現代社会では、人々の生活を向上させるために、さまざまな社会的課題に取り組む支援プロジェクトがますます重要性を増しています。多くの組織や団体がさまざまな目的で支援プロジェクトを展開していますが、支援者が直面する主要な問題の一つは、プロジェクトの信頼性と透明性が不透明であることです。これが明確でなければ、支援者は資金を提供することに躊躇するかもしれません。
そこで、ブロックチェーン技術の活用が注目されています。ブロックチェーンを利用することで、支援金の流れを透明に追跡し、最終的に支援先に届いたことを確認することができます。
この記事では、ブロックチェーンを活用した支援プロジェクトに焦点を当て、その事例を紹介します。Web3を活用した支援に興味をお持ちの方は、ぜひ読んでみてください。
目次
- Web3×障害福祉で新しい障害者就労支援を開始!
- オンライン寄付GlobalGiving、ブロックチェーン寄付プラットフォームと提携。暗号資産・NFTによる寄付を可能に
- トルコ大地震に暗号資産取引所バイナンスが現地のバイナンスユーザーへBNBをエアドロップ支援
- 国内発、農家を支援する「支援DAO」ーNFTを活用する支援
- ブロックチェーンとSDGsを結びつけたクラウドファンディング「SPIN」
- まとめ
①Web3×障害福祉で新しい障害者就労支援を開始!
WEB特化型の就労継続支援B型事業所を運営するWellsTech株式会社と、国内最大手の仮想通貨・ブロックチェーンメディア「CoinPost」を運営する株式会社CoinPostは、業務提携契約を締結し、2022年7月5日に合弁会社「株式会社WAVE3」を新たに共同設立ました。WAVE3は、「障害福祉」と「WEB3」の双方の業界の特性や課題感を熟知している2社で連携体制を組み、障害就労支援者にWeb3領域の仕事を提供するサービス開発に取り組んでいます。
本提携に至った背景には、WellsTech株式会社は「インターネットのチカラで、障害福祉の”今まで”を変える」を理念として、2021年12月より、都内発の形態であるアドセンス収益やアフィリエイト報酬等を主な収益源として、障害者に工賃を支払う事業所「GIF-TECH’s」を運営しています。しかし、B型事業所の作業としては難易度が非常に高度な為、利用を断念せざるを得ない利用希望者様が多数いる状況です。
障害がある方にも取り組める魅力的で先進的な作業を模索した結果、ブロックチェーンゲーム、NFTを含むWEB3の領域へ辿り着きました。しかしWellsTech社だけでは支援の幅に限界があったため、かねてより親交のあったCoinPost社と業務提携契約を結びました。
現在は、難易度の高い現在のPC業務とは別で、様々なブロックチェーンゲームでの業務や、比較的簡単なパソコン業務を組み合わせた支援プログラムを実施しています。また、国内外のWEB3関連企業と協力し、障害者でもブロックチェーンを用いた様々な「◯◯ To Earn」が身近になる様な取り組みを行なっていく予定です。
障害者がブロックチェーンゲームで獲得した暗号資産は、株式会社WAVE 3に入り、日本円にコンバートされた後、福祉就労支援施設側に「業務委託報酬」として支払われる予定です。すでに一部の利用者にブロックチェーンを活用した支援を行っており、利用者からの高評価を受けています。
②オンライン寄付GlobalGiving、ブロックチェーン寄付プラットフォームと提携。暗号資産・NFTによる寄付を可能に
グローバルのローカルプロジェクトへの寄付を支援する非営利団体GlobalGivingが2023年5月16日、ブロックチェーン寄付プラットフォームEndaomentとの提携を発表しました。これにより4,200以上の団体に暗号資産による寄付の機会が提供されることとなり、暗号資産およびNFTによる寄付が可能な組織が3倍に増えるそうです。
GlobalGivingは2002年、世界銀行の倉石真理氏とDennis Whittle氏によって創設されたオンライン寄付サイトです。日本では福島原発事故の影響を受けた子どもを支援する「School of Fun for Children in Fukushima」や、食を通じて障がい者の就業支援に取り組む「LIVES Food Truck “OOPEN”」の他、約30のプロジェクトが寄付を募っています。
