国連がSDGs報告レポートで報告、多くの目標で進捗停滞。貧困・飢餓は2015年より悪化の国も

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国連は7月14日、「The Sustainable Development Goals Report 2025」を発表した。2030年の達成期限まで残り5年となる中、報告書は多くの目標で進展が鈍化または後退していることを明らかにした。特に貧困撲滅(目標1)と飢餓ゼロ(目標2)については、一部の国で2015年の基準年よりも状況が悪化している。アントニオ・グテーレス国連事務総長は「SDGs達成には現在の数倍のスピードで行動を加速する必要がある」と警鐘を鳴らした。

報告書によると、進捗停滞の主要因はCOVID-19パンデミックの長期的影響、紛争の激化、気候変動、経済格差の拡大の4つ。気候変動(目標13)では世界的な気温上昇により異常気象や自然災害の頻度が増加し、生物多様性(目標15)では生態系破壊が続き多くの種が絶滅危惧に直面している。ジェンダー平等(目標5)においても、女性と少女に対する暴力や機会格差が依然として解消されていない。安全な飲料水と衛生環境へのアクセス(目標6)では、特に途上国と先進国間で大きな地域格差が存在することが確認された。

一方で、いくつかの分野では前進も見られた。再生可能エネルギーの普及(目標7)は世界的に加速しており、一部の国では教育へのアクセス(目標4)が大幅に改善した。報告書は45カ国で普遍的な電力アクセスを実現し、54カ国で顧みられない熱帯病を撲滅するなど、具体的な成功事例も紹介している。これらの事例は、適切な政策と投資により加速度的な進歩が可能であることを示している。

しかし、SDGsの進捗を正確に把握する上で深刻な課題も浮き彫りになった。報告書は、特に途上国において統計データの整備が遅れており、多くの指標で最新かつ信頼性の高いデータが不足していると指摘。この「データギャップ」が効果的な政策立案と進捗モニタリングを困難にしている。国連は200以上の国・地域のデータを基に本報告書を作成したが、全ての目標について包括的な評価を行うには依然として情報が不十分だという。

2030年までの目標達成に向けて、報告書は6つの優先分野での行動を提言している。食料システムの変革、エネルギーアクセスの拡大、デジタルトランスフォーメーションの推進、教育の質向上、雇用創出と社会的保護の強化、そして気候変動対策と生物多様性保全の統合的アプローチだ。特に官民連携の強化、革新的な資金調達メカニズムの開発、最新テクノロジーの活用が不可欠とされ、国際協力の抜本的な強化が求められている。

【参照記事】The Sustainable Development Goals Report 2025

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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