コンテナ船大手のAPモラー・マースク(ティッカーシンボル:MAERSKB)は3月10日、2025年末までに少なくとも年間73万トンのグリーンメタノール(#1)を調達すべく、6社と戦略的パートナシップを締結したと発表した(*1)。より環境負荷を減らしたグリーンメタノールを船舶燃料として活用することで、海上輸送の脱炭素を推進する。
提携先は中国の海運用コンテナ製造大手CIMCのエネルギー部門であるCIMCエンリックと、デンマークの再生可能エネルギー企業ヨーロピアン・エナジー、中国のグリーン・テクノロジー・バンク、デンマーク電力大手のオーステッド、スイスのメタノール製造大手プロマン、廃棄物を再生可能エネルギーに転換することに取り組む米スタートアップのウェイスト・フューエルの6社となる。
マースクはすでにグリーンコンテナ船12隻を発注済みであり、今回の調達が実現すれば、12隻分を大きく上回るグリーンメタノールを確保できるという。同社のフリート・戦略的ブランド部門のヘンリエッタ・ハルベルグ・チューゲセン最高経営責任者(CEO)は、脱炭素への移行に向けてグリーン燃料の製造を大幅に拡大する必要があると述べた(*1)。また、グリーンメタノールは船舶燃料として唯一、すでに商用化されており、かつスケーラブルに利用できるという。
CIMCエンリックは20年以上にわたるマースクのパートナー企業である。今回の提携においては、24年に年間5万トン、25年以降に年間20万トンのグリーンメタノールを製造する。ヨーロピアン・エナジーはマースク初となるグリーン・フィーダー船向けにeメタノール(合成燃料)を製造する。同船舶は23年に就航する予定だ。
グリーン・テクノロジー・バンクは中国でバイオメタノールプロジェクトを推進する。オーステッドは25年から米国で年間30万トンの生産能力を持つeメタノール・プロジェクトを展開する。その全量をマースクが引き取る計画だ。プロマンは年間10~15万トンのグリーンメタノールをマースクに供給することを目指す。ウェイスト・フューエルは24年から南米で年間3万トン以上のバイオメタノールを製造するプロジェクトを進める。こちらもマースクが全量を引き取る計画だ。
マースクは40年までにサプライチェーン上のネットゼロ(温室効果ガス排出量を実質ゼロにする)にコミットしている(*2)。グリーンメタノールの調達強化もその環境目標の達成に向けた取り組みの一環だ。
(#1)グリーンメタノール…回収した二酸化炭素(CO2)とグリーン水素から合成されたメタノール
【参照記事】*1 APモラー・マースク「A.P. Moller – Maersk engages in strategic partnerships across the globe to scale green methanol production by 2025」
【参照記事】*2 コンテナ船大手のAPモラー・マースク「2040年迄にサプライチェーン上のネットゼロ目指す」従来目標を10年前倒し

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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