Endaomentは米内国歳入庁の承認を受けた公的慈善団体で、イーサリアムスマートコントラクトによって構築されたデジタル資産寄付プラットフォームを提供しています。世界中の非営利団体への税控除可能な寄付を受け付けており、ブロックチェーンコミュニティの支援と非営利団体にブロックチェーン技術の利点を紹介することを目的としています。
暗号資産による寄付は、仲介者を必要とせず寄付が可能なことや即座に資金が届くといったメリットから、従来の寄付の課題を解決する手段として注目されています。近年では、ウクライナ政府が主導するウクライナ支援の寄付や、2019年に火災災害にみまわれたノートルダム大聖堂の修復支援、日本においては2018年の西日本豪雨被害への支援として暗号資産取引所Binanceが行った約1.6億円の寄付など、さまざまなケースで活用が試みられています。
③トルコ大地震に暗号資産取引所バイナンスが現地のバイナンスユーザーへBNBをエアドロップ支援
2023年2月6日に発生したトルコ大地震では、仮想通貨取引所バイナンスが、被害が大きかった地区のバイナンスユーザーへバイナンスコイン(BNB)をエアドロップで支援しました。エアドロップされるBNBは1名につき100ドル相当で、ユーザーの特定は2月6日までに完了された住居証明(POA)に基づき行われます。
配布対象となる地域は、カフラマンマラシュ、キリス、ディヤルバクル、アダナ、オスマニエ、ガジアンテプ、シャンルウルファ、アドゥヤマン、マラティヤ、ハタイの10都市です。バイナンスは、ユーザー特定にPOA方式を使うことについては限界や不明確な点があるものの、現状では最善の方法だとし、寄付金総額は約500万ドル(当時約6.5億円)としています。
またバイナンスの慈善団体「バイナンスチャリティ財団」は、誰でも寄付ができる公開寄付アドレスを立ち上げました。同アドレスに寄せられた暗号資産を全額トルコリラ(TRY)に変換し、認定NGO経由で寄付を行うといました。なお受付対象となる暗号資産はビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、ビルドアンドビルド(BNB)、バイナンスUSドル(BUSD)、リップル(XRP)です。このように銀行などの仲介を経由する必要がない暗号資産なら、緊急時の支援では即送金・即着金しやすいので、支援金として活用しやすいと言えます。
さらにバイナンスチャリティ財団は2022年2月、ウクライナの人道的危機支援のために約11億5,000万円(当時1,000万ドル)を寄付を行っています。なおバイナンスチャリティでは寄付金の100%を最終的な受益者や組織へ提供しており、全ての寄付金の履歴はブロックチェーンに記録されています。
④国内発、農家を支援する「支援DAO」ーNFTを活用する支援
数々のNFTプロジェクトがある中、農家さんを応援するための農業系の「支援DAO」があります。ひとことで言うと、このプロジェクトはNFTを使ったクラウドファンディングです。「支援DAO」は、農業系NFTコミュニティ「tomajoDAO」から派生したコミュニティで、主に農家さんを支援・応援するために作られたプロジェクトとなっています。
NFTを使ったクラウドファンディングではファウンダーを含め参加者がSNSで発信を行い、被支援者を応援します。従来のクラウドファンディングでも同様の動きはあるかもしれませんが、NFTを活用することにより、支援者となるDAO参加者にとっても被支援者を応援するインセンティブが発生することがポイントのひとつです。
被支援者が多く集まる通常のクラウドファンディングでは、運営母体が一つひとつのプロジェクトを応援するということは現実的ではありません。コミュニティが一丸となって被支援者を応援するという仕組みこそがNFTを利用したクラウドファンディングの特徴とも言えるでしょう。
支援者は支援をした証拠としてNFTを保有することができ、このNFTの価格は受給に応じて変動していきます。つまり、支援者にとっても、支援にあたって発行されるNFTが注目されるほどNFTの価値が上がっていく可能性があるのです。仮に支援者がNFTを売却することを決めたとしても、NFTを保有していた履歴(=支援を行ったという実績)はブロックチェーンに残ることになりますし、二次流通によって発生するロイヤリティも運営に渡るようになっているので、運営の支援にもなるという仕組みです。
