日本初、社会貢献をブロックチェーンで可視化する「actcoin」創業者が目指す未来とは?

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道端に落ちているゴミを拾ってみる。コンビニでもらったお釣りを募金箱に入れてみる。休日に地元のボランティアに参加してみる。日常のなかでできるほんの小さなアクションも、積み重なれば世界を変える大きな原動力となる。

しかし、現状ではそれらの社会貢献活動に誰がどれだけ取り組んでいるのかを測る指標は存在しない。社会貢献には、仕事とは違って給料や役職といった明確な基準もなく、どれだけよいことに取り組んでいてもなかなか評価されることはない。人知れず寄付やボランティアに参加している人ならなおさらそうだろう。

そんな状況を改善するべく、ブロックチェーンを使って個人の社会貢献活動を可視化し、ソーシャルアクター(社会貢献活動に取り組む人)を一人でも増やすことを目指しているプロジェクトがある。それが、ソーシャルアクションカンパニー株式会社が開発を手がける「actcoin(アクトコイン)」だ。

actcoinは、ブロックチェーン上に個人の社会貢献活動を記録し、企業・NPOが提供するプロジェクトへのボランティア参加や寄付、活動のSNSシェアなどアクションを起こすたびに独自のトークンが付与されるという日本初のサービスだ。トークンの総発行枚数は2030億枚で、1actcoin=1円と定義されている。

IT技術を活用した社会貢献サービスの開発に取り組むソーシャルアクションカンパニーが、非営利組織の支援に取り組む⽇本財団の CANPAN プロジェクトと連携することで実現した。2018年12月にはまずiOS版アプリからリリース予定となっている。

ユーザーは、actcoinに登録すると、教育、福祉、国際協力など様々なテーマで活動しているNPOのプロジェクトに参加したり寄付をしたりすることができる。アプリ内で表示されるNPOは日本財団CANPANプロジェクトのデータベースに登録されている団体のうち情報開示レベルが高い団体のみに限定されており、信頼性が担保されている。また、各プロジェクトはSDGs(持続可能な開発⽬標)にも対応しており、17 の⽬標から興味のあるテーマに沿って検索可能だ。

actcoinを通じてボランティアやセミナーに参加すると、1時間あたり1,000コイン。プロジェクトをフェイスブックやツイッターなどSNS でシェアすると 100 コイン、団体へ寄付すると寄付⾦額の 10%分のコインをもらえる仕組みとなっており、ユーザーは自身のダッシュボードでコインの保有数やこれまでの社会貢献活動履歴を見ることができる。そして、そのデータは他のユーザーにも公開されており、ユーザーはお互いにその人がどんなプロジェクトにどれだけ参加し、どれだけコインを保有しているのかが一目で分かるようになっている。

actcoinの画面

当初は獲得したコインは個⼈の社会貢献活動を可視化するためだけに存在しており、購⼊したり換⾦したりすることはできないものの、いずれは蓄積したコインを 1 コインあたり 1 円相当の価値で⾮営利団体へ寄付したり、環境や社会に配慮した商品と交換できる仕組みが用意される予定だという。

今回、IDEAS FOR GOODでは、actcoinの開発元であるソーシャルアクションカンパニーの創業者兼CEOを務める佐藤正隆氏に、actcoinの仕組みや目指している世界観について話をお伺いしてきた。

「ありがとう」を可視化したい

Q:actcoinを開発しようと思ったきっかけは?

私はもともと2016年ごろからリタワークスという会社で非営利組織向けのサービスの開発に取り組んでいました。そのときお手伝いに来てくださっていた元・大手メーカー出身の方がいたのですが、その方は早期退職する前は企業のCSR部門で働いており、会社を辞めた後はボランティアに取り組んでいました。その方と話をするなかで、社会貢献の領域では当事者同士では「ありがとう」が積みあがっているものの、それが見える化されておらず、証明する資産が何もないことに気づきました。

例えば預金通帳であれば、何も言わなくても数字を見ればいくら入っているかを証明できますが、「人にどれだけよいことをしたか」「どれだけ社会に貢献をしたか」といったことは可視化されていません。そのため、そうした社会貢献活動を定量化できたらよいなと思ったのがそもそものきっかけです。

Q:なぜブロックチェーンを使おうと思ったのか?

上記のように社会貢献活動を見える化したいという気持ちを持っていたのですが、2017年の後半ごろにブロックチェーン技術と出会い、ブロックチェーンであればやりたいことが実現できそうだと感じたのがきっかけです。そこからはあっと言う間で、2018年5月に新しい会社「ソーシャルアクションカンパニー」を設立し、今に至ります。

ソーシャルアクションカンパニー代表取締役・佐藤正隆氏

Q:将来的にactcoinでの寄付や商品購入を可能にするとのことだが、どのように原資を確保するのか?

サービスをローンチしてからしばらくは、コインはあくまで社会貢献活動を定量化するためのものとして存在し、それらを買ったり使ったりすることはできません。ボランティアプロジェクトに参加したり寄付したりすると無料でもらえるポイントというイメージです。

しかし、2019年には大きなアップデートを行い、コインを使った寄付や環境・社会に配慮された商品の購入をできるようにする予定です。そのための原資は、財団を創り、財団から寄付をするという形をとります。

財団の原資は、今すでに存在する非営利組織と連携するかもしれませんし、自分たちでクラウドファンディングなどのいろんなファンドレイジングを駆使して集めるかもしれません。また、企業がお金を出す可能性もあります。実際に、すでにある企業からは財団に関わりたいという声もいただいています。

actcoinが、NPOの情報開示レベルを引き上げるインセンティブに。

Q:ユーザーはどのようなNPOのプロジェクトに参加できるのか?

