Circulariseが提供する循環経済のためのブロックチェーン製品について解説

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今回は、Circulariseが目指す循環型経済のためのブロックチェーンについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

  1. Circularise(サーキュライズ)とは
    1-1.Circularise(サーキュライズ)の概要
    1-2.Digital Product Passports
    1-3.「ゼロ知識証明」でプライバシーを保護
    1-4.ブロックチェーンを用いたトレーサビリティの確保
    1-5.大規模な資金調達
  2. 循環型経済への移行
    2-1.循環型経済の概要
    2-2.循環型経済における「3原則」
    2-3.世界における循環型経済への注目度の高まり
    2-4.日本国内における循環型経済への取り組み
  3. Circulariseの今後の展開
    3-1.分散型ネットワークによる情報共有の促進
  4. まとめ

オランダに本社を構える「Circularise(サーキュライズ)」は、産業用サプライチェーンに対してトレーサビリティおよび安全なデータ交換を提供するソフトウェアプラットフォームを運営しています。

Circulariseは資源やエネルギーが最大限に有効活用される「循環型経済」の実現を目指しており、自社で手がけているブロックチェーンベースのソリューションで業界から大きな注目を集めています。

今回は、Circulariseが目指す循環型経済のためのブロックチェーンについて、詳しく解説していきます。

①Circularise(サーキュライズ)とは

1-1.Circularise(サーキュライズ)の概要

Circularise2
Circularise(サーキュライズ)とは、2016年に設立されたオランダのブロックチェーン関連の開発企業です。

Circulariseは主に、製品の材料追跡およびデータ共有を可能にするブロックチェーン・ソリューションを開発しています。これまで複雑で分かりにくいとされていたサプライチェーン全体の透明性とトレーサビリティを向上させ、「循環型経済(サーキュラーエコノミー)」への移行を可能にすることに尽力しています。

循環型経済とは、従来の「Reduce(リデュース)」、「Reuse(リユース)」、「Recycle(リサイクル)」という「3R」の取り組みに加えて、資源投入量や消費量を最小限に抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化などを通して付加価値を生み出す経済活動です。循環型経済にはあらゆる分野において環境保全への対応が組み込まれ、資源やエネルギーが無駄なく有効に活用される社会の実現を目指しています。

Circulariseでは社会がこのような循環型経済へと移行していくことをサポートしており、その取り組みが評価され、欧州委員会(EU)による「EU Horizon 2020」に選出されるなど、数々の受賞歴を有しています。

Circularise

Circulariseをサポートする企業一覧

Circulariseのプロジェクトチームには業界に精通したエキスパートたちが集っています。共同経営者であるジョルディ・デ・ヴォス(Jordi de Vos)氏はブロックチェーンが登場した初期の頃からこの技術に興味を持ち、その豊富な知識と経験を生かしてビジネスを成長させるための戦略的な提携や投資、また財務管理などを行うなど、ミッションの達成に向けた積極的な取り組みを進めています。

このように、Circulariseは循環型経済を実現するためのデジタルプラットフォームとして信頼を獲得し、注目と期待を集めています。

1-2.Digital Product Passports

Circularise3

CirculariseのブロックチェーンベースのDigital Product Passportsは、グローバルサプライチェーンにおける複雑なマテリアルフローの可視性、信頼性、知識をより高めるソリューションです。

顧客がサプライチェーン全体で資源利用の改善、出所の確認、カーボンフットプリントや影響評価を行うことを可能にします。顧客は、化学、プラスチック、金属、重要な原材料だけでなく、自動車、エレクトロニクス、パッケージング、建設などの複雑なサプライチェーンに及びます。

Digital Product Passportsには、生産から廃棄までのライフサイクル全体を通して製品を追跡するためのさまざまな情報が含まれています。

Digital Product Passports

Digital Product Passportsはパブリックブロックチェーンで構築されており、所有権、原産地、使用状況の不変の記録を提供し、複雑なサプライチェーンにおける信頼性と透明性を向上させています。

1-3.「ゼロ知識証明」でプライバシーを保護

循環型経済実現のためには、企業が取り扱っている資源や部品、また製品の持つ価値を証明するための透明性の高いインフラが必要です。しかし、企業秘密などの関係で企業がそのすべてを公の場でオープンにすることは極めて困難であることから、多くのトレーサビリティに取り組むサービスが閉鎖的なシステムとなってしまっています。

そんな中、Circulariseはブロックチェーン、及び「ゼロ知識証明(Zero-Knowledge Proof)」を活用することによって、この課題を解決することに成功しました。ゼロ知識証明は暗号理論における情報伝達手法の一つです。証明者が「実際の情報」を検証者に開示することなく、情報に関する知識を持っていることを暗号で証明する方法を指します。

