欧州連合(EU)の一般裁判所は9月10日、原子力発電と天然ガスを条件付きで持続可能な投資対象として認定するEUタクソノミー規則について、オーストリアが提起した取り消し訴訟を棄却した。これにより、欧州委員会が2022年に採択した、原発と天然ガスを気候変動対策に貢献する経済活動として分類する委任規則の有効性が確認された。
裁判所は判決の中で、欧州委員会が原子力発電について「温室効果ガスの排出量がほぼゼロである」と判断し、現時点では再生可能エネルギーなど十分な規模の低炭素代替手段が技術的・経済的に実現可能でないとした見解を支持した。また、原発の通常運転に伴うリスクや重大な原子炉事故、高レベル放射性廃棄物についても、委員会は既存の規制枠組みを超える保護レベルを要求する義務はないと判断した。オーストリアが主張した干ばつや気候災害による原子力エネルギーへの悪影響については、「推測的すぎる」として退けられた。
EUタクソノミー規則は、2050年までの気候中立達成を目指し、持続可能な活動への資金誘導を促進する枠組みとして2020年に制定された。当初は再生可能エネルギー分野の技術的スクリーニング基準が2021年に策定されたが、その後2022年3月に原発と天然ガスを含める委任規則が追加採択された際、オーストリアは強く反発していた。今回の訴訟では、ルクセンブルクがオーストリアを支持し、ブルガリア、チェコ、フランス、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スロベニア、スロバキア、フィンランドが欧州委員会側を支持する形で、EU加盟国間の立場の相違が鮮明になった。
裁判所は、原発と天然ガスセクターの経済活動が「一定の条件下で気候変動の緩和と適応に実質的に貢献できる」との見解を示し、2022年委任規則のアプローチを「エネルギー供給の安全保障を確保しながら、段階的に温室効果ガス排出を削減する漸進的なアプローチ」と評価した。この判決に対しては、今後2か月と10日以内に法的論点に限定して欧州司法裁判所への上訴が可能となっている。
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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