今回は、コインチェックで取扱いのあるジェネラティブアートについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
暗号資産(仮想通貨)市場が成長する中で、ジェネラティブアートNFTが比較的新しいNFT(非代替性トークン)の形として注目を集めています。ジェネラティブアートは60年代に勃興したジャンルで、コンピューターワークで表現した模様や物体の質感を作品に取り入れているスタイルです。ブロックチェーン技術により、スマートコントラクトを実行することでジェネラティブアートを作成できるようになりました。
この記事では仮想通貨取引所コインチェックのNFTマーケットプレイス「Coincheck NFT(β)」で取り扱っている、ジェネラティブアートNFT関連のプロジェクトを紹介します。
①ジェネラティブアートNFTとは
ジェネレーティブアートは、プログラムで表現した模様や物体の質感を作品に取り入れるもので、1960年代に生まれたカテゴリーです。
従来のNFTアートはアーティストが描くデジタル作品をNFTとして発行したものが主流ですが、ジェネラティブアートNFTはそれにランダム性を掛け合わせた形になります。ジェネラティブアートNFTはガチャのように、発行するまではどのような作品が生まれるかわからない面白さがあります。
また、ジェネラティブアートの場合、アーティストはキャンバスに絵を描くのではなく、キャンバスにどのような線や図形が現れるかをプログラムで指定します。そして、NFTアートが発行されるタイミングでブロックチェーン上のデータを取得してプログラムが実行され、最終的なデザインが確定します。最終的にNFT作品を描くのがアーティストではなく、コンピュータのプログラムである点も特徴の一つだと言えるでしょう。
データをプログラムに取り入れて出来上がるNFTがイメージしにくいという方のために、以下で例を示しています。以下に示しているNFTはtakawo氏によって作成された「SinteredMemories」という作品集の1つです。
NFTアートの左側には、プログラムに入力された変数が表示されており、この値を変化させることで画像が変化するのが分かります。
NFTが発行される時点では、この変数がランダムに入力されるため、発行されるまで姿がわからないというジェネラティブアートの特性が生まれるのです。
このようにユニークな特徴を備えたジェネラティブアートについて、国内仮想通貨取引所コインチェックが次々に関連するプロジェクトを発表しています。
②Generativemasks
コインチェックのNFTマーケットプレイス「Coincheck NFT」で、日本発のジェネラティブアートNFT「Generativemasks(ジェネラティブマスク)」の取り扱いと販売を開始することが発表されました。取り扱いが開始されたのは5月26日15時から。1万個発行されたNFTのうち100個の作品が販売されます。
Generativemasksはクリエイティブコーダー高尾俊介( Takawo Shunsuke)氏らが手がける作品です。コードによって生み出される様々な表情・色・形のマスクはそれぞれで異なる表情を有するのが特徴的です。ユーザーは自分好みのマスクを探す際、利用しているNFTマーケットプレイスのページをリロードすることでランダムで別のNFTを表示させることができます。
Generativemasksの1万点のNFTコレクションは2021年8月に出品された後、2時間ほどで3億円を超える売り上げを出すほどの人気を誇りました。DappRadarのレポートによると、出品から数時間で3,000人以上がGenerativemasksのNFTを購入して二次販売も行われたといいます。出品から24時間のうちにGenerativemasksの取引が発行部数を超える12,000回行われたことからも、その時点ですでにユーザー間でNFTの取引が行われたことが伺えます。このように、一定の市場流動性も期待できる点もメリットの一つだと言えるでしょう。
また、今後Generativemasksはプロジェクトの第2フェーズとしてメタバース(仮想空間)ゲーム「Decentraland(ディセントラランド)」への参入も予定されています。Decentralandではユーザーらが各々保有しているNFTを展示できる他、メタバース空間内でアバターにマスクを装着できる仕様も実装されます。これからの成長が期待されているメタバース市場への参入が実施されたら、Generativemasksの人気がさらに高まることも想定できるでしょう。
Generativemasksは全作品が発行されているため、Coincheck NFTではランダムに生成されたNFTアートを購入するのではなく、すでに外見が確定している作品を購入することになります。
