一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)は10月9日、神戸市が2017年7月に導入した糖尿病性腎症等の重症化予防の「ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)」事業が2020年3月に終了したことを受け、経済産業省と共同でまとめた総括レポートを公表した。本事業では、プログラム修了率、生活習慣改善率、腎機能低下抑制率の3つを成果指標として第三者評価機関が評価を行い、評価結果に応じた委託料を同市が支払うことにより、資金提供者に償還が行われた。評価指標のうち、プログラム修了率及び生活習慣改善率は目標値を大きく上回ったが、腎機能低下抑制率は目標値には到達しない結果となった。
SIBとは、民間資金を活用して革新的な社会課題解決型の事業を実施し、その事業成果(社会的コストの効率化部分)を支払の原資とすることを目指す官民連携の仕組み。米国ニューヨーク市などでは、民間事業者の活動の社会的インパクト(行政コスト削減等)を数値化し、自治体などがその成果報酬を支払うSIBの導入が図られ、民間資金の活用が進んでいる。初期投資を民間資金で賄い、成果報酬型の事業を実施するSIBは、複数年度に渡る事業として設計し、初期投資に大きな費用を要する予防的な事業に取り組む際に、特にその効果を期待することができる(経済産業省資料より)。
同市の「SIBを活用した糖尿病性腎症等重症化予防事業」は、糖尿病性腎症などの罹患者で将来人工透析に至るリスクが高い未受診および治療中断中の約100名を対象に、受診勧奨および保健指導により重症化を予防する事業。市民の健康寿命の延伸とクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の向上、医療費の適正化を目指し、日本初の本格的なSIB事業として実施された。SIIFは資金提供を行い、また、中間支援組織として案件の組成に携わった。
全ての成果指標を上回ることはできなかったものの、第三者評価機関が作成した最終成果評価報告書では、BMIなどの副次的評価項目がプログラム実施前より改善したため、本事業に一定の成果があることが確認された。また、総括レポートでは、資金提供者、中間支援組織の事業の参画により、サービス提供者における成果の創出や事業の質が向上したことを認識している。

SIIFは「対象者の設定や評価指標の設計など、日本初のSIB事業である本件を通じて得られた学びを活かし、他の地方自治体などの行政機関とも協働をしつつ、社会課題の解決に向けたSIBの推進に一層努めていく」としている。
【参照リリース】「神戸市におけるSIBを活用した糖尿病性腎症等重症化予防事業最終評価の公表について」
【関連サイト】一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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