日本生命保険相互会社は10月21日、世界銀行グループの国際復興開発銀行(IBRD)が発行するサステナブル・ディベロップメント・ボンドに1.5億豪ドル(約114億円)を投資したと公表した。栄養問題を重要なテーマとして発行される世界銀行グループで初めての債券で、同社としても初めての投資となる。
IBRDは1945年に設立された単一機関としては世界最大の国際開発金融機関です。中所得国および信用力のある貧困国に対し、融資や保証、分析・助言サービスなどを提供し、持続可能な開発を推進することで、これらの国の貧困を削減することを目指している。世界的に深刻化している栄養問題(低栄養、肥満問題)は、途上国における乳幼児の死亡率や成人後の貧困率の高さ、保健医療コストの増大によって経済や人的資本に多大な影響を及ぼしている。加えて、新型コロナウイルスの感染拡大により、食料のサプライチェーンの寸断や感染時の重症化リスクの上昇も指摘され、喫緊の課題となっている。
同社は環境や地域・社会と共生し、経済・企業と安定的な成長を共有していく観点から、環境問題の解決や社会貢献に資する ESG (環境・社会・企業統治)投融資を積極的に実施しており、SDGs(持続可能な開発目標) の達成に貢献する当債券への投資もその一つと位置付けている。2017年~2020年の中期経営計画「全・進-next stage-」では「人生 100 年時代をリードする日本生命グループに成る」ことをスローガンに掲げ、従来の保険の域を超えた「保険+α」の価値を提供することを目指し、ヘルスケア領域にも積極的に取り組んできた。今回の投資を「栄養問題への取り組みを後押しできることから当社の取り組みとも合致する」と説明する。
栄養問題のうち、低栄養は乳幼児の死亡率を大きく高めるうえ、将来的な学習能力や所得の低下、貧困からの脱却、ひいては、経済全体にも悪影響を与えるとされている。推計では、慢性的な低栄養状態の指標である発育阻害を減らすことにより、アジア・アフリカ地域の GDP が4~11%増加すると考えられる。
肥満は高所得国のみの問題ではなく、低・中所得国においても、栄養価の低い加工食品が非加工食品よりも安価なことなどを理由とした不健康な食生活によって急増しており、肥満状態の人口の大多数(70%以上)は低・中所得国にいるとされる。IBRD は、こうした栄養問題に対処すべく、政策立案やプログラムの設計などの技術支援、栄養介入策の拡充などを通じた途上国政府の支援に加え、食料を入手できない家庭に対する栄養価の高い食料の配布、低栄養状態の子どもの特定の強化などを行っている。調達した資金はこうした活動に充てられる予定。
日本生命は、70兆円を運用する生保大手であるとともに、国内有数の機関投資家という側面も持つ。今月、社会的な課題への取り組みを重視して投資先を選ぶ「ESG(環境・社会・企業統治)投資」の手法をすべての投資や融資の判断に導入すると表明。ESGの観点で評価が高い企業は高い運用益が得られるという世界的潮流の中、同社もESG投資の手法を全面的に導入することで、運用の収益性を高める狙い。一方で低評価な企業に対しては投資や融資を減らす可能性もあるといい、国内のESG投資に影響を与えそうだ。
【参照リリース】日本生命保険相互会社「世界銀行(国際復興開発銀行)が発行するサステナブル・ディベロップメント・ボンドへの投資について」
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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