環境省は4月3日から、ESG(環境・社会、企業統治)地域金融に取り組もうとする金融機関向けの手引き「ESG地域金融実践ガイド」を同省ホームページで公表している。
ESGを考慮した資金の流れが世界的にかつ急速に広がる中、海外では直接金融が中心となりESG金融を推進させているのに対し、日本では間接金融による資金調達の割合が大きいことから、同省は地域金融機関を地域の核として、地域の持続可能性の向上に資するESG地域金融の実践を促進する。地域の持続性の向上や地域循環共生圏の創出に資するESG金融促進を図るべく「地域におけるESG金融促進事業」で9機関の支援を実施、支援結果から同ガイドを策定した。ESG地域金融実践におけるステークホルダーとの連携手法や、取り組みにあたってのポイントなどを4部構成(ESG地域金融に取り組む必要性、実践ガイド、支援先事例(9件、参考資料)で解説している。
同省では並行して都市銀行、地方銀行、信用金庫等の金融機関を対象に、ESG金融の取扱状況に関する調査を実施、調査結果を同ガイドと同日に公表している。国内では初めてという調査からは、多くの金融機関がESG/SDGsの取組を将来的な成長領域と認識しながら、顧客開拓やリスク低減といった自身の利益に直結するという共通の認識を持つまでには至らないなど、課題も浮かび上がっている。
調査は2019年11月~2020年1月にアンケートとヒアリングで行い、回答率は51.5%。 ESG要素を考慮した取り組み状況及び投融資の実績では、56%の金融機関は環境・社会に好影響を与える案件組成に向けて多様な取り組みを行っていた。とくに89%の金融機関が再生可能エネルギー発電事業向け融資を実施しており、再生可能エネルギー、とりわけ事業用太陽光発電の実績が先行している。また、 92%の金融機関がESG/SDGsを認識しており、75%の金融機関は、環境・社会に好影響を与える事業を成長領域と認識していた。25%程度の金融機関は、優先的に取り組むべきSDGsや課題の決定、またはSDGs宣言の表明をしていた。
一方で、ESG融資方針の策定の必要性を55%が感じているが、実際に策定済みだったのは7%にとどまっている。ESG/SDGsに取り組む部門を設置した金融機関も12%と少数で、26%の金融機関は、ESG要素を考慮した案件組成のため、担当者(兼務を含む)の配置や専門部署の設置をした一方、評価・モニタリングのため同様の体制整備を図ったのは8%と、ESG金融の実践に向けた体制整備はようやく緒に就いた段階といえる。
融資にあたって、ESG要素に考慮した評価・モニタリングは31%の金融機関が実施。もっとも、多くの場合明確なルールはなく、案件ごとに担当者の判断に委ねられているのが現状だ。このほか「事業の成長性やリスクにつながるESG関連項目を明確に確認することはできていない」「 金融機関内には、環境へのインパクトなどを正確に把握するための知見がない」など、ノウハウや知見はまだまだ不足している。
同省は。ESG金融を組織として実践するための4つの課題として「金融業務における理解の促進」「取り組む項目の明確化」「ノウハウの構築」「組織体制の整備」を挙げる。小泉進次郎環境相は定例会見で「ESG地域金融は、地域資源を生かして地域課題を解決する中で、新たなビジネスチャンスの発掘や地域経済の持続可能な発展につながるもの。ガイドを一つの道しるべとして、本業として真正面から実践に取り組んでもらいたい」と推進姿勢を強調した。
【参照リリース】環境省「ESG地域金融実践ガイド」の公表について」
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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