カーボンオフセットに関連するCDM(クリーン開発メカニズム)とは

※ このページには広告・PRが含まれています

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / @fukuokasho12))に解説していただきました。

目次

  1. 「CDM(クリーン開発メカニズム)」とは
    1-1.「CDM(クリーン開発メカニズム)」の概要
    1-2.「CDM(クリーン開発メカニズム)」誕生の背景
  2. 「CDM(クリーン開発メカニズム)」の特徴
    2-1.先進国と発展途上国双方にメリット
    2-2.先進国のテクノロジー移転
    2-3.プロジェクトの種類
    2-4.ベースラインと追加性
  3. 「CDM(クリーン開発メカニズム)」の課題
  4. CDMプロジェクトの手順
  5. まとめ

「CDM(クリーン開発メカニズム)」とは、1997年の京都議定書において規定された温室効果ガス削減を目指す仕組みのことを言います。

近年、「SDGs(持続可能な開発目標)」などの考え方が世の中に広く浸透し、環境問題に大きな関心が寄せられていることを受け、CDMのメリットや新たな課題などにも注目が集まっています。

そこで今回は、カーボンオフセットに関連するCDM(クリーン開発メカニズム)について、その概要や特徴、また現在抱えている課題などを詳しく解説していきます。

1.「CDM(クリーン開発メカニズム)」とは

1-1.「CDM(クリーン開発メカニズム)」の概要

「CDM」は「クリーン開発メカニズム」とも呼ばれ、国際的な気候変動対策の一部として「国際連合気候変動枠組条約(UNFCCC)」に基づいて採用されました。具体的には、京都議定書の中の市場メカニズムを利用する方法の一つとして、発展途上国の温室効果ガス削減プロジェクトを先進国が支援する形で導入されました。この取り組みにより、排出削減された分に対して「CER(Certified Emission Reductions)」というクレジットが発行されます。先進国はこのCERを利用して自国の排出削減目標の達成を目指します。この仕組みにより、資金や技術が乏しい発展途上国も先進国と連携して温室効果ガス削減に取り組むことが可能となりました。

CDMは、京都議定書のもとで、発展途上国も関与する唯一の制度として注目されています。2023年7月11日現在、7,842件のプロジェクトが登録されており、特にアジアやオセアニア地域での活動が盛んです。

1-2.「CDM(クリーン開発メカニズム)」誕生の背景

CDMは、京都議定書の中の柔軟性対策として生まれました。京都議定書は、参加国に温室効果ガスの排出削減を1990年比で約5%削減することを2008年から2012年の期間で目指すとした国際的な取り組みです。EUは8%、アメリカは7%、日本は6%の削減を目標としています。

この削減目標を達成するための支援策として、京都議定書内で「京都メカニズム」という柔軟性措置が設けられました。この中に、CDMという制度が含まれています。当初、発展途上国には具体的な削減目標は定められていませんでしたが、気候変動問題の進行を鑑み、全ての国が連携して対策を講じる必要があるとの認識のもと、CDMが考案されました。この制度は、先進国と発展途上国双方にとって、排出削減のチャンスを提供するものとして受け入れられています。

2.「CDM(クリーン開発メカニズム)」の特徴

2-1.先進国と発展途上国双方にメリット

CDMの大きな特徴は、先進国と発展途上国の両方が利益を得られる点です。CDMは、京都議定書に基づき、発展途上国が温室効果ガスの削減にアクティブに参加することを促進しています。これにより、先進国は発展途上国のプロジェクトを支援することで、温室効果ガスの削減量をクレジットとして取得し、自国の削減目標の達成が容易になりました。一方、発展途上国も先進国のサポートにより、環境改善の取り組みを強化できるようになりました。CDMは、両国が協力しながら、温室効果ガスの削減を目指す効果的な仕組みです。

2-2.先進国のテクノロジー移転

CDMプロジェクトの実施は、温室効果ガスの削減だけでなく、発展途上国への先進的な環境技術や省エネルギーテクノロジーの移転も促進します。これにより、発展途上国が提供された技術を適用することで、環境問題への取り組み全体が向上し、更なる進展が期待されています。

2-3.プロジェクトの種類

CDMプロジェクトは様々なカテゴリーに分けられます。

具体的には以下の通り:

1)排出削減CDMプロジェクト

  • 大規模CDM
  • 小規模CDM
  • – タイプI:再生可能エネルギープロジェクト(最大出力15MW)
    – タイプⅡ:省エネルギープロジェクト(最大削減エネルギー60GWh)
    – タイプⅢ:年間排出削減が60kt/年以下のプロジェクト

2)新規植林・再植林CDMプロジェクト

  • 新規植林・再植林CDM(大規模)
  • 小規模新規植林・再植林CDM(16,000tの二酸化炭素排出量/年以下)

2-4.ベースラインと追加性

CDMプロジェクトは、プロジェクト実施がもたらす排出量削減の追加性を証明する義務があります。この追加性は、プロジェクトが行われなかった場合の排出量を「ベースライン」として計測し、その上でCDMによる削減分を明示することです。