③メタバース都市 × NEO TOKYO PUNKS
コインチェックがThe SandboxとDecentraland上に構築している「OASIS TOKYO」と「OASIS KYOTO」が、国内発のジェネラティブアートプロジェクトである「NEO TOKYO PUNKS」とのコラボレーションを発表しました。
「OASIS TOKYO」と「OASIS KYOTO」は2035年の近未来都市をイメージしたメタバース空間で、それぞれ実際の東京と京都の街並みを模しています。いずれもコインチェックがDecentraland上に保有する仮想土地「LAND」に構築されており、メタバース体験やコミュニティ内の交流ができるようになっています。すでにOASIS TOKYOはさまざまなアーティストなどとのコラボを行っており、アーティストとファンが交流する場としても注目を集めています。
「NEO TOKYO PUNKS」は日本のクリエイターであるNIKO24氏が手がけるイラストをベースとしたジェネラティブアートのNFTプロジェクトです。
サイバーパンクを連想させるような世界観は、永久の命を求める権力者らによって作られた仮想空間「ブレインバース」に飲み込まれた東京が舞台です。その世界の中で、NEO TOKYO PUNKSというグループが失われた昔の東京を取り返すためにブレインバースをハッキングしていくというストーリーが展開されている設定になっています。
日本を代表するようなSF作品を連想させるストーリーや画風が話題を呼び、NEO TOKYO PUNKSはプレセールとパブリックセールを経て2,222体のNFTがわずか2分で完売しました。このNEO TOKYO PUNKSもジェネラティブアートで、1つ1つのNFTに描かれているキャラクターは異なるガジェットを装着しているなどそれぞれユニークな特徴をランダムに有しています。
上記の画像からもわかるようにNEO TOKYO PUNKSはすでにOpenSeaなどのNFTマーケットプレイスで二次販売されており、高額で取引される作品もあります。
このように人気の高さがうかがえるNEO TOKYO PUNKSと「OASIS TOKYO」と「OASIS KYOTO」のコラボでは、NEO TOKYO PUNKSの世界観を表現した展示エリアの設置やオリジナルアバターの制作が予定されています。コラボ企画が実施される具体的な日にちはまだ公開されていませんが、人気のジェネラティブアートとコインチェックのメタバースとのコラボは大きな注目を受けることが期待できるでしょう。
④Artblocks
Art Blocksはイーサリアムブロックチェーンを利用したジェネレーティブアートを公開・販売するNFTプラットフォームです。プロジェクションマッピングアーティストのErick Calderonが2020年に設立しました。Art Blocksでは作品を購入すると、指定されたアルゴリズムに従ってデザインや色、背景がランダムに設定され、偶然生まれたオリジナル作品が出来上がります。
Art Blocksで作品の販売を希望するクリエイターは、作品のスクリプト(簡易プログラム)やアルゴリズムをArt Blocksにアップロードし、総発行枚数や販売価格などを設定します。作成される作品は、イラストにも3Dアートにもなります。つまり、購入者だけでなく、制作者さえも、実際に公開されるまで、どのような作品が出来上がるのか分からないのです。そうした斬新なスタイルが、Art Blocksが注目を集めている理由です。Coinchek NFT(β版)は、2022年5月19日にArt Blocksで作成された作品の提供を開始しました。
この注目度と作品の質の高さから、Art Blocksで販売されるNFTは非常に高値で取引されることもあります。2021年8月には、カナダ人アーティストDmitri Cherniakの「Ringers#879」という作品が1,800ETH(時価:約6億4千万円)で落札され、話題を呼びました。
⑤まとめ
コインチェックは、Art BlocksやGenerativemasks、NEO TOKYO PUNKSと、次々にジェネラティブアートとのプロジェクトを発表しています。NFTの分野の中でも、ジェネラティブアートはこれからの人気が期待できるものだと言えるでしょう。この記事でジェネラティブアートに興味を持った方は、Coincheck NFT(β)のプロジェクトやコラボレーション企画をチェックしてみてはいかがでしょうか?
中島 翔
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