今回は、ConcordiumとArivuのグリーンウォッシング対策について、一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- Concordiumとは
1-1.Concordiumの概要
1-2.Concordiumの特徴 - Arivuとは
2-1.Arivuの概要
2-2.Arivuが提供するソリューション - グリーンウォッシングとは
3-1.グリーンウォッシングの概要
3-2.グリーンウォッシングとブロックチェーン - ConcordiumとArivuのグリーンウォッシング対策とは
4-1.ConcordiumとArivuの提携
4-2.ConcordiumとArivuの見解 - ConcordiumとArivuが提携するメリット
- まとめ
23年3月16日、ブロックチェーン関連企業Concordiumは、ESG(環境、社会、ガバナンス)の報告と検証に特化したBaaS(Blockchain-as-a-Service)プロバイダーであるArivuと提携したことを明らかにしました。両社は共同で、検証済みのESGデータを企業に提供することによって、現在拡大している「グリーンウォッシング」の問題解決に取り組みます。
今回は、ConcordiumとArivuが提携して目指すブロックチェーンを利用したグリーンウォッシング対策について、その概要や内容などを詳しく解説していきます。
①Concordiumとは
1-1.Concordiumの概要
Concordiumは、特定の参加者がトランザクションを実行することができるプライベートチェーンと、誰でも参加できるパブリックチェーンをサポートしており、さまざまな企業・行政のニーズに対応します。また、Concordiumは科学に基づくプルーフ・オブ・ステーク(PoS)ブロックチェーンで、プロトコルに本人確認を組み込み、規制要件を満たすよう設計されています。
Concordiumは2021年の正式ローンチ以来、多岐にわたるパートナー企業との協力関係を築いており、中でも金融、サプライチェーン、「IoT(モノのインターネット)」、ゲームなどの分野のアプリケーションに適したブロックチェーンプラットフォームとして知られています。
1-2.Concordiumの特徴
Concordiumブロックチェーンは、その高い機能性やセキュリティ性、透明性から、企業や個人が安全且つ信頼性の高い方法でビジネスを行うことを可能にしています。
特に、プライバシー保護機能を特徴としており、暗号化技術を活用することによって、トランザクションの内容を公開することなく、承認することが可能となっています。そのため、企業はクライアントの情報や取引情報をしっかりと保護しながら、ブロックチェーン上でビジネスを行うことができるというわけです。このほかにも、Concordiumはさまざまなアプリケーションに対応できるように設計されており、先ほど挙げたような金融サービスや物流、電子商取引、また医療や選挙など、多岐にわたる分野での利用が想定されています。
また、Concordiumではコンセンサスアルゴリズムとして「Proof of Stake(PoS)」プロトコルを採用しており、これによってブロックチェーンネットワークを維持するために必要なエネルギー消費を削減し、より環境に優しいブロックチェーンを実現しています。
このように、Concordiumはその高い技術力によって、ビジネスプロセスのさらなる効率化や新しいビジネスモデルの創出、また社会的インパクトの創造など、多岐にわたるシーンで貢献することが期待されています。
②Arivuとは
2-1.Arivuの概要
「Arivu」とは、イギリスを拠点とするESG(環境、社会、ガバナンス)報告と検証に特化した「BaaS(Blockchain-as-a-Service)」プロバイダーです。
Arivuでは主に、企業が持つESGについての情報をブロックチェーン上に記録し、検証可能且つ透明性を確保したかたちで公開することを可能にするソリューションの提供を行っています。具体的には、すべてのESGに関する情報の正確性と透明性を維持し、情報の改ざんや不正アクセスを徹底的に防止しています。また、ArivuのプラットフォームはESGに関する情報を収集、分析し、レポートを作成する機能を備えているため、企業はスピーディに且つより正確なESG報告を行うことが可能となっています。
