Xpansiv(エクスパンシブ)とは?世界最大の環境価値取引所の特徴と最新動向

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一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

  1. Xpansiv(エクスパンシブ)とは
    1-1. Xpansiv(エクスパンシブ)の概要
    1-2. Xpansiv(エクスパンシブ)が注目される背景
  2. Xpansiv(エクスパンシブ)の特徴
    2-1. 世界最大規模
    2-2. 多様な環境価値商品の取り扱い
    2-3. ブロックチェーンテクノロジーの活用
    2-4. デジタル証書の導入
    2-5. 国際的な取引対応
    2-6. 大企業とのパートナーシップ
    2-7. 環境影響の見える化とデータ分析
  3. Xpansiv(エクスパンシブ)の最新の動向
    3-1. JCEXとの提携
    3-2. アラムコ・ベンチャーズ主導の資金調達
  4. まとめ

カーボンニュートラル達成に向けた企業の脱炭素活動が加速している中、「Xpansiv(エクスパンシブ)」がそのサポート役として注目されています。

Xpansivは、世界最大の環境価値取引所として、カーボンクレジットや再生可能エネルギー証書(REC)といった環境価値をデジタル化し、企業や投資家が効率的に取引できる環境を提供しています。

世界中で脱炭素が推進されている中、今や企業にとって脱炭素経営は最優先事項の一つとして位置づけられているため、その手段として有効な環境価値を取引できるプラットフォームは今後ますますその重要性を増していくと考えられます。そこで今回は、環境価値スポット取引所「Xpansiv」について、その概要や特徴、また最新の動向などを詳しく解説していきます。

1. Xpansiv(エクスパンシブ)とは

1-1. Xpansiv(エクスパンシブ)の概要

引用:Xpansiv

Xpansivは、ニューヨークを拠点に環境価値取引所「CBLマーケット」を運営しています。この取引所では、カーボンクレジットや再生可能エネルギー証書(I-REC)の取引が行われており、企業や投資家に効率的な取引環境を提供しています。さらに、S&P Global Plattsとの提携を通じて、クレジットのトークン化や価格の透明性の向上にも取り組んでいます。加えて、オーストラリアのカーボンクレジット(ACCU)や炭素除去クレジット(CORC)の取引も展開しています。

環境価値とは、温室効果ガスの削減や生態系保全といった地球環境への貢献を指します。カーボンクレジットや再生可能エネルギー証書の取引は、企業が環境目標を達成するための有効な手段として広く活用されています。Xpansivは、企業がこれらの取引を通じて、社会的責任を果たしながら具体的な環境目標を達成できるプラットフォームを提供しています。

1-2. Xpansiv(エクスパンシブ)が注目される背景

Xpansivが注目される理由には、環境保護と持続可能なビジネスモデルへの移行が急務となっていることが挙げられます。気候変動による極端な気象や資源枯渇が生態系や人々の生活に悪影響を与えているため、温室効果ガスの削減や資源の効率的利用が不可欠です。また、プラスチック汚染や廃棄物の増加が環境を脅かしており、これらの問題に対処するための国際協力が求められています。

このような状況下で、サステナブルなビジネスモデルへの移行が世界的な課題となっており、企業や投資家は信頼性の高い取引を通じて環境影響を管理する必要があります。Xpansivは、カーボンクレジットや再生可能エネルギー証書を取引できるプラットフォームを提供しており、これにより企業が簡単に環境目標を達成する手段を提供しています。

さらに、Xpansivはブロックチェーン技術やデジタル証書を活用し、取引の透明性と信頼性を確保している点も評価されています。この技術により、環境価値商品の真正性が保証され、リアルタイムでの取引が可能です。

2. Xpansiv(エクスパンシブ)の特徴

2-1. 世界最大規模

Xpansivは、世界の環境価値取引市場の95%以上を占める規模を誇ります。取引所では、カーボンクレジットや再生可能エネルギー証書など、多様な環境価値商品が取引されています。2021年および2022年には、取引されたカーボンクレジットの価値が13億ドルを超えました。

2-2. 多様な環境価値商品の取り扱い

Xpansivでは、カーボンクレジットや再生可能エネルギー証書など、多様な環境価値商品を取り扱っているため、企業や投資家は自社の環境目標を達成するために必要なクレジットや証書を効率的に取得することができます。具体的には、ボランタリーカーボン市場整合性協議会(ICVCM)が策定したコアカーボン原則(CCPs)や、航空業界の排出削減枠組み「CORSIA」適格クレジットなど、国際的に認知された高品質なクレジットが取引されています。

2-3. ブロックチェーンテクノロジーの活用

Xpansivは、ブロックチェーンを活用し、取引の透明性と信頼性を向上させています。これにより、環境価値商品の真正性が保証され、取引履歴も明確に記録されます。

2-4. デジタル証書の導入

Xpansivは、環境価値商品に対してデジタル証書を導入しています。デジタル証書により、取引がスピーディに行えるようになり、物理的な証書にかかるコストが削減されます。さらにリアルタイムでの取引履歴の確認や、真正性の検証も容易になります。

