公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)は11月22日、全国47都道府県を対象として、自治体における脱炭素化の取り組みに関する実態調査の結果を発表した。今月30日開幕する国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)を前に実施したもので、約3割の自治体で、温室効果ガス削減目標が国の削減目標より小さい「国未満」であり、削減策の要となる省エネルギーや再生可能エネルギーの取り組みが十分に進んでいない実態が明らかになった。また、自治体が脱炭素化を推進するうえでの課題として「自治体独自の財源確保」、「人的リソースの不足」、「地元企業の理解不足」などが浮き彫りになった。
中期目標(2030年目標)として国が掲げる目標「2030年に温室効果ガス46%削減」を超える意欲的な削減目標を持つのは青森、岩手、秋田、東京、富山、長野の6都県。その他、国と同等の目標が27自治体と全体の約6割を占め、国を下回る目標を掲げているのが14自治体と、全体の約3割におよんだ。
長期目標(2050年目標)では、茨城県を除く46の自治体が「50年までに排出量ゼロ」を掲げているものの、国が目標に掲げた目標より早く温室効果ガス削減ゼロを掲げる自治体はなく、」WWFジャパンは「中期、長期の目標とも国の目標が事実上の上限になっている」と推察している。
青森県を除く46の自治体で、自治体が所有する施設において再エネを導入し、普及に取り組んでいる。一方、省エネについては、具体的なエネルギー消費量の数値を目標とする自治体は19自治体と全体の4割に留まるなど、省エネの普及の取り組みが遅れている可能性が高い。また、17の自治体では温暖化対策を専門とする知事の諮問機関の設置がなかった。
「気候変動イニシアティブ」など脱炭素に関する国内外の連盟やキャンペーンには、25と約半数の自治体が加入。非国家アクター(参加企業、団体など)の間で横連携を図りながら脱炭素化の取り組みを進めていることがわかった。
脱炭素を推進するうえでの課題として挙げられたものの中で、最多は「自治体独自の財源確保」だった。ほか「人的リソースが不足」や、「地元企業の理解不足」を挙げる自治体も少なくなく、また、WWFジャパンは再エネや省エネの取り組み姿勢と財政力の間に、弱いながらも相関関係があると指摘している。
地域別の分析では、「総合評価」の最上位グループには、東京都、神奈川県、大阪府などの大都市が入っている一方、西日本ブロックで取り組みが遅れている傾向にある。
調査に基づき、WWFジャパンは、国には「科学的知見や国際的議論に基づき、日本全体での意欲的な排出削減の水準を導出する。また、自治体の脱炭素化の支援案を一層充実させる」、自治体には「国の示す排出削減の上記水準を考慮要素の一つとしつつ、可能な限り意欲的な削減目標案と、それを実現する省エネ・再エネ等に関する施策案を検討する。意欲的な目標を達成するために今、必要なことを検討する『バックキャスト』の考えに立ち、削減目標と省エネ・再エネ等の施策を同時に検討することが重要」などと考察している。
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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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