると渡辺氏は語る。この領域において日本は、米国や中国はすごいという評論家は多いが、実際にプロダクトを立ち上げているプレイヤーは少なく、かつこの2年その数は増えていないという。渡辺氏は、自らも含めてこの状況は問題であり、それを打破するために日本は世界でどう戦うべきかを常に考察しているという。

パブリックブロックチェーンは現在、時価総額で見るとビットコイン、イーサリアム、Polkadot(ポルカドット)が三大パブリックブロックチェーンとなる。この3つのエコシステムの中でトップテンに入っていたり、あるいは実際にトラクションのある(顧客獲得に至っている)プロジェクトを展開する日本企業は、まだないという。例えば、イーサリアム財団など財団の第一線で活躍する人は何人かいるが、事業として結果を出しているプロジェクトはひとつもないという。

こうした背景の中でStake Technologiesは、日本発のパブリックブロックチェーン「Plasm Network」を開発している。また、Polkadotの開発をリードするWeb3 Foundation(Web3財団)から世界最多となる6回の助成金を獲得し、実際にPolkadotに対して技術を実装している。Polkadotは異なるブロックチェーンを束ねてつなぐブロックチェーンで、現在Testnetのフェイズだが、世界で初めてTestnetの接続に成功したのがStake Technologiesであり、その上で初めてスマートコントラクトのデプロイに成功し、Polkadotに接続している異なるチェーン間でクロスチェーンのメッセージ送受信に成功するなど、その開発に貢献している。


Polkadotはまだベータ版の段階だが、Polkadotに接続されるブロックチェーンはパブリックブロックチェーンでもよく、またコンソーシアムブロックチェーンでもよく、様々なブロックチェーンが接続されるようになるため、今後、1、2年で見えてくる世界が変わり面白いだろうと、渡辺氏はPolkadotを評価する。

パブリックブロックチェーンの戦略と戦術

パブリックブロックチェーン領域で戦うための方法として、渡辺氏はパブリックブロックチェーンの開発における戦略と戦術を解説する。

実際にパブリックブロックチェーンでプロダクトを開発する場合、どうビジネスモデルを組み、どうマネタイズをしていくのか、また、どうコミュニティを巻き込んでいくのかが、非常に重要な要素となると渡辺氏はいう。


図は、パブリックブロックチェーン上での価値の作り方を表している。左上の「創業者とチーム」からスタートとなるが、ブロックチェーン業界においてはプロトコルや技術には新規性とトレンドがあるので、創業者とチームはそれを見極め実装することが大事になる。

その実装に対して、投資家(あるいはトークンの可能性もある)に向けての金銭的付加価値やブランド的付加価値を追加することにより、トークン価値やトークンエコノミクスがいきてくる。トークンに価値が付くことで、コミュニティのメンバーの拡大や、メンバーに対するインセンティブ設計がしやすくなる。それにより、ブロックチェーンネットワークを支えてくれるマイナーやバリデーターを巻き込みやすくなり、ネットワークの付加価値も上がり、ネットワークは安定していくと渡辺氏はいう。

ネットワークが安定したらやらなければいけないのが、プラットフォームの機能性、すなわちブロックチェーンの実装になる。プラットフォームの機能性については、プロトコルや技術の新規性の段階で考えておかなければならないが、ここではそれを実装するフェイズになる。

プラットフォームの機能性が拡充してくると、そのパブリックブロックチェーンやパブリックブロックチェーン上のプロダクトを使ってくれる第三者の開発者が出てくる。イメージとしては、イーサリアム上にUniswapやDEXを作ったときに、それらの仕組みを利用して第三者が新しいサービスを開発するという流れと同じようなことになるという。

プラットフォームの機能性が高まり、第三者の開発者を巻き込むことができると、ブロックチーンの上にアプリケーションが現れるアプリケーションガバナンスが形成されるようになる。アプリケーションが現れることでユーザーが増え、さらにブロックチェーンのコミュニティは強くなり、コミュニティの強化でブロックチェーンは新しいプロトコルが実装され、それによりまた資金調達が可能になり、よりプラットフォームの機能性が高まるという流れが繰り返され、ブロックチェーンネットワーク全体のサイクルが回るようになる。

このサイクルで最も重要なのは、第三者の開発者とユーザーをどう巻き込むかだという。第三者が開発したアプリケーションが増えることでユーザーは増え、ユーザーが増えることでアプリケーションもより増えるし、それによって開発者も増え、開発ツールや環境も充実してくるネットワークエフェクトと言えるような相乗効果が生まれるという。恐らくパブリックブロックチェーン上での価値の作り方はこのような流れになると渡辺氏はまとめた。

こうしたパブリックブロックチェーン上での価値の作り方の流れの中で、Stake Technologiesが開発するブロックチェーンPlasm Networkは、現在、どの位置にいるのかを渡辺氏は解説する。

