GMOグループが米ドルステーブルコインを発表「ZUSD」とは

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今回は、GMOグループの米ドルステーブルコイン「ZUSD」について、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

  1. GMOグループとは
    1-1.GMOグループの概要
    1-2.GMOインターネットグループの事業内容
    1-3.米国現地法人「GMOトラスト」
  2. 米ドルステーブルコイン「ZUSD」
    2-1.ステーブルコインとは
    2-2.米ドルステーブルコイン「ZUSD」の概要
  3. 米ドルステーブルコイン「ZUSD」の特徴
    3-1.価格の安定性
    3-2.高いセキュリティ性と透明性
    3-3.高い流動性
    3-4.マルチチェーンに対応
  4. 日本円ステーブルコイン「GYEN」
    4-1.日本円ステーブルコイン「GYEN」とは
    4-2.ウォレットを接続する
    4-3.ETHをウォレットに入金する
    4-4.NFTを購入する
  5. まとめ

22年11月10日、GMOインターネットグループの米国現地法人であるGMO-Z.com Trust Company(GMOトラスト)が、ステラ開発財団(Stellar Development Foundation)とパートナーシップを締結。ステラネットワーク上において日本円ステーブルコイン「GYEN」及び米ドルステーブルコイン「ZUSD」の提供をスタートしたことを発表しました。

これまで、GYENとZUSDは両銘柄ともに「イーサリアム(Ethereum)」ネットワークを用いた「ERC-20」規格のトークンとして発行されていましたが、今回新たにステラが追加されたことによって、マルチチェーンでの展開が実現しました。

ここではGMOグループが展開している米ドルステーブルコイン「ZUSD」について、その概要や特徴、今後の展開などを詳しく解説していきます。

①GMOグループとは

1-1.GMOグループの概要

GMO

GMOインターネットグループは、インターネットインフラ事業やインターネット広告・メディア事業などをはじめとするさまざまな事業を手がける日本最大の総合インターネットグループとなっています。

GMOインターネットグループには数々の関連会社が存在し、その数は22年3月末時点で、上場企業10社を含む合計107社にも及んでいます。

関連会社の中には、インフラ事業を中心に取り扱っているGMOインターネットグループ株式会社やGMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社、またメディアや広告分野を中心に取り扱っているGMOアドパートナーズグループ、ネット金融を取り扱っているGMOクリック証券など、事業が競合する企業も複数存在しています。

また、GMOグループは企業理念として「スピリットベンチャー宣言」を掲げており、95年の創業以来から受け継がれてきた「精神(マインド)」をグループの夢やビジョン、フィロソフィーとして体系立て、明文化しています。

このように、GMOグループは日本国内におけるインターネット産業を牽引する存在として、多岐にわたる事業展開を行っています。

1-2.GMOインターネットグループの事業内容

GMOグループでは「すべての人にインターネット」というテーマのもと、事業開始以来から「インターネットの便利さ、楽しさ、可能性を、一人でも多くのかたに届けたい」という強い思いで、インターネットに関連するさまざまなサービスを提供しています。

ここでは、GMOグループが手がける主な事業について紹介していきます。

・インターネットインフラ事業

インターネットインフラ事業では、インターネットビジネスを手がけるクライアントに対して、インターネット上の住所のような存在である「ドメイン」や、データを保管するための「サーバー」を提供しています。

また、ネットショップを導入するためのシステム提供を行う「EC支援」や、ECで必須となる「決済サービス」、またこれらの取引を安全に実施するための「セキュリティ」など、ビジネスを行うために必要なベースとなるサービスをワンストップで提供しています。

・インターネット広告・メディア事業

インターネット広告・メディア事業では、インターネット上でのビジネス展開を考えているクライアントに対して、集客のサポートを行っています。

具体的には、自社メディアの運営を通した広告枠の提供のほか、広告配信の効率を上げるためのシステムである「アドテクノロジー」を駆使した運用型広告など、総合的なインターネット広告サービスを提供しています。

・インターネット金融事業

取引高世界第一位を誇るFX取引や株式取引などのインターネット証券取引サービスを手がけているほか、GMOインターネットグループの経験とノウハウを集結したテクノロジーバンクとして、「GMOあおぞらネット銀行」の展開も行っています。

・暗号資産(仮想通貨)事業
GMOグループでは、これまでに培ってきたネットインフラ事業及びネット金融事業におけるノウハウを駆使して、暗号資産(仮想通貨)交換事業、及び仮想通貨マイニング事業を通して「世界共通の新通貨」である仮想通貨の健全な運用を支えています。