日本財団CANPANプロジェクトが保有している日本全国のNPOデータベースとactcoinのデータベースがAPIで連携しており、日本財団のデータベースの中から情報開示レベルが5段階で4以上の団体がactcoinに自動反映される仕組みとなっています。現在、日本全国にはNPOが5万団体ほどありますが、情報開示レベルが4以上の団体は2,100団体ほどです。

日本財団が運営するCANPAN。情報開示度(1~5)に基づきNPOの検索ができる。

Q:信頼できる団体のプロジェクトのみに限定されるということですね。

私たちは、actcoinにプロジェクト掲載を希望する団体は情報開示が必須、というスタンスで取り組んでいます。将来的にactcoinのユーザーが増え、コインで寄付ができるようになれば、情報開示レベルを4まで高めてactcoinを使おうとする団体が増えてくるはずです。

現状の2,100団体という数字はCANPANプロジェクトとしても増やしていきたいという意向があり、actcoinの存在によって情報開示に取り組むNPOが増えていけば、より社会にインパクトが与えられるのではないかと思います。

また、ゆくゆくは情報開示レベルだけではなく、グッドガバナンス認証などの第三者認証を受けているNPOはアプリ内で積極的に推していくといった仕組みも用意できればと考えています。

すべての社会貢献活動を集約させる。

Q:掲載団体以外での社会貢献活動ではactcoinはもらえないのか?

actcoinの目的は個人の社会貢献活動を可視化することにありますので、アプリ内に掲載されていない団体に寄付をするときも、その寄付を証明できるようにしています。例えば、actcoinに掲載されていないクラウドファンディングを支援したいときは、その寄付金額が書かれた領収書の写真をアプリにアップロードし、申請できるようにすることで、アプリ外の社会貢献活動もactcoinに集約できるようにする予定です。

アクションを起こした人が報われる仕組みに。

Q:アプリを創るうえで大事にしたことは?

actcoinのダッシュボードでは、どのユーザーの活動状況もすべて見られるようになっています。例えば佐藤さんがこれだけコインを持っている、こんなプロジェクトをやっている、という中身が全てわかります。

こうすることで、ユーザーは自分の活動成果が可視化されたダッシュボードを見て社会貢献に対するモチベーションを高めるだけではなく、人とのつながりから興味のあるプロジェクトを探すこともできるようになります。将来的には友達のフォローや通知機能の実装なども考えています。

また、actcoinのなかでは、お金を持っている人も持っていない人も平等に扱われるように心がけて設計しています。例えば、お金持ちの人が寄付だけをしてコインを集めていても、その人は「プロジェクトには参加していない」「時間は割いていない」ということがダッシュボードで分かってしまいます。

加えて、actcoinは1時間のプロジェクトに参加すると1,000コインもらえる仕組みになっており、寄付するとその金額の10%に相当するコインがもらえる仕組みとなっています。つまり、1万円の寄付と1時間のプロジェクト参加が同じ価値だということです。もちろん寄付も大切なのですが、それ以上に実際に社会参加することに価値の重きを置いています。

みんなのリテラシーを高め、ソーシャルアクターを増やしたい。

Q:最終的に実現したい世界観は?

最終的には、貯金はなくてもコインは持っているからそれが信用になる、といった状態を創りたいですね。今は週5日を会社で働いて給料をもらうのが当たり前ですが、いつかは会社から給料をもらうのは週4日で、残りの週1日はactcoinで活動して、商品を交換して生きていくみたいな生き方が当たり前になるといいなと。

また、actcoinを通じて、少しでもみんなの社会的なリテラシーが高まり、社会をもっとよくしていこうというソーシャルアクターが増えると良いなと思っています。actcoinを通じて消費者、生活者のリテラシーが高まっていけば、企業の考え方も変わり、世の中に出回る商品も、飲食店も、教育も、全てが変わるのではないでしょうか。

開設したばかりの渋谷オフィスにて。

インタビュー後記

個人の社会貢献活動をブロックチェーンで可視化するという、非常に先進的でユニークなプロジェクト、actcoin。佐藤氏が思い描く世界観には、共感できる点が数多くあった。社会貢献度が定量化され、それが信用となり、評価につながる社会を創り出すことができれば、人々は自然とお金を稼ぐのと同じ気持ちで社会貢献に取り組むようになるはずだ。

また、actcoinに参加できるNPOの基準に情報開示レベルを置くことで、actcoinのプラットフォームがユーザー数を増やして価値を帯びれば帯びるほど、NPOにとっては情報開示の強化に取り組むインセンティブが生まれ、結果としてNPOセクターの信頼性が高まり、個人や企業とNPOとの連携も生まれやすくなる、という点は非常によい仕組みだと感じた。

actcoinが正式に動き出すのは来年となりそうだが、佐藤氏のもとにはすでに100を超える企業や団体から参画の問い合わせが舞い込んでいるという。また、12月20日には講談社が発行する女性向けマガジン「FRaU」が女性誌として初の試みとなるSDGs特集号を発売するのに合わせ、actcoinが「FRaU×SDGsプロジェクト」のソーシャルインパクトパートナーとなることを発表するなど、他企業とのコラボレーションも展開が始まっている。

今後、actcoinがどのように発展し、ユーザーとともに新たな価値の指標を創り上げていくのか。これからの展開がとても楽しみだ。

【参照サイト】actcoin

(※IDEAS FOR GOOD「日本初、社会貢献をブロックチェーンで可視化する「actcoin」創業者が目指す未来とは?」より転載)

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HEDGE GUIDE 編集部 Web3・ブロックチェーンチーム

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