このように、Arivuは企業がESGおよびサステナブルな運営への移行を検証し、クライアントからの信頼をより高めるために役立つブロックチェーンプラットフォームとして、そのユースケースをますます拡大しています。
2-2.Arivuが提供するソリューション
EasyWriter
EasyWriterとは、クライアントが任意のデータを複数のパブリックブロックチェーンに簡単に記録するプロダクトです。これまで複雑で分かりにくいとされていたパブリックブロックチェーンへのアクセスをよりシンプルなかたちで実現しています。
具体的には、簡単なAPIを使用してブロックチェーンにデータの書き込みを行い、パブリッシュする必要があるデータを選択するだけで、あとはEasyWriterが自動的に処理してくれるという利便性の高いサービスとなっています。デジタルウォレットやトークンなども存在しないため、よりシンプルで分かりやすく、誰もが安心して利用することができるツールとなっています。
Evidence Builder
Evidence Builderとは、複雑なエコシステム全体において、複数の形式のデータを簡単に収集および照合し、検証することが可能なESGレポートに関するソフトウェアツールとなっています。
近年、ESGの考え方が世界的に拡がっている中、企業はクライアントや投資家、規制当局などから、開示したESGデータの証明をするようにとの強い要求を受けています。そんな中、企業はArivuが提供するEvidence Builderを使用することによって、自社が開示したESGデータについてすべての事実を裏付けるエビデンスを作成することが可能となり、ESGデータの証明に対する需要に対応することができるというわけです。
Change of State Oracle(CoSO)
Change of State Oracle(CoSO)は抽象化レイヤーとして機能し、スマートコントラクトに対して、幅広いオフチェーンデータと分散化されたオフチェーンコンピューティングリソースへアクセスするためのインターフェースを提供しています。
また、CoSOはオンチェーンおよびオフチェーンのコンピューティングリソースとデータ ソーシングリソースを安全に構成することによって、既存のスマートコントラクト機能をより強化するためのフレームワークを提供しており、Web3.0のビジネスシーンへの活用を進めるために重要であると考えられている、オンチェーンとオフチェーンのハイブリッドであるスマートコントラクト機能を実現しています。
Block Access Protocol(BAP)
Block Access Protocol(BAP)とは、パブリックブロックチェーンにおいても機密性の高いデータのプライバシーを十分に確保することができるテクノロジーのことを指します。具体的には、BAPを使用することによって機密性の高いデータを安全な環境のもとで共有したり、必要に応じてそのアクセスを取り消すことなどが可能です。
また、パブリックチェーン上に書き込まれたデータを破棄する必要がある場合、所有者はそれらのデータを永久にロックしたままにすることもできるなど、クライアントは自身のニーズに合わせて柔軟なデータ管理を行うことが可能です。
③グリーンウォッシングとは
3-1.グリーンウォッシングの概要
「グリーンウォッシング」とは、環境にやさしくエコなイメージを彷彿とさせる「グリーン」と、ごまかしや上辺だけという意味を持つ「ホワイトウォッシュ」を組み合わせた造語で、企業や団体が自社製品やサービスが環境に配慮したものであると主張することで、消費者の環境意識や需要に応じた商品やサービスを提供しているという印象を与える手法のことを指します。
しかし、実際にはその商品やサービスが環境に対して良い影響を与えていないなど、環境に配慮した製品やサービスを提供することを謳いながら、実際には環境に悪影響を及ぼすような行為を行っている場合があり、環境意識の高い消費者に誤解を与えるマーケティング手法として懸念されています。
このように、グリーンウォッシングは消費者に誤った印象を与えることによって、環境に配慮した商品やサービスを選ばせることを狙った悪質なマーケティング手法となっており、最新のヨーロッパの調査においても、「グリーン」を主張しているうちのおよそ42%が誇張や虚偽、または欺瞞であると報告されているなど、業界において大きな問題となっています。
3-2.グリーンウォッシングとブロックチェーン
前述の通り、現在世界的に大きな問題となっているグリーンウォッシングですが、ブロックチェーンによってこれらの問題を解決できるという期待も拡がっています。