スタート位置は、東大系のドクターやpost PhD、研究員等で会社を創業したそうだ。そのメンバーで約2年前にPolkadotのプロトコルをやると決断した。当時は、PolkadotはまだTestnetもなく開発者も少なかったが、Polkadotには新規性がありトレンドになると判断し、Polkadotのプロジェクトに開発当初からジョインできたおかげで、現在はWeb3財団やPolkadotの主要開発メンバーであるParity Technologies等とも仲良くなり、スムーズに開発支援することができる関係性を築けたという。

Stake Technologiesの開発に対しては、最初からエンジェルインベスタ等いくつかの投資家がいるが、早くからPolkadot開発メンバーと活動したおかげで、最近になり暗号資産(仮想通貨)取引所大手Binance(バイナンス)が組成したファンドBinance Labsをリード投資家とする、HashKey、PAKA Ventures、LongHash Ventures、Digital Finance Groupほかにインベストメント(出資)を通じでPlasm Networkに参加してもらうことができたことで、よりトークンの魅力が増したという。

トークンの魅力が増したことによって、ネットワークを支えてくれる人が世界中で200以上に増えたそうだ。そうした流れから機能の拡充も行っており、すでにPlasm Networkのブロックチェーン上でイーサリアムのスマートコントラクトがデプロイできるようになったという。また、スケーラビリティの問題に対してはレイヤー2ソリューションを実装しているので、かなりスケーリングするブロックチェーンになっているそうだ。

今後、Plasm NetworkはPolkadotやイーサリアムにも接続予定で、イーサリアム上で発行されたトークンがPlasm Network上で使用可能になり、それがPolkadotとつながるビットコインほかのブロックチェーンの仮想通貨にも変換可能になる世界が期待されているという。ちなみにこうしたプラットフォームの機能性については、ある程度の実装は完了しているとのこと。

また、これらに魅力を感じてくれた人が集まる開発者コミュニティがDiscord(チャットツール)にあり、すでに8000人が集うコミュニティになっている。

現在、Plasm Networkはアプリケーションガバナンスの流れの位置にいるという。


ここからPlasm Networkのパブリックブロックチェーン上に、DeFi(分散型金融)やブロックチェーンゲームといったアプリケーションを載せていく段階を迎えつつあるという。そうすることにより、Plasm Networkを利用するユーザーが増え、さらに第三者の開発者が現れ、新しいアプリケーションを作り出す状況を生み出し、まさにパブリックブロックチェーン上で価値の作り出すサイクルが回り出すだろうと渡辺氏はPlasm Networkを解説する。

これまでに学んだことは、ブロックチェーンの業界は変化が早いので、恐らく2年程度のスパンで、タイムラインをしっかり読むことが大切という。マクロトレンドが外れていなければ、あとは粛々とプロダクトを作っていれば時が来るので、それまではプロダクトに金銭的価値とネットワーク価値というものを付加し、しっかりと機能を実装していくことが最も大事だと渡辺氏はまとめた。

具体的な価値の作り方

渡辺氏は、パブリックブロックチェーン上で価値を作り出すサイクルを実際に行うオペレーションには、「会社の始め方」「トークン設計」「資金調達」「プロダクト機能開発」「ネットワーク構築」といった5つのステップがあるという。


まず、会社の始め方として、スタートアップに関しては基本的にゴールとしてIPO(新規上場)もしくはM&A(合併・買収)を目指すのではないかと渡辺氏はいう。

では、パブリックブロックチェーンを開発する会社を始める場合のゴールはどうか。

パブリックブロックチェーンプロトコルのメリットは、分散型コミュニティとステークホルダーによって管理される点にある。プロトコルが誰に対してもオープンであり続けるパーミッションレスであることと、単一組織が操作できないことがパブリックブロックチェーンのコアバリューであり、良いところである。渡辺氏は、このコアバリューを株式会社として保ち続けるにはどうしたらいいかについて、一時期悩んだそうだ。

パブリックブロックチェーンやパブリックブロックチェーン上に分散アプリケーションを作る場合は、IPOという選択肢は消えることになる。少なくとも渡辺氏の中では、IPOはないという。なぜならば、例えばパブリックブロックチェーンを作っている会社が上場した場合に、自社のブロックチェーン上で他社のサービスが問題を起こしたときなど、株主総会でそれらを止めるという意思決定された場合、パブリックブロックチェーンとして、どう振る舞うのか、止めざるを得ないのではないかという葛藤が生じてしまうことが理由だ。逆に、M&Aはありだとは思うが、それでもプロトコルが誰に対してもオープンであり、単一組織が操作できないという性質を満たすには、他社の意思が入り込むと意味では難しさはあるともいう。

