英国、サステナビリティ報告の新制度導入へ 3つの改革案を同時公表

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英国政府は6月25日、企業のサステナビリティ報告を強化するための3つの主要な規制改革案を同時に公表した。本記事は8月27日に公開された内容をもとにしている。これらの施策は「公的・民間投資家が国と世界を気候変動対策とクリーンエネルギーへと導く」ことを目的としており、ネットゼロ時代に向けた企業報告制度の現代化を図る包括的な取り組みとなる。意見募集は9月17日まで実施される。

今回公表された3つの改革案は、英国サステナビリティ報告基準(UK SRS)の草案、気候関連移行計画の開示義務化、サステナビリティ報告の保証業務提供者に対する監督制度である。英国サステナビリティ報告基準は、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が策定したIFRS S1(一般的なサステナビリティ開示)およびIFRS S2(気候関連開示)をベースに、英国の実情に合わせて6つの修正を加えたものだ。主な変更点として、初年度から完全な開示を求める点、気候関連開示から段階的に拡大する「気候優先」アプローチの採用、業界分類基準の柔軟な選択などが含まれる。

気候関連移行計画については、エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)が主導し、大企業と金融機関に対してパリ協定の1.5度目標に整合した移行計画の策定・公表を求める方向で検討が進められている。対象となるのは当初、英国規制下の金融機関とFTSE100企業で、「遵守または説明」方式か「義務的公表」のいずれかの導入が検討されている。移行計画には、ネットゼロまたは排出削減目標、それを達成するための投資・運営上の変更、進捗を追跡するためのマイルストーンと説明責任メカニズムが含まれることになる。

サステナビリティ報告の信頼性確保に向けては、監査・報告・ガバナンス機関(ARGA)による保証業務提供者の監督制度が提案されている。現在、英国ではESG関連の保証業務を行う事業者に対する正式な規制が存在しないが、新制度では任意登録制を導入し、登録事業者には適格性基準の充足と品質基準の遵守が求められる。将来的には、特に上場企業に対して登録事業者による保証取得が義務化される可能性もある。

これらの改革は、EUが企業サステナビリティ報告指令(CSRD)を通じて進める規制強化と歩調を合わせたものであり、グローバルな基準の収斂を図りながらも英国独自の柔軟性を維持する戦略といえる。最終的な基準は2025年秋に公表予定で、当初は任意適用から始まり、その後金融行為規制機構(FCA)による規制や会社法改正を通じて段階的に義務化される見通しだ。企業にとっては、取締役会によるサステナビリティリスクの監督強化、ESGデータシステムの早期評価、将来予測に関する法的責任への対応が重要な課題となる。

英国政府はこれらの施策により、サステナビリティ情報を財務情報と同等の重要性と構造を持つものとして扱う体制を構築し、「世界をリードする持続可能な金融フレームワーク」の確立を目指している。

【参照記事】A New Chapter for UK Sustainability Reporting: Government Consultations Open

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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