急激に多様化するESG債券、見極めのポイントは?シュローダーがレポートで解説

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環境保全や社会貢献に効果のある事業を資金使途とする債券「ESG債券」。債券の市場でもESG(環境、社会、ガバナンス)の要素が拡大する中、シュローダーは6月8日に公開したレポートで「投資によるインパクトを実現していくためには慎重に投資対象を見極める選択眼を持つことが重要」と提言している。

ESG債券と呼ばれるグリーンボンド、ソーシャルボンド、サステナブル・ボンドなどの発行額は実際に増加している。米ムーディーズによると、2019年と2020年にこれらの債券発行は前年比約50%増となった。特に、ソーシャルボンドは新型コロナウイルス感染拡大への対応といった目的が加わったことで20年に発行が一気に増加、1000億米ドルを上回った。調達資金は新型コロナ危機からの回復やグリーン政策推進などに使用されることになる。

民間企業でもサステナブル・ボンドを発行する事例が増え、アパレル小売企業や食品飲料企業による初のサステナブル・ボンド発行も行われた。中でも気候変動問題への対応に向けた流れが強まる。第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)を今年11月に控え、21世紀後半に人為起源の温室効果ガス排出量を正味ゼロにするという目標に向けて、各国・企業がより積極的に取り組みを進めていくことは確実だ。

一方、グリーンボンドやソーシャルボンドは、環境・社会問題対応へのコミットメントをうたうものの、実質を伴わない「グリーンウォッシュ」の手段としてみなされ、投資対象から外されることもある。また、これまでグリーンボンドの多くは国による発行となっており、社債で行われるような同一基準に基づく比較や精査が行われてこなかったという課題もある。

シュローダーは「長期的な視点では、環境・社会問題対応への貢献をコミットし、また、目標を明確に債券の要件に含むことができるESG債は利点が大きい」とする。例えば、ESGを事業運営に取り入れている企業の場合環境税や環境関連規制の影響は受けにくくなることが考えられる。また、ビジネス慣行や運営が、安定した社会に向けて一貫性をもって貢献できれば、結果として企業業績が持続的に向上し、財務基盤が強固になることが期待できるという考え方だ。

こうした課題やリスクは、ESG債市場が成長するにつれ、解決する方向性が示されるようになるとシュローダーは見る。例えば、欧州連合(EU)は、2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロ(カーボン・ニュートラル)の実現、という目標達成に向けた欧州グリーンディール(脱炭素と経済成長の両立を図る一連の政策)の実施のため「EUタクソノミー」を制定し、グリーンボンド・スタンダードの確立を目指している。

ESG債を評価するにあたって一番重要な要素として、同社は「債券発行によって調達された資金の活用によるインパクトの大きさ」と指摘する。債券の枠組み、環境・社会関連目標、体系的なモニタリングについて詳細に分析を実施し、インパクトの効果を見積もる。さらに、インパクト分析に通常の債券で行うバリュエーション分析やクレジットリスク分析を組み合わせることによって、対象ESG債の最終的な評価が可能となる、という見解を示す。

インパクト分析については「ベンチマークを設定せず、ポートフォリオ・マネジメントの投資判断とは独立して行うことが効果的」とする。インパクト分析を切り離し、独立させることで、ポートフォリオ・マネジャーが「自分の宿題の採点を自分で行うこと(有利な自己評価)」によるリスクを低減できるためだ。また、ベンチマークを設定しないことで、サステナビリティや気候変動対応基準、もしくは発行体のサステナビリティ行動規範に対する信頼性に基づいて、投資対象を純粋にボトムアップで設定することができ、ベンチマークにおける比率やベンチマークに対する相対評価を行う必要もなくなる、とする。綿密なインパクト分析を実施し、分散効果の高い頑健なポートフォリオ構築を行うことで「ESG債のメリットを最大限に享受できる」というのが同社の意見だ。

【関連サイト】シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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