ソーシャルインパクトボンドによる少年院出院者への学習支援事業が始動。公文教育研究会など3者協働で法務省委託事業を推進

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法務省はソーシャル・インパクト・ボンド(民間資金を活用した成果連動型民間委託契約方式、SIB)(以による非行少年への学習支援事業を開始する。国が主体となってSIBを活用する官民による初めての事業。9月3日、委託事業者として、株式会社公文教育研究会、学習支援や就労支援事業を展開する株式会社キズキ、一般社団法人もふもふネットの3社が採択された。

SIBは、あらかじめ合意した成果目標の達成度合いに応じて支払額が変わる成果連動型民間委託契約方式(PFS)の一類型で、外部の民間資金を活用した官民連携による社会課題解決の仕組み。2010年にイギリスで開発された社会的投資モデルで、社会課題を解決するサービスに、投資家が資金を提供してプログラムを実施、削減された財政支出などの事業成果に応じ、自治体などが投資家へ成果報酬を支払う。同事業ではプロセス指標とアウトカム指標の達成度合いに応じ、同省から事業者に成果報酬が支払われる。

関係者によると、日本の高等学校等への進学率は98.8%に上るが、少年院入院者の24.4%は中学校卒業後に高校に進学しておらず、また、少年院入院者の40.1%は高校を中退している。他方、少年院出院者の13.1%(同)は進学を希望しているものの、進学先が決まらないまま出院している。2019年に保護観察が終了した少年院仮退院者の再処分率は、学生・生徒だった者が11.8%だったのに対し、無職者は41.5%に上った。新たな再犯・再非行防止対策として、少年院出院者に対して個別の状況に合わせた基礎学力の習得を目指した学習支援が求められている。

事業期間は23年度までの3年間で、最大支払額は7122万円。成果に応じて支払額は変動する。株式会社三井住友銀行、株式会社日本政策投資銀行、株式会社CAMPFIREによるクラウドファンディングを含めた資金調達を受け、公文研究所の「KUMON」の学習コンテンツ、キズキの“寄り添い型”学習支援、もふもふネットの心理面や生活支援といった、各事業者の強みを活かした学習支援事業を推進していく。

公文研究所は「公文式学習法」の提供をはじめ、1977年から少年院への公文式導入の実績もある。もふもふネットは非行・犯罪・暴力の悪影響を低減させることを活動の目標に、グループワークなどの活動を中心に2013年にスタート。非行・犯罪行動を持つ者に対する支援と指導の専門的技術で、多くのプログラム参加者の心情の安定や価値観・態度を向社会的に向けることに成功している。活動拠点は大阪府。さらに、心理的なケアなど生活支援を行う外部専門家が参画、外部評価機関として特定非営利活動法人ソーシャル・バリュー・ジャパンが事業実施状況のモニタリングを行う。

支援対象者は、少年院出院後に東京や大阪に帰住する少年のうち高卒認定試験の受験を予定している人、高等学校への復学を希望している人など、実施期間を通じて80名程度を想定。支援期間は出院前1~2ヵ月と出院後1年以内。支援活動の内訳は学習支援計画の策定、少年院出院後の支援(学習環境の整備、学習支援の実施、継続的な対象者の状況把握と学習支援計画の見直しなど。今年8月から学習拠点・環境整備、研修を開始、9月に出院前の対象者への面接・アセスメント、初回学習支援計画作成、10月から出院後の対象者学習支援をスタートさせる。24年3月に最終成果のとりまとめ、報告を行う。

【参照リリース】株式会社キズキ「国内初!SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)による少年院出院者への学習支援事業が始動。株式会社キズキが参加する事業体が法務省委託事業を受託。」
【参照リリース】株式会社公文教育研究会「民間資金を活用したSIB方式による再犯防止分野での学習支援事業が始動」

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