では、どこを目指すべきなのか? パブリックブロックチェーンにはトークンが存在するので、トークンを用いた自律分散組織というのがひとつの解だと渡辺氏はいう。

FacebookはFacebook社がないと動かない、AmazonはAmazon社がないと動かない、他のサービスもしかり。Plasm Networkのプロダクトに関しては、分散コミュニティの分散ガバナンスがトークンを用いて動くように設計できるため、Stake Technologiesが存在しなくても動かすことも可能という。Stake Technologiesが目指したいのは、我々自身がいなくてもいい世界を作りたいという。つまり、Plasm Networkは将来的に何百億円のバリューを付けたとしても、Stake Technologiesは最終的には不要であるという世界観で、Plasm NetworkはStake Technologiesという単一障害点をなくしたDAO(Decentralized Autonomous Organization、自律分散組織)という状態に持っていくことが、本当の意味でのパブリックブロックチェーン企業の出口戦略だと考えると渡辺氏は語る。

日本の経済史上、会社がなくなっているのにプロトコルの価値が伸び続けている例は、なかなかないので、渡辺氏は個人的にもそこで前例を作りたいという。

具体的にトークン設計

トークンというと「暗号資産で値動きが激しいもの」と思われがちだが、パブリックブロックチェーンでは切っても切り離せない存在になるので、値動きするようなトークンの話と、実際にユーティリティとして使われるトークンの話については、分けて考える必要がある。また、トークンは一度決めてしまうと後戻りできないパートなので、じゅうぶんに注意して設計する必要があると渡辺氏はいう。

特にトークンの配分については、チーム・コミュニティ・投資家にそれぞれ何%ずつ配分するかは重要。その配分量に関するベストプラクティスがないため(評価事例が少ないため)、ほとんどのケースではプロジェクトの裁量で決まっているのが現状という。チームや投資家に多く配分するプロジェクトも少なくないが、Plasm Networkの場合は、コミュニティに65%、Plasmの財団機能に35%という比較的公平な配分にしているという。ちなみに35%には、マーケティングやグラント(研究助成金)に充てる費用も含まれているそうだ。

渡辺氏は、トークン配分にはこの業界の良くない面も見られるという。ほとんどのプロジェクトが最初に限定的に投資家に対してディスカウントをつけてトークンを配布し、その後、コミュニティに対してトークンを配布し資金調達を行うというフェアではない慣例が続いている。それは投資家にとってはうれしい慣例だが、目指す世界観からすると合ってないことをしていると判断し、Plasm Networkでは先にコミュニティに30%を配布し、その後に投資家に入ってもらっているという。

このようにトークン配分については、プロジェクトの裁量で決められるため、かなり創業者の哲学が反映されるが、Plasm Networkは自律分散組織を目指しているのでフェアな要素を多めにして、最終的に主導権をコミュニティに移していきたいためそこを優先し、機関投資家に対して有利な配布をしていないという。

トークン配分については、様々な設計方法があるので、今後も具体的な事例を見ながら、渡辺氏自身でもトークン配分事例についてまとめていきたいそうだ。

資金調達の方法について

パブリックブロックチェーン領域における資金調達は、いくつかの方法があるという。


ひとつ目は、通常の株式による調達方法。代表例として渡辺氏は仮想通貨取引所Coinbaseを挙げた。Coinbaseは、NASDAQへの株式上場の意向を表明した資料を提出したことが報道されている。

また株式による資金調達には、途中で株式の比率に基づきガバナンストークンへと転換する方法もあるという。DeFiで有名なCompoundやUniswapがその代表例で、シリコンバレーのDeFiプロジェクトに多く見られるそうだ。

もうひとつにSAFT(Simple Agreement for Future Tokens)という方法がある。SAFTとは、SAFE(Simple Agreement for Future Equity、将来株式取得略式契約スキーム)という比較的新しい簡略な資金調達契約方法のトークン版という。SAFEは、2013年に米国のスタートアップ・アクセレーターY Combinatorが開発した資金調達方法で、あらかじめ決められた購入金額を投資家が支払うことで、スタートアップが当該投資家に対して当該会社の一定の株式に対する権利を一定の条件で発行するものとなる。SAFTでは、株式ではなくトークンを取得する権利となる。代表例として分散型ファイルシステムを開発するFilecoinや分散型ステーブルコインプラットフォームを開発するAcalaなどを例として挙げた。ちなみにSAFTに関しては、日本では事例はないという。

