一般財団法人社会変革革推進財団(SIIF)は1月15日、「インパクト志向金融宣言」発足2年目の活動と進捗を取りまとめた「インパクト志向金融宣言プログレスレポート2023」を発刊した。同宣言は銀行、保険会社、運用機関、ベンチャーキャピタルなど様々な業種の金融機関が「金融を通じて環境・社会課題を解決する」という考え方に基づき、2021年11月に21社で発足。SIIFが事務局を務める。
発足時は21社だったが、レポートによると24年1月現在、署名金融機関68社、署名協力期間6社の計74社に拡大している。また、23年時点のインパクトファイナンス残高総額合計は10兆7240億円となり、昨年の3兆8500億円から約3倍に増加した。
残高が約3倍に増加している理由として、レポートは、インパクトファイナンスの残高が大きい大手金融機関(三井住友銀行、農林中央金庫、日本生命などがこの一年で新たに署名をしたこと、既存の大手金融機関(三菱UFJ銀行、みずほ銀行、SBI新生銀行、第一生命、かんぽ生命等)が残高を拡大したことを挙げる。公開された残高のうち、国内・海外の区分はほぼ半々、アセットクラス別は融資が過半を占めた。
最新のレポートは、「2023年〜2025年の中期計画」「インパクト志向金融経営とは」「インパクトファイナンスの定義/残高」「特別座談会インパクト志向金融宣言への期待〜なぜ今、金融がインパクトを志向すべきなのか〜」「2023年における企画チーム・分科会の活動」で構成。
このうち、特別座談会は、高倉透三井住友トラスト・ホールディングス株式会社取締役執行役社長、清水博日本生命保険相互会社代表取締役社長社長執行役員、田代桂子株式会社大和証券グループ本社取締役兼執行役副社長の対談を収録している。
企画チーム・分科会の活動では、「定義・算入基準」「インパクト測定・マネジメント(IMM)」「ソーシャル指標」「アセットオーナー・アセットマネジメント」「地域金融」「ベンチャーキャピタル」「海外連携」の7つの分科会・企画チームの進捗を紹介した。
同日、都内で行われたメディア報告会で、同宣言の今後の方向性が示された。この中で、同宣言は民間主導で発足、活動しているが、他方で官公庁が「インパクトコンソーシアム(IC)」を設立、インパクトファイナンスの参加機関のすそ野を広げようとしている動きを歓迎し、「建設的にICに協力していく」と官民の連携に意欲を見せた。
民間主導で取り組むべき課題・取組例として、インパクトファイナンス産業の構築、IMMの高度化・推進、基本的ガイダンスやガイドブックの作成を挙げた。また、アセットオーナーによるインパクトファイナンスへの投融資の参画参加が海外に比べ少ないことから、さらなるインパクトファイナンス普及の鍵となるアセットオーナー向けの取り組みを進める。
【関連サイト】インパクト志向金融宣言
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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