1-3.米国現地法人「GMO-Z.com Trust Company(GMOトラスト)」

Trust

「GMO-Z.com Trust Company(GMOトラスト)」とは、今回新たにステラネットワーク上において提供がスタートされることが発表された日本円ステーブルコイン「GYEN」及び米ドルステーブルコイン「ZUSD」を発行している企業のことを指します。

GMOトラストはGMOインターネットグループ株式会社の連結会社で、20年に設立されたアメリカの現地法人となっています。

GMOグループは、仮想通貨事業を戦略的事業分野として位置付けており、17年5月からは仮想通貨交換事業をスタートしたほか、同年12月からは仮想通貨のマイニング事業も手がけています。

また、その後の18年10月には日本円とペッグしたステーブルコイン「GYEN」の提供に向けた研究及び開発をスタートし、19年12月には内部実証実験を実施するなど、提供に向けた準備を整えてきました。

そんな中、提供元のセキュリティ面における信頼性を十分に確保するため、米連邦法において銀行と同等の厳格な審査基準が設けられている「マネーロンダリング規制(AML)」及び「経済制裁規制(OFAC)」への対応や、サイバーセキュリティプログラムに関連する厳格な審査基準をクリアした「特定目的信託会社(Limited Purpose Trust Company)」として、GMOトラストが設立されたというわけです。

なお、GMOトラストは自社が発行するステーブルコインについて、「Tier1(一次請け)」の金融機関などが規制を遵守した法定通貨担保型のステーブルコインを利用することによって、デジタル資産マーケット全体の規模及びユースケースの大幅な拡大を目指すとしています。

②米ドルステーブルコイン「ZUSD」

2-1.ステーブルコインとは

取引価格が安定することを目的として設計された仮想通貨のことを指します。

仮想通貨は裏付け資産が存在しないため、ボラティリティ(価格変動)が比較的激しく、決済手段などをはじめとする実用性に欠けていることが問題視されていました。

そんな中、このようなデメリットを解消することを目的として開発されたのが、日本円や米ドルといった法定通貨に価格を連動させたステーブルコインというわけです。

なお、ステーブルコインは価格を安定させる仕組みの違いによって、主に下記四つの種類に分類されます。

・法定通貨担保型

日本円や米ドルなどの法定通貨を担保としてトークンを発行し、その法定通貨との交換比率を固定する仕組み

・仮想通貨担保型

特定の仮想通貨を担保としてコインを発行し、価格を連動させる仕組み

・コモディティ型

原油や金といった商品(コモディティ)価格の値動きに連動させる仕組み

・無担保型

アルゴリズムを用いてコインの流通量を調整する仕組み

2-2.米ドルステーブルコイン「ZUSD」の概要

ZUSD
「ZUSD」はアメリカの銀行法規制を遵守した米ドルペッグ通貨で、法定通貨の米ドルに担保された法定通貨担保型のステーブルコインとなっています。

GMOトラストはミッションとして従来の金融システムとデジタル資産の世界との間に生じているギャップを埋めることを挙げており、ZUSDを発行することによってミッションの実現を目指しています。

ZUSDは米ドルと常に「1対1」という交換レートで発行及び換金が可能となっており、ZUSDを裏付ける米ドルの準備金はすべて、連邦預金保険公社(FDIC)の被保険銀行にて安全に保管されています。

ZUSDはこれまでイーサリアム(Ethereum)を基盤に「ERC-20」規格のトークンとして発行されていましたが、この度新たにステラが追加されたことによって、マルチチェーンでの展開が実現することとなりました。

GMOトラストにおいてCEOを務める中村健太郎氏は、法定通貨をブロックチェーンベースのレールへとつなげていく中で、ステーブルコイン「ZUSD」及び「GYEN」をステラネットワークにおいて発行できたことを嬉しく思っているとコメントしています。

また、ステラネットワーク上で両銘柄の取り扱いをスタートすることは、これまでのイーサリアムよりもさらに高速且つ安価で、スケーラビリティの高いソリューションを必要とするクライアントにとっても、大変喜ばしいことと語っています。

なお、ZUSDは22年11月29日時点では日本国外において流通しているトークンとなっており、日本国内居住者への販売は行われていません。

③米ドルステーブルコイン「ZUSD」の特徴

3-1.価格の安定性

ZUSDは100%法定通貨担保付きとなっており、すべてのトークンは「連邦預金保険公社(FDIC)」の被保険銀行に一対一の準備金残高を有しているため、常に価格の安定性を維持することに成功しています。

3-2.高いセキュリティ性と透明性

GMOトラストは、ZUSDの価値の裏付けとなる資産の証明を外部の公認会計士に任せており、「連邦預金保険公社(FDIC)」の被保険銀行に保管されている法定通貨によって裏付けがされているということを、公的な監査により証明した上で毎月監査レポートを通して開示しています。