Circulariseはこのような技術を活用することによって、機密性の高い情報を公開することなく、資源や製品に関する重要な情報のみをやりとりし、製品製造やリサイクル、再資源化、再製造などの実施を可能にしたというわけです。

また、この仕組みをサプライチェーンの情報共有に導入することによって、循環型経済の実現に寄与していきたいとしています。

1-4.ブロックチェーンを用いたトレーサビリティの確保

Circulariseでは、ブロックチェーンを用いた「トレーサビリティ」の確保にも注力しています。トレーサビリティとは、生産物がいつ、どこで、だれによって作られたのかを明確にするために、原材料の調達から生産、そして消費者の元に届けられるまでの経路や廃棄までの手順を追跡可能な状態にする能力です。

近年、世界中において「サステナブル(持続可能)」な事業が求められるようになってきており、サプライチェーンにおけるトレーサビリティに注目が集まっています。企業にとっても、どこから何を買うのか、またそれらが環境や社会、経済に対してどのような影響を与えるのかをしっかりと把握しておくことは、自社の責任として重要なことであると言えるでしょう。

そんな中、Circulariseは生産物の原料調達から廃棄までの一連の流れをブロックチェーン上に記録することで、持続可能なサプライチェーンの証明を可能にしています。ブロックチェーンには、「改ざんや不正が極めて難しい」特性があり、サプライチェーンの情報の正当性が担保されます。

実際、Circulariseは20年11月にドイツの高級自動車メーカーとして知られる「ポルシェ」と連携し、自動車の購入者がアプリを通して、その自動車が製造されるまでのすべてのプロセスを参照することができるサービスをスタートしています。

このサービスによって、消費者は自身が乗っている車にはどのようなリサイクル素材が使用されているのか、またその素材はどのようなところから、どのような工程を経てここまでたどり着いたのか、などといった情報を知ることが可能です。

また、トレーサビリティ技術によって、その車が他のブランドの車と比べて、社会や環境に対してより良い影響を与えているということを知れるなど、利便性の高いサービスとなっています。

1-5.大規模な資金調達

Circulariseはこれまでに大規模な資金調達を完了しています。2020年10月にヨーロッパの持続可能な経済への移行を目指す「EIT Raw Materials」より18万ユーロ(約2,400万円)の資金調達を完了しました。

2022年11月にはシリーズAラウンドで1,100万ユーロ(約15.6億円)を調達。この資金調達には日本の旭化成、オランダのベンチャー・キャピタルであるBrightlands Venture Partners、及び4impact capital、フィンランドのエネルギー企業Neste(ネステ)が参加しました。また、調達した資金には欧州委員会(EC)から補完された助成金も含まれます。

Fundraise
シリーズAで調達した資金について、Circulariseの共同経営者であるジョルディ・デ・ヴォス(Jordi de Vos)氏は、事業や製品、研究開発や国際的なチームの拡大に活用していきたいと語ってます。

ジョルディ氏はまた、サプライチェーントレーサビリティのリーディングソフトウェアプロバイダーとして、成長をさらに加速させるとともに、世界規模での循環型経済への移行をサポートすると述べています。

②循環型経済への移行

2-1.循環型経済の概要

前項でも説明したように、「循環型経済(サーキュラーエコノミー)」とは従来の「3R」の取り組みに加えて、資源投入量や消費量を最小限に抑え、ストックを有効活用しながら、サービス化などを通して付加価値を生み出す経済活動のことを指します。この循環型経済は、大量生産や大量消費を前提とし、資源の循環利用を想定しない「線形経済(リニアエコノミー)」の反対に位置する概念として知られています。

これまでの経済活動は、製品の大量生産や大量消費、大量廃棄をもたらし、気候変動や資源の枯渇、また生物多様性の喪失やプラスチック汚染、貧困、格差といったさまざまな環境問題や社会問題を生み出してきました。このような問題の最も根本的な要因として、原料調達から生産、そして消費、廃棄というような、完全なる一方通行の経済システムであることが指摘されています。こういった一方通行の経済システムは、資源や製品、また物資の流れが循環せず、一方向に直線的であることから「線形経済(リニアエコノミー)」もしくは「リニア経済」と呼ばれています。

Circulariseが目指している循環型経済は、この線形経済と相対する経済の在り方として挙げられており、資源の浪費に依存しない持続可能な経済発展に貢献するとして、現在世界中から注目を集めています。Circulariseが拠点を構えているオランダでは、政府が2050年までに100%サーキュラーエコノミーを実現するという目標を掲げており、その取り組みはますます加速化しています。

2-2.循環型経済における「3原則」

国際的に循環型経済を牽引している団体で、サーキュラーエコノミーの推進のための国際ネットワーク「CE100」を主導する「エレン・マッカーサー財団」は、循環経済の実現において下記に挙げる3原則が必要不可欠であると語っています。