既に農家さんへのクラウドファンディングは2回行われており、第3回目となる被支援者募集が行われています。手挙げには支援DAOのコミュニティとして使われているDiscordに参加してもらう必要があります。農家さんが抱える課題はそれぞれありますが、資金提供によって解決できるなら、支援DAOを活用して、所得の向上に繋げてもらうのが支援DAOのファウンダー含めコミュニティ全体の想いでもあります。
⑤ブロックチェーンとSDGsを結びつけたクラウドファンディング「SPIN」
最近ではWeb3の技術を活用した新しい形の支援やクラウドファンディングが増えてきています。
その一つが、株式会社Freewillが運営する「SPIN」です。海外からの支援も可能なこのプラットフォームでは、ブロックチェーンやAIの技術を導入し、寄付金の使用先が透明になるよう工夫がされています。SPINでは現在、コーヒー栽培に不可欠なシェードツリー(コーヒーの成長を助ける木)となる果物の木を植樹するクラウドファンディングプロジェクトが展開されています。
コーヒーが抱えている問題の一つとして、「コーヒー2050年問題」というものがあり、地球温暖化などの影響により、2050年までにアラビカ種の栽培地が約半分に減少すると予測されています。この問題を解決するための試みが、発展途上国ネパールの村で、「アグロフォレストリー」という農法が導入され、複数の作物が一緒に栽培されています。この農法によって、2019年から毎年一度、BIKAS COFFEEが主催するコーヒー植樹プロジェクト「BIKAS COFFEE VILLAGE」が開催されています。
異なる作物が共生する形式の栽培は「アグロフォレストリー」あるいは「混植」(複数の作物を一緒に育てる方法)と呼ばれます。この手法は、各作物の特性を最大限に活かすための「森を作る農法」です。このプロジェクトは、2019年12月にネパールのハルパン村で生産されたコーヒーをECストアで販売し始めた人々が発起人となっています。
2022年には合同会社BIKAS COFFEEを設立し、同年9月にはネパール第2の都市ポカラにも店舗を開設しました。そして、これと並行して、「BIKAS COFFEE VILLAGE」の名のもとに、ハルパン村でのコーヒー植樹プロジェクトを2021年から毎年実施。クラウドファンディングを通じて支援者を募り、今日までに200名以上の支援者を集め、250本以上の樹木を植樹することができました。
そしてブロックチェーンを活用した「SPIN」は、「最新ICT技術×地球環境」というテーマのもと、サステナブルな社会の実現を目指す株式会社Freewillが運営するストーリーファンディングサービスです。各プロジェクトは、「才能」を取り巻く事実に基づいた物語として表現され、その物語が多くの支援を引きつけることで、「才能」の未来を創造します。これは地球上の価値ある全ての要素をストーリー化し、プロジェクトの発起人と支援者を繋げる役割を果たします。
そして物語は、SNSやアプリ上で配信され、実施者の想いや、「才能」を巡る社会課題、環境問題などが丁寧に描かれます。これにより、ユーザーは共感を覚え、支援したいプロジェクトを見つけることができるプラットフォームです。またこのクラウドファンディングサービスの基盤技術には、ブロックチェーンが用いられています。これにより、寄付の流れを追跡し、その履歴を明確に表示することが可能となっています。
⑥まとめ
何かを支援する際に、目的のところに支援が届き、本当に有効活用されているかというところまで、気にして支援している方は、珍しくないでしょう。寧ろ、経過がわからない、本当に支援が届いているかわからないので支援しない、という意見あって当然のながれでしょう。何故ならこれまでの支援・寄付の形は、寄付金の活用状況が詳細に確認できず、寄付がどのように効果を発揮したのかを知るのは難しかったのです。
しかし、昨今では支援金を送るシステムにブロックチェーンが活用されることで、寄付金の流れやその影響を把握でき、支援者は自身の貢献がどのように活用されたのかを実感することができます。寄付金の明確な追跡が可能なことは、寄付先への信頼性を高める要素にもなります。地球温暖化と共に自然災害のリスクも高まっています。必要なのは、支援金の追跡の可視化だけでなく、スピーディな支援も重要です。そのためには仲介を必要としない暗号資産は適しています。
ブロックチェーンを使った支援プロジェクトは様々あるので、気になる方はぜひ今回挙げたプロジェクトをチェックしてみてください。
立花 佑
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