一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)は9月14日、インパクト投資に対する金融市場関係者と行政の理解を深め、国内外の社会課題解決に向けた取り組みの意義と課題を議論する「インパクト投資に関する勉強会」の第2回目の内容を公開した。2回目は9月3日、オンラインで開催。第1回目の勉強会ではインパクト投資の取り組みの経験や立ち位置の多様性や金融商品の違いによる差異・特性が浮き彫りになった。このため、2回目の実施を前に、どのような取り組み・立場が存在し、多様性にはどのような背景があるのかをより俯瞰的に理解することを目指し、すべての委員(35人)を対象に、インパクト投資におけるこれまでの取り組みや考え方に関するアンケートを実施した。
座長・副座長を除いた33人全員が回答。その結果、リスク・リターン・インパクトや受託者責任をどう理解するかについては多様な意見があったのに対し、インパクト評価については、「課題がある」という意見で一致していた。また、個人の見解と会社の立場は違うことも浮き彫りになった。
アンケートは「取り組み」「立ち位置」「受託者責任」「インパクト評価」という観点から分析。まず、取り組みについては①具体的取り組みを実施していない会社・機関は少数派であり、「金融商品の組成・販売」が一番多いが、その他も多様な取り組みがなされている。具体的な取り組みとしては、未公開ファンド、融資、上場株式投信が多い②今後の方向性としては、インパクトの把握・改善、創出、商品の組成・販売が重要と考えられている③未公開ファンド、融資、上場株式投信などの採用を検討する企業が多いーことが明らかになった。
立ち位置では、会社の立ち位置、個人としての見解のいずれも、通常と同程度のリスク・リターンで高いインパクトを追求していた。個人として、現状に比しては、「インパクトの追求によりリスク・リターンを改善させる」方針をとるべきという意見が多かった。受託者責任については①リターン改善のためのインパクト考慮は認められるという意見が一番多い。次いで、サステナビリティ選好、同等リターンの場合、ユニバーサルオーナーの立場はインパクト考慮を認めうる、との意見となっている。一方機関投資家のあるべき姿を示した指針「スチュワードシップコード」については過半が署名をしておらず、署名機関の中でもインパクト投資への影響は不明との声が多い結果となった。
重点であるインパクト評価に関しては、インパクト評価が行われている場合にも課題があり、評価自体不十分という声も多い。課題を感じていない会社・機関は皆無だが、「よくわからない」という回答も多く、普及途上の課題も浮かび上がった。このほか、独自の評価、外部ツールをアレンジした場合、双方において課題を感じていること、現状は、定性的、比較検討しない又は同種のプロジェクト間での比較のみの評価が多いことがわかった。これらを受け、今後は、同種のプロジェクト間での比較可能性を求める意見が多かった。
アンケートの結果を受けて、勉強会当日は①リスク・リターン・インパクトの関係についての立ち位置について②国際的整合性を重視すべきか、日本独自の特徴・案件を配慮するべきか③インパクト投資発展のためにインパクト評価に何が求められるか④インパクト投資推進のために必要な取り組み・施策は何があるか――の4点で議論を深めた。
同勉強会の事務局であるSIIFは「アンケートは実際にインパクト投資に携わっている方、金融機関関係者、事業者からなる委員の意見の集約なので、その点でも意味がある」とコメント。「多様な参加者のニーズをすべて満たすことはなかなか難問だが、今後も運営を工夫しながら次回以降の勉強会も運営していければ」としている。第3回は11月の開催予定。
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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