  1. Eliminate waste and pollution(廃棄や汚染を排除する)
    負の外部性を明確にし、排除する設計にすることでシステムの効率性をより高める
  2. Circulate products and materials (at their highest value)(製品と原材料を、高い価値を保った状態のまま継続的に循環させる)
    技術面および生物面において素材や部品、製品を最大限利用可能な範囲で循環させることによって、資源からの生産を最適化する
  3. Regenerate nature(自然を再生する)
  4. 有限な資源ストックをコントロールし、再生可能な資源フローの中で収支を合わせることによって、自然資本を保存および増加させる

なお、上記の3原則の中でも特に「Eliminate waste and pollution(廃棄や汚染を排除する)」ことが最も重要視すべき項目として挙げられており、循環型経済の主軸でもある「廃棄物を出さない」という概念にも通ずる原則として、これまでの線形経済のシステムを根本から覆すものであると言えるでしょう。

2-3.世界における循環型経済への注目度の高まり

近年「SDGs(持続可能な開発目標)」などが世界的に広く普及している中、地球上で起こっている環境問題や社会問題への関心もますます高まっています。

循環型経済への注目度もさらに向上しており、特に積極的な姿勢を示しているのが「欧州委員会(EC)」です。ECは、循環型経済による環境課題への対処や持続可能な経済成長、また雇用創出や投資、国際競争力強化の促進など、ヨーロッパ経済を循環経済システムに移行する考えを明らかにしています。

具体的には、2015年に「CEパッケージ(Circular Economy Package)」を発表。循環型経済を実現するにあたって「行動計画(Action Plan)」や「廃棄物法令の改正案」、「優先分野」や「経済効果」に関しての細かな政策内容を明示しました。2018年には「EUプラスチック戦略」を発表。2020年には「新循環型経済行動計画(New Circular Economy Action Plan)」を打ち出し、循環経済システムに移行するための政策を推進しています。

このほか、「国際連合」においても循環型経済はますますその重要性を増しています。2020年にパリ協定の主要目標である気候変動の緩和を目的として循環型経済のガイダンスを公開しました。気候変動の緩和のほか、経済の資源効率と循環性を高め、SDGsの「目標12」に挙げられている「持続可能な生産・消費パターンの寄与」につながるような内容が盛り込まれています。

2-4.日本国内における循環型経済への取り組み

近年では、日本国内においてもその取り組みが拡がっています。日本では元々、2000年6月に「循環型社会形成推進基本法(循環型社会基本法)」を発表し、前述した「3R」の政策を以って循環型社会への取り組みとしてきました。

しかし、近年は資源効率が向上したことによって環境負荷の低減および経済成長の両立が求められるようになったため、3Rをさらに発展させた政策である「循環経済ビジョン2020」が2020年5月に発表され、循環型経済への本格的な取り組みをスタートさせています。

こうした文脈で、「プラスチック資源循環戦略」の具体化やバイオプラスチック導入ロードマップの策定、また海洋プラスチックごみ問題の解決に向けた「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の深化などが進められています。

③Circulariseの今後の展開

3-1.分散型ネットワークによる情報共有の促進

従来のソリューションの多くは、他の類似サービスと競合する形で存在しており、それぞれが互いのシステムと連結して情報共有を行うといったことを想定していません。そのため、各サービスには互換性がなく、「サイロ型」になってしまっているという問題点がありました。

そんな中、Circulariseは分散型ネットワークによる互換性を持った仕組みを確立することで、業界全体における情報共有を促進し、これまでとは違うオープンインフラを構築していくということです。Digital Product Passportsのメリットは、複数のバリューチェーンでスケールアップし、相互運用が可能になったときに初めて実現します。

プラットフォームで保管されるデータとインサイトは、素材選択の課題、製品設計の概要、循環型ビジネスモデルへの情報提供に利用することができます。そして、これらの情報は、資源の充足、製品寿命の延長、使用済み製品の回収といった、持続性の改善に向けた顧客の動きを促進する可能性があります。

④まとめ

オランダに拠点を構えるCirculariseは循環型経済への移行を目指して、ブロックチェーン・テクノロジーを駆使したさまざまなソリューションの提供を行っています。

Circulariseが手がけるデジタルプラットフォームでは、商品やサービスがクライアントに提供されるまでの一連のプロセスにおける透明性を向上させ、企業間のコミュニケーションを促進させるシステムが確立されているなど、より信頼できるサプライチェーンの構築を実現しています。現在、循環型経済に向けた取り組みは世界中で進んでおり、Circulariseの提供するプラットフォームも今後ますますその需要を拡大していくと見られているため、引き続きその動向に注目が集まるでしょう。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12