最後は、もうひとつクラウドファンディングによる資金調達方法。渡辺氏は、分散型チャットツールのBlockSlackを例に挙げた。

実際にパブリックブロックチェーンで起業をする場合は、こういったいくつかの新しい方法による資金調達方法があるので、ここは知識として一通り整理が必要な部分になる。やるべきことは、トークンのメカニズム設計とビジネスモデルの理解と検討、それにあったスキームを選択することだが、これらは各国によって法律が異なるので、弁護士や税理士等の専門家に要相談することとした。また、最も大事なことは、しっかりとしたコードを書くこと。プロダクトをしっかりと作ること。まだまだこの領域ではICO以来、信頼が得られていないことと、詐欺も多いので、資金調達時にやってはいけないこととして、実際にコードを書かずに期待値だけで資金調達を集めたり、あおった文言を使用したり、リターンを確約することを挙げた。

ネットワークエフェクトが重要なプロダクト機能開発

パブリックブロックチェーンの領域では、ネットワークエフェクトがすべてであり、相乗効果が重要な要素なので、プロダクトの開発に関しては、設計したトークンが何に使えるのかという仕様を密に設計し、シナジーが生まれるように関連付けなければならないと渡辺氏はいう。

パブリックブロックチェーンにはトレンドがあるので、数カ月後に必要になる機能を逆算し準備しておくことが大切という。例えば、Plasmの例を挙げると、今ならZK Rollupsというスケーリングソリューションやインターオペラビリティ(相互運用性)の領域等、数カ月後に重要となるコンポーネントに対して、あらかじめ布石を打ち、実装しておくという。また、それらの開発準備として助成金を取りに行くことを考えておくといいそうだ。

通常のプロダクト開発とパブリックブロックチェーン上でのプロダクト開発の大きな違いは、コミュニティをいかに巻き込むかという。開発者のコミュニティを巻き込むには、タスクを明確にしてイシュー(課題)を細かく切り分け、開発者が参加しやすい環境を整える。また、トレジュリー機能という分散的な助成金のインセンティブ設計を整備しておくことが重要になってくるという。

渡辺氏は、実際にパブリックブロックチェーンを開発し学んだのは、このインセンティブ設計が重要性という。コミュニティと共にどう成長していくかを考常にえるようになったそうだ。

ネットワークエフェクトの重要ポイント

パブリックブロックチェーン上での価値の作り方で最も重要なネットワークエフェクトには、開発者向け、ユーザー向け、系全体向けの3種類のエフェクトがあるという。

開発者向けネットワークエフェクトでは、開発者ツール、インフラツールを作ることで開発しやすい環境を作ること。それにより多くの開発者が集まり、その結果、より開発しやすいツールが作られることになる効果が得られるという。

ユーザー向けのネットワークエフェクトでは、ユーザーが集まることで流動性が生まれる設計をすること。流動性が増えることで、さらにユーザーが参加する結果になる。

また、系全体のネットワークエフェクトとは、前述のパブリックブロックチェーン上での価値の作り方のサークル自体を作ることがネットワークエフェクトであるという。プロトコルが魅力的になれば、その上のアプリケーション層に資金が集まり、それによりさらにプロトコルの開発も加速するという。こうしたネットワークエフェクトを、それぞれに向けて効率よく設計し考えていくことが、最も重要な要素と渡辺氏はいう。

最後に


現在、toB領域の案件を進めているStake Technologiesも、将来はエンタープライズにおいてもパブリックブロックチェーンの未来が訪れる。歴史的に見ても、オープンな環境が勝利してきたことは明らかで、ブロックチェーン企業BlockstreamのCEOでビットコインを作ったメンバーの1人Adam Back氏が「Open Networks Always Win」と言っているように、これは間違いないと確信しているという。

日本人が、ビットコインしかりイーサリアムしかり、パブリックチェーンの本流で結果を出すことが非常に重要と考えており、そのためには結果を基にディスカッションすることが非常に重要と考えているが、実際に日本でパブリックブロックチェーンをやるには障壁も高く、前例もない。その中で、手探りかつ法務的、税務的にも考えなければならないことも多く、弁護士や税理士と話を進めている点もまだ多いが、現在、Stake Technologiesはトークン設計やインセンティブ設計で力添えが可能な立場にいる。

Stake Technologiesは海外で勝って、時が来たときに日本に戻すやり方が一番よいと考えている。日本において、次の黒船が「ペリー」のようにアメリカ人である必要はなく、日本人が黒船で戻ってきてもいいのではないかという。そのときにStake Technologiesが、日本人、もしくは日本の企業がグローバルで戦うときのお手伝いができるといいなと渡辺氏は語たり、最後に、今日のポイントは「パブリックブロックチェーン上での価値の創出方法をしっかりと考えていきましょう」と、日本のみんなと一緒に考えていきたいということと渡辺氏はまとめ、勉強会の幕は閉じた。

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高橋ピョン太

'80年代、プログラマーからパソコン総合雑誌『LOGiN』の編集者に転向、6代目編集長を経て、2000年よりネットワークコンテンツ開発、運営に携わる。現在は、フリーライターとして、ゲーム・IT・ブロックチェーン・仮想通貨関連ライターとして執筆活動中。