世界銀行がソブリンESGデータポータルを開設、新興市場や途上国への投資を促進

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世界銀行は10月29日、「ソブリンESGデータポータル」を開設した。ソブリンは独立国家、または主権者、 統治者を意味し、「ソブリン債」は各国の政府又は政府関係機関が発行し又は保証している債券(国債など)を指す。ソブリンESGは日本ではまだ馴染みのない用語だが、世銀が国単位のESG(環境・社会・ガバナンス)データの一覧を公表したことで、誰でも国レベルのESGデータが無料で入手可能なプラットフォームが開放されたということを意味する。

世銀によると、今回の開設はSDGs(持続可能な開発目標)に沿った投資家による分析を容易にし、新興市場や途上国への投資を促進することを目的としている。同ポータルは、入手可能なデータに基づき、各国の政策や国内の状況をバランスよく映し出すために選ばれた17の指標で構成されており、開設時は現在の市場動向や世界銀行の活用実績を基に選択された指標が設定されている。

同ポータルのフレームワーク(枠組)には計67の指標が組み込まれ、17のSDGsを全て網羅。利用者は世界銀行(IBRDとIDA)の全加盟国に関するデータをダウンロードが可能できる。運営は、金融セクター改革強化イニシアティブ(FIRST)と持続可能性に関するグローバルプログラム(GPS)の支援を受けて、世界銀行の金融・競争力・イノベーション・グローバルプラクティスが世銀財務局および開発データグループと共同で行う。

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の水野弘道理事兼最高投資責任者(CIO)は「投資家は以前から、ESG情報は投資と高い関連性があり、多くのケースでは不可欠という認識を持っていた。特に途上国への投資はこの傾向が顕著だが、経験やデータが乏しいことから十分な情報に基づいた意思決定を行うことが困難だった」と指摘する。

そのうえで、ポータルの開設によって「入手可能なESGデータの質や範囲、透明性、適時性を高めるだけでなく、分析やフィールドワークの経験を投資家らが活用できる機会を提供する。GPIFの運用受託機関の投資判断を高め、質の向上につながると確信している」と評価した。

今後は自然資本、人的資本、貧困削減、座礁資産等に関する新たな指標(国土空間データやビッグデータに基づく指標を含む)が追加される予定。「インパクト投資における原則や基準についてさらに検討する余地がある」と展望する。「債券による持続可能な投資に対する需要の高まりに見合う、より革新的な投資商品」の必要性にも言及している。

【参考記事】Sovereign Environmental, Social, and Governance Data

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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