一般社団法人 東の食の会は、7月6日、一般財団法人 社会変革推進財団(SIIF)、浪江町役場農林水産課と協力して、漁業・農業関係者を対象としたマーケティング講座「ふくしまFarmer’s & Fisherman’s Camp in 浪江町」を開催した。参加人数は40名を超え、参加者同士での交流も活発に行われた。
同講座は、資金分配団体であるSIIFより2020年度の休眠預金等活用制度の採択先に選出された東の食の会が、福島県内の漁業・農業の復興を目指す活動の一環として、県内の漁業・農業従事者がポジティブなブランディング、ストーリーの発信等のノウハウを活用していくことでヒット商品を生み出し、域外の販路を拡大していくことや、参加者同士のつながりを創出・強化することなどを企図して開催された。
講師は、東の食の会 専務理事 福島県浜通り地域代表の高橋大就氏が務め、「マーケティングの基礎」をテーマに、「誰が、何のために、あなたの商品を買うのか?」という問いからスタートし、セグメント・ターゲティング・顧客ニーズ・提供価値・4P戦略といったマーケティングの基礎となる視点、東の食の会と岩手缶詰株式会社が共同開発し累計製造1,000万缶を突破した「Ça va(サヴァ)?缶」のマーケティング事例、社会的価値やSNSプロモーションといった最新のマーケティングトピックなどをレクチャーした。
また、講座後半では実際にマーケティングの手法を使い、自社を分析し戦略の方向性を導き出すフレームワークの実習や参加者による発表・フィードバックなども行われた。食だけでなく花きやライブハウスなどの事業分野でも発表が行われ、発表後には参加者同士のフィードバックに加え、高橋氏からは顧客視点で考える大切さやターゲットやニーズを絞り込む重要さ、各事業での実際の絞り込み方、自社の商品の魅力を言語化する大切さなど具体的に踏み込んだアドバイスが見られた。
講師を務めた高橋氏は、「これだけの福島県の事業者の方が集まってくださって感慨深い。今回の場から新しいことが起こりそうな予感がしており、非常にわくわくしている」と活動の広がりへ期待を寄せた。また、今後については「コロナ禍の現在は、地域にとって大きなチャンス。福島からポジティブなニュースメッセージをどんどん発信していくことで、ヒーロー生産者・ヒット商品を生み出していきたい」と意気込みを述べた。
SIIF専務理事の青柳氏は、今回の講座の様子を見て、「我々の想定以上に人が集まっている。福島県内から分野の垣根を超えて様々な事業者の方が集まって下さっており、福島をあげてリブランディングしていこうという熱量が感じられる。非常に良いスタートが切れた」と手応えを語った。また、今後の展望については「福島では今年、福島第一原発の処理水放出という漁業・水産業にとっての逆境が待ち受けているが、東の食の会の活動を通じて民間主導でその逆境をはねのけていけるのではないかと期待している」と述べた。
今後、東の食の会とSIIFは広報面での連携を強化。戦略的なPRや同会の活動を全国に発信するとしている。
東の食の会は、「東の食に、日本の力を。東の食を、日本の力に。」をモットーに、東日本大震災によって被害を受けた東日本の食産業の長期的支援を目的として2011年に創設された一般社団法人。東北の食の販路開拓や、商品プロデュース、人材育成を行い、当初の5年間で約150億円の流通総額を創出することに成功している。これまで累計600万缶、20億円以上を売り上げている岩手発のサバの缶詰「サヴァ缶」や、スーパー海藻「アカモク」、福島の寄付つきドライフルーツ「りんごポリフェノールのチカラ」、福島の伝統的漬け床三五八(さごはち)」をリブランディングした「358 (サゴハチ)」といった商品開発のプロデュースを行い、東北の食からヒット商品を生み出している。
SIIFは2014年から、社会や環境に与えた変化や効果を可視化する「社会的インパクト評価」を実践してきた。目標は「社会的・経済的資源循環のエコシステムビルダーとして、社会課題解決と多様な価値創造が自律的・持続的に起こる社会」。19年度から連続して休眠預金等活用制度における資金分配団体に採択されている。採択された団体が各地域において重要な社会的役割を担う事業を複数の企業・団体が協力して集合的に地域課題に持続可能な形で維持させることにより、地域社会における活力低下に歯止めをかけることを目指す。事業や活動の結果として生じた社会的・環境的な変化や効果(アウトカム)を定量的・定性的に把握し、事業や活動について価値判断を加える「社会的インパクト評価」など、事業の成功に必要な経営支援を伴走しながら提供していく。
【関連サイト】一般社団法人 東の食の会
【関連サイト】一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)
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