さらに、「ODA(Official Development Assistance)」のような政府開発援助資金の非流用も、追加性の要件として重要です。プロジェクト毎に、経済的・技術的な観点から追加性を「プロジェクト設計書(Project Design Document)」を使って具体的に示すことが求められます。この際、様々な「追加性証明ツール」が用いられることがあるため、十分な注意が必要です。

3.「CDM(クリーン開発メカニズム)」の課題

1.プロジェクトの内容が限定的
過去のCDMプロジェクトを見ると、特定のプロジェクト内容に偏りがあることが確認されます。温室効果ガスの処理に関するプロジェクトが主流で、省エネルギーの取り組みは限られています。これは、簡易で低コストなプロジェクトへの関心が高まっているためと考えられ、今後の多様性の拡大が望まれる状況です。

2.プロジェクト品質の維持
CDMプロジェクトの品質については、一部が環境や社会問題を引き起こすと指摘されるケースも存在します。プロジェクトの品質を一貫して高く維持するため、より厳格なチェック体制が求められる状況にあります。

3.参入ハードルが高い
国際連合への新規CDMプロジェクト提出は年々増加しており、その結果審査にかかる時間も長期化しています。提出から最終的なクレジット創出までには約2年半の期間が必要とされ、さらに厳しい審査を通過するのは容易ではありません。このように、CDMプロジェクトへの参入障壁は高く、さまざまな課題が伴う現状となっています。

4.先進国の国内対策実施の回避
先進国の政府や企業がCDMの制度を利用してカーボンクレジットを購入することで、国内対策の推進が後回しにされることが懸念されています。CDMを通じてカーボンオフセットが簡易になった結果、どのような環境取り組みが最も効果的なのか、その考え方がぼやけてきているという指摘もあります。

4.CDMプロジェクトの手順

1.プロジェクトの計画と提案

CDMプロジェクトの策定は、プロジェクトメンバーが中心となります。原則的に、任意のプロジェクト内容で申請が可能ですが、以下の点を考慮しながら進める必要があります。

  1. 承認を求めるホスト国、すなわち発展途上国が京都議定書を批准し、指定国家機関(DNA)を持っていること。
  2. プロジェクトが発展途上国の持続可能な開発をサポートする内容であること。
  3. 原子力施設からのクレジット利用は避けること。
  4. 公的資金の活用時、ODAの流用はしないこと。
  5. 温室効果ガスの削減が実際に追加的に行われることの証明。

2.投資国と発展途上国によるプロジェクトの確認

CDMプロジェクトを実施するには、関連する投資国と発展途上国の国家機関からの書面承認を取得する必要があります。

◆日本の承認プロセス

日本のプロジェクト承認は、国内企業の関与するCDMプロジェクトを確認し、適宜サポートを提供するためのものです。承認のための国家機関としては、「京都メカニズム推進・活用会議」が「地球温暖化対策推進本部幹部会」の下に設置されています。

◆発展途上国の承認プロセス

発展途上国での承認は、各国が定める手続きに従って行われます。この際、「プロジェクトが持続可能な開発に寄与する」との確認書を取得することも必須です。

3. プロジェクト設計書の作成
CDMプロジェクトを進めるためには「プロジェクト設計書」の提出が必須です。この設計書には以下の項目を詳細に記載する必要があります。

  1. プロジェクト活動の概要
  2. ベースラインの設定方法
  3. プロジェクトの活動期間
  4. クレジット期間
  5. モニタリング方法及び計画
  6. 温室効果ガスの排出源別の排出量
  7. 環境影響
  8. 関係者のコメント

4. CDMプロジェクトの有効化審査と登録
提出されたプロジェクト設計書を基に、CDMプロジェクトの適合性を評価する有効化審査が行われます。この審査は、プロジェクトメンバーが選ぶ「DOE(Designated Operational Entity)」により実施されます。審査が通ったプロジェクトは、CDM理事会により正式に登録されます。

5. CDMプロジェクトの実施およびモニタリング
プロジェクトの登録後、メンバーは実際にプロジェクトを開始します。この過程で、温室効果ガスの追加削減を確認するため、定期的にモニタリングが実施されます。

6. CERの検証および認証
モニタリングの結果は、DOEによって検証され、排出削減量が認証されます。

7. CERの創出および分配
認証された排出削減量に相当するCERが、国連CDM理事会から発行されます。これらのCERは、プロジェクトメンバー間で分配されることになります。

5.まとめ

「CDM」は、発展途上国の温室効果ガス削減活動を先進国がサポートする制度です。この仕組みにより、発展途上国も積極的に環境対策を進めることができ、先進国はそのサポートによりクレジットを獲得することが可能です。このようなウィンウィンの関係が注目を集めていますが、さまざまな課題も存在します。これらの課題を解決し、地球全体で環境問題への取り組みを強化することが期待されています。

The following two tabs change content below.

中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12