科学的な知見に基づいた二酸化炭素排出量の削減目標の設定を企業に対して求めるSBTイニシアチブは10月1日、金融機関向けに初となるSBT(Science Based Targets:科学と整合した目標設定)フレームワークと検証サービスの提供を開始した。
SBTは、パリ協定(世界の気温上昇を産業革命前より2度を十分に下回る水準に抑え、また1.5度に抑えることを目指すもの)が求める水準と整合した、5年~15年先を目標年として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標のことだ。石炭やガスから医薬品まで、累積時価総額15.4兆米ドルにおよぶ50セクター約1,000社がSBTを採用し、パリ協定で定められた脱炭素を目指していたが、これまで銀行を始めとする金融機関が利用できるフレームワークは存在していなかった。
新たなサービスローンチにより、銀行や投資会社、保険会社などの金融機関は、自ら掲げる気候目標がパリ協定の目標に沿った内容となっているかを証明できるようになる。スイスのプライベートバンク J・サフラ・サラシン銀行、イギリスの国際的な銀行会社 スタンダードチャータード銀行、フランスの投資会社 Eurazeo、アメリカ最大の組合所有銀行 アマルガメーテッド銀行をはじめ、既に55の金融機関がSBTに取り組んでおり、SBTイニシアチブと協力の下で気候目標の検証に取り組むことが伝えられている。
SBTイニシアチブ運営委員会のメンバーであり、SBTイニシアチブのパートナーの1つである世界資源研究所(WRI)の所長であるCynthia Cummis氏は、次のように述べている。「今回の発表は、銀行やその他の金融機関が、貸付および投資活動と実体経済の排出量との関連をよりよく理解し、それに基づいて行動できるようになったことを意味します。金融セクターは現在、実質排出ゼロ経済への架け橋を築き、気候科学に基づいたシステム全体の改善を可能にすることができ、またそうしなければなりません。SBTiのフレームワークによって、金融機関は低炭素移行に貢献している企業に資本を振り向け、そうでない企業からは距離を置く必要があります。」
SBTイニシアチブは今回の金融機関向け検証サービスのパイロットフェーズとして最初の20機関については無料で評価を行い、同アセスメントから得られた知見は2021年4月のフレームワーク更新に活用される予定だ。
【参照記事】First opportunity for banks to receive stamp of approval on science-based climate targets
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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