公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は9月25日、温室効果ガスの削減に取り組む企業への重点的な投資を開始したと発表した。新規の投資額は約1.2兆円。
GPIFは環境・社会問題などの負の影響を減らし、運用資産全体の長期的なリターンを向上させるためとして、ESG(環境・社会・ガバナンス)を考慮した投資を推進中。特に気候変動を中心とした環境問題を重視する方針で、2017年11月からグローバル株式を対象とする環境株式指数の公募・選定を行ってきた。
このほど2つのグローバル環境株式指数を採用、その指数に基づくパッシブ運用を開始した。採用した指数は国内株を対象とした「S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数」と外国株対象の「S&Pグローバル大中型株カーボン・エフィシェント指数」。
S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数の採用対象は、東証プライム上場企業全社(一部の低流動性銘柄等を除く)で、一般的なESG指数に比べて、幅広い企業が対象となっている。
主要上場企業の温室効果ガス排出量の大部分を公益事業、素材、エネルギーなどが占める中、海外の年金基金では環境負荷の大きい企業からのダイベストメント(投資撤退)を行うケースもある。
しかし、GPIFは「こうした産業で作られたエネルギーや素材などを使うことで成立する産業が多い」と指摘。また「サプライチェーン全体で温室効果ガス排出量を捕捉することに限界がある現状においては、むしろ同業種内での競争原理を働かせることにより、気候変動リスクを抑制していくことの意義は大きい」との姿勢。
今回の投資の実行で、GPIFが採用しているESG指数への投資額は約2兆7000億円となった。今後については、「次世代の被保険者の皆様に必要な積立金を確保するため、これからもESG投資に積極的に取り組んでいく」としている。
GPIFは厚生年金保険事業及び国民年金事業の安定に資することを目的としている組織で、平成30年度6月末現在で運用残高は158兆5,800億円、累積収益額は66兆640億円、収益率は年率3.18%となっている。運用規模の大きさから「世界最大の機関投資家」とも呼ばれ、全世界の注目を集める存在だ。
今回のようにGPIFがESG投資に積極的なスタンスを示して投資を行うことは、単にESGに取り組む企業に資金が流入するだけでなく、その他の機関投資家の投資行動にも大きく影響を与える可能性があり、ESG投資全体に大きなインパクトがあると考えられる。
【参考記事】GPIF「グローバル環境株式指数の選定結果について(PDF)」

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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