ブロックチェーンは分散型の台帳システムであり、改ざんや不正な操作を行うことが極めて困難であるという特徴があります。このことから、企業の環境問題に対する取り組みの正確な記録をブロックチェーンで保管し、グリーンウォッシングを防止することができるとされています。例えば、企業が環境に配慮した製品を提供する場合、その製品の生産過程や材料の調達過程といったサプライチェーンについてブロックチェーン上に一つ一つ記録することが可能となるため、改ざんや不正が困難な環境の中で真正性が確保された情報を保管することができるようになります。
また、ブロックチェーンによって、環境に配慮した取り組みを行っている企業や団体に対する報酬を与えることも可能です。例えば、環境に配慮した製品を提供している企業や、再生可能エネルギーを利用している企業に対して、ブロックチェーンを活用した報酬制度を設けることが可能となるため、企業が環境に配慮した取り組みを行うことをさらに促進することができます。
④ConcordiumとArivuのグリーンウォッシング対策とは
4-1.ConcordiumとArivuの提携
23年3月16日、ConcordiumとArivuはパートナーシップを締結したことを発表しました。検証済みのESGデータや証拠、保証を企業に提供することによって、現在拡大しているグリーンウォッシングの問題に対処することを目指しています。
両社はそれぞれの強みを組み合わせてこれを実現するとしています。具体的にはConcordiumには、持つデータ保護やプライバシー、セキュリティに重点を置いた、柔軟で信頼性の高いブロックチェーンプラットフォームがあります。Arivuは、企業のESG関連情報をブロックチェーン上に記録し、検証可能且つ透明性を確保したかたちで公開することを可能にするソリューションがあります。2社の強みを活かして、より信頼性の高いESGデータの確立を目指し、グリーンウォッシング対策を進めていくということです。
4-2.ConcordiumとArivuの見解
今回のパートナーシップ締結にあたって、両社はそれぞれ今後の展望についてコメントを発表しています。
Arivuの最高経営責任者(CEO)マシュー・ネルソン(Matthew Nelson)氏は、企業が投資家たちの抱える課題を解決し、持続可能性に対する取り組みへの社会的信頼を獲得することをサポートしていきたいと語っています。
また、Concordiumでビジネスソリューション責任者を務めるTorben Kaaber(トーベン・カーバー)氏は、ESGデータ報告が検証された正確なものであることを保証し、現在横行しているグリーンウォッシングが過去のものとなるように、より透明性の高い、持続可能な未来に向けて取り組んでいくと述べています。
⑤ConcordiumとArivuが提携するメリット
グリーンウォッシングの防止
ConcordiumとArivuの提携によって環境に配慮した取り組みを行っている企業や団体の情報を確実に管理し、グリーンウォッシングを防止することができます。また、環境に配慮した取り組みを行っている企業や団体に対して認証を行うことで、消費者や投資家が正確な情報を得ることも可能となります。
環境に配慮した取り組みの促進
ConcordiumとArivuの提携により、環境に配慮した取り組みを行うことに対する報酬制度を実現することができ、これによって企業や団体が環境に配慮した取り組みを積極的に行うことを促進することが可能となります。
ブロックチェーンの活用促進
ConcordiumとArivuの提携により、ブロックチェーンを活用した環境問題への取り組みがより一層促進され、ブロックチェーンのさらなる普及が進み、あらゆる分野において活用されることが期待されます。
⑥まとめ
ConcordiumとArivuは今回パートナーシップを締結することによって、現在横行しているグリーンウォッシングへの対策を進めていくことを明らかにしました。両社はそれぞれに高い技術力を有しており、それらを互いに組み合わせることによって真正性の担保されたESGデータ報告を可能にし、企業が社会的信頼を獲得することをサポートしていきたいということです。
ESG投資がますます注目を集めている中、両社のソリューションは今後さらにその需要を拡大していくことが予想され、グリーンウォッシュを含めてカーボンニュートラル関連の事業がどのように広がっていくのか注目されるでしょう。
中島 翔
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