このほかにも、ZUSDの発行及び換金をGMOトラストが直接的に行うことで、手数料を抑えつつも高いセキュリティ性と透明性を維持しています。

3-3.高い流動性

ZUSDは常に高い流動性を維持することにも成功しており、「リキッドグローバル(Liquid global)」や「INX」といった世界の仮想通貨交換所において取引が可能となっています。

3-4.マルチチェーンに対応

繰り返しになりますが、この度GMOトラストがステラ開発財団とパートナーシップを締結したことによって、ZUSDは新たにステラネットワーク上でも利用することが可能となりました。

ステラネットワークは、およそ700万を超える口座数を誇っており、毎日数百万件にもおよぶ取引を処理している代表的なブロックチェーンネットワークとして知られています。

ステラ開発財団のCEO兼エグゼクティブ・ディレクターであるデネル・ディクソン(Denelle Dixon)氏はGMOトラストを「仮想通貨とこれまでの伝統的な金融システムの間のギャップを埋めるグローバルリーダー」と評価しており、取引の処理スピードや規模、安価なコストなどの特徴を持つステラネットワークとZUSDが融合することによって、世界の決済システム間のインターオペラビリティ(相互運用性)向上に向けた重要なマイルストーンになると語っています。

なお、今回の提携によって、ユーザーは豊富な実績を有する「ステラ社」のグローバルブロックチェーンネットワーク上でZUSDを活用することができるようになり、ボーダレスな高速取引を実行することが可能なだけでなく、よりシームレスで資金効率の良い取引を実現できるようになるということです。

具体的には、GMOトラストはイーサリアム版及びステラ版のZUSDの「スワップ(交換)」機能を手数料ゼロで提供することを発表しており、二つのブロックチェーン間におけるシームレスな資産移動を可能にすると説明しています。

このほかにも、仮想通貨交換所や「分散型アプリ(dApp)」、また決済会社のクライアントはGMOトラストのAPIを利用することによって、迅速且つ安全にステラ基盤のトークン決済機能を実装することが可能となっています。イノベーションをより加速させることができるほか、法人パートナーは「ファイヤーブロックス(Fireblocks)」のウォレットを介してZUSDを活用できるようになるということです。

GMOトラストは、この度のマルチチェーン展開によってZUSDのインターオペラビリティとアクセス性がさらに向上し、多通貨のステーブルコインのユースケースが拡大すること、またその結果としてユーザー体験が新たなレベルへと引き上げられることを期待していると語っています。

④日本円ステーブルコイン「GYEN」

4-1.日本円ステーブルコイン「GYEN」とは

この度ステラチェーンでの展開がスタートされたステーブルコインは、ZUSDだけではありません。

冒頭でも少し触れましたが、今回ZUSDと同じように、日本円ステーブルコインである「GYEN」もマルチチェーン展開が開始されたことが発表されています。

GYENは世界で初の事例となるアメリカの銀行法規制を遵守した日本円ステーブルコインとして知られており、高速な決済スピードやアクセスのしやすさ、安定した価格の実現などから、日本円ステーブルコインのグローバルでの競争力を向上させる存在として期待されています。

GYENはこれまでもZUSDと共にイーサリアムネットワーク上において取り扱われており、リキッドグローバルやINX、バイナンスやコインベースへの上場も果たしている注目のトークンとなっています。

なお、バイナンスについては上場の際に価格が急激に高騰したことを受けて取引が停止され、現在もその取り扱いは停止されている状況です。

またこのほかにも、GYENは「Uniswap(ユニスワップ)」や「SushiSwap(スシスワップ)」などといったDEX(分散型取引所)においても取り扱われています。

このように、GMOトラストはZUSD及びGYENの発行を通して、ステーブルコインのユースケースのさらなる拡大に尽力しています。

⑤まとめ

今回、GMOグループのアメリカ現地法人であるGMOトラストがステラ開発財団とパートナーシップを締結したことによって、ステラネットワーク上において米ドルステーブルコイン「ZUSD」の取り扱いがスタートされました。

ZUSDは価格の安定性や高いセキュリティ性などからそのユースケースをますます拡大しており、この度新たにマルチチェーンでの展開となったことを受けて、よりシームレス且つボーダレスな取引ができるようになりました。

ZUSDは22年11月29日時点では日本国外において流通しているトークンとなっており、日本国内居住者への販売は行われていませんが、今後サービスの提供範囲が拡大されることも大いに期待できるため、引き続きその動向を追っていきたいと思います。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12