シンガポール上場企業の98%が気候関連開示を実施、ISSB基準への移行が本格化

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アーンスト・アンド・ヤング(EY)とCPAオーストラリアが7月17日に発表した共同調査によると、シンガポール証券取引所(SGX)上場企業の98%が2024年度に気候関連の情報開示を実施した。2025年度からは国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の新基準に基づく開示が全企業に義務化されるため、各社は準備を加速させる必要がある。

調査では、SGXに上場し2024年12月期決算の企業が発行した359のサステナビリティ報告書のうち、351社(98%)が気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)勧告の少なくとも1項目を満たす開示を行っていたことが判明した。TCFD勧告の全11項目に対応した企業は32%と、前年度の20%から大幅に増加。平均対応項目数も8項目から9項目に向上した。

一方で、ISSB基準を早期採用した企業は14%にとどまった。様々な時間軸における気候関連リスクと機会の分析、財務的影響の定量化、移行計画の策定、スコープ3温室効果ガス排出量の開示などでは改善が見られたものの、業界横断的な気候指標や財務影響の定量化といったISSB特有の要求事項への対応は限定的だった。

EYのケン・オン氏は、企業がISSB基準への移行を成功させるために3つの重要な行動を提言している。第一に、気候変動が事業に与える真の影響を定量的・定性的の両面から理解すること。第二に、低炭素経済への移行を実現する強固な計画を策定すること。第三に、サステナビリティ部門だけでなく財務部門など組織全体でサステナビリティの知識を身につけることだ。

シンガポールでは中小上場企業のISSB対応に課題が残る。シンガポールビジネス連盟(SBF)が6月26日に発表した調査では、中小企業の84%が準備を進めているものの、自信をもって開示できると回答した企業はわずか4%にとどまった。SBFは中小企業への適用時期を1~2年延長するよう提言しており、ISSB基準への完全移行には企業規模に応じた段階的なアプローチが必要となる可能性がある。

【参照記事】How Singapore issuers can shift to ISSB-aligned climate reporting

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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