欧州委員会、EUタクソノミーの企業負担を大幅削減へ。報告データ最大89%削減

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欧州委員会は7月4日、EUタクソノミー(EU分類規則)の適用を簡素化する一連の措置を採択した。これにより、EU域内企業の管理負担が軽減され、中核的な気候・環境目標を維持しながらEUの競争力強化を図る。非金融企業では報告データポイントを64%、金融企業では89%削減するなど、大幅な簡素化が実現する。

主な簡素化措置として、金融・非金融企業は事業にとって財務的に重要でない経済活動について、タクソノミー適格性および整合性の評価が免除される。非金融企業の場合、総収益、資本支出(CapEx)、または運営支出(OpEx)の10%未満の活動は非重要とみなされる。この措置により、企業は中核事業活動の報告と資金調達、そして移行への貢献に集中できるようになる。

金融企業については、銀行のグリーン資産比率(GAR)などの主要業績指標が簡素化され、2年間は詳細なタクソノミーKPIの報告を行わないオプションが付与される。また、化学物質の使用と存在に関連する「汚染防止と管理に重大な害を与えない」基準も簡素化される。

マリア・ルイス・アルブケルケ欧州委員(金融サービス・貯蓄投資同盟担当)は「我々のグリーンな野心と競争力のニーズは手を携えて発展しなければならない。今日、我々は成長により配慮し、使いやすく、比例的な持続可能な金融フレームワークに向けた決定的な一歩を踏み出した」と述べた。同委員は、今回の措置が企業の過度な管理負担を軽減しながら、持続可能な経済への移行という長期目標を維持する適切なバランスを取ったと強調した。

これらの変更は、タクソノミー開示、気候および環境委任法を修正する委任法の形で採択された。欧州委員会は2025年2月に「オムニバスI」パッケージの一部として、この委任法の草案を公表し、関係者からのフィードバックを受け付けていた。今後、欧州議会と理事会での審査期間(4か月、最長6か月まで延長可能)を経て、簡素化措置は2026年1月1日から適用され、2025会計年度を対象とする。ただし、企業は利便性を考慮して2026会計年度から適用することも選択できる。

EUタクソノミーは2020年に発効し、2022年から報告要件が適用されている。金融・非金融企業に共通の持続可能性基準を提供することで、欧州グリーンディール目標に沿ったEU経済の持続可能な移行に貢献する投資を支援してきた。今回の簡素化により、制度の実効性を保ちながら企業の負担を大幅に軽減し、EUの産業競争力強化につなげる狙いがある。

【参照記事】Commission to cut EU Taxonomy red tape for companies

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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