2-5. 国際的な取引対応

Xpansivは、国際的な市場にも対応しており、さまざまな国や地域で環境価値商品の取引が可能です。これにより、企業はグローバルな環境目標に貢献でき、異なるマーケットの規制にも対応できます。

2-6. 大企業とのパートナーシップ

Xpansivは、CMEグループやS&Pグローバルコモディティ・インサイトと戦略的パートナーシップを結び、信頼性の高い取引環境を提供しています。これにより、クレジットの先物取引など、多様なサービスを展開しています。

CMEグループは、Xpansivの取引所においてクレジット(N-GEO、GEO、C-GEO)の先物取引を行っており、これまでに2億トン以上が取引されています。また、S&Pグローバルコモディティ・インサイトは、カーボンベンチマークの評価を提供しており、Xpansivはこうした権威ある大企業とパートナーシップを締結することによって、よりクオリティおよび信頼性の高い取引環境を実現しています。

2-7. 環境影響の見える化とデータ分析

Xpansivでは、取引による環境価値の影響を可視化するツールやデータ分析機能を提供しています。ユーザーは、取得したカーボンクレジットや再生可能エネルギー証書が環境にどのような影響を与えるかを確認できるだけでなく、取引履歴やパフォーマンスを評価するレポートも生成できます。これにより、企業は環境目標の達成度を把握し、戦略的な意思決定に役立てることができます。

3. Xpansiv(エクスパンシブ)の最新の動向

3-1. JCEXとの提携

2024年7月12日、Xpansivは「Xpansiv Connect™」と、株式会社enechainが運営する「日本気候取引所(JCEX)」の連携について、基本合意書を締結しました。enechainはエネルギーの価値交換を行うマーケットプレイスを運営しており、カーボンクレジットや非化石証書の取引を広く展開しています。

今回の提携により、日本企業はJCEXを通じ、Xpansivの市場で高品質なボランタリークレジットをシームレスに売買できるようになります。日本政府が掲げる2050年カーボンニュートラル目標の達成に向けた企業の温室効果ガス削減を支援するため、この連携は重要な一歩となります。

現在、グローバルマーケットにおいては、環境対応が進んだ企業が消費者や投資家から支持を得て競争優位性を持つといった事例が増えてきており、エコフレンドリーな経営がますます重要視される傾向が見られています。

こうした状況の中、企業は自社の努力で温室効果ガスの削減に取り組んでいますが、その一方で、多くの企業にとって、自社の努力だけでカーボンニュートラルを達成することはテクノロジー的な理由などから非常に難しいというのが現状であり、温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして国が認証する「J-クレジット」や非化石証書などの環境価値を利用した削減も必要となっています。

しかし、日本国内のJ-クレジットをはじめとするカーボンクレジットの供給量は年間150万トン程度に限られており、企業のカーボンニュートラルな商品を開発したいというニーズに追い付いていないのが実情です。こうした問題を解消するためにも、グローバルマーケットへのアクセスを提供するこの提携が注目されています。

3-2. アラムコ・ベンチャーズ主導の資金調達

Xpansivは2024年5月、世界有数の総合エネルギー・化学企業である「アラムコ(Aramco)」のグローバル・ベンチャー・キャピタル部門である「アラムコ・ベンチャーズ(Aramco Ventures)」が主導する資金調達を完了したことを発表しました。

今回の資金調達に際して、アラムコ・ベンチャーズのマネージングディレクターであるダニエル・カーター氏は、グローバルなエネルギー移行を迅速に進めるためにあたって、マーケットがどれだけ重要になってくるかを理解していること、さらに、Xpansivが新しい取引商品やマーケット、および機関向けマーケットインフラの革新者として中心的な役割を果たしており、今後の発展に大きく貢献していることを認識していると述べました。

今回の資金は、Xpansivのグローバル市場インフラの開発や、今後の投資および買収戦略を推進するために使用される予定です。同社はすでに11件の買収と戦略的投資を完了しており、今後のさらなる成長が期待されています。

4. まとめ

Xpansivは、カーボンクレジットや再生可能エネルギー証書(I-REC)の取引をデジタルプラットフォーム上で提供する、世界最大の環境価値取引所です。企業や投資家が、信頼性の高い環境価値商品を効率的に取引できる環境を提供することで、カーボンニュートラルの達成を強力に支援しています。

取引の透明性や信頼性を確保するために、ブロックチェーン技術やデジタル証書を活用しており、取引履歴の追跡や環境価値商品の真正性がリアルタイムで確認できる仕組みを整えています。このような技術革新は、企業が安心して取引に参加できる基盤を築き、サステナブルなビジネスの実現をサポートしています。

近年、日本気候取引所(JCEX)との提携など、グローバルな市場展開も加速しており、日本企業がカーボンクレジット市場にシームレスにアクセスできるようになるなど、国内外の企業にとっても重要な役割を果たしています。また、アラムコ・ベンチャーズをはじめとする世界的企業からの資金調達により、グローバル市場でのさらなる成長が期待されています。

今後、Xpansivはグローバルなカーボンマーケットで中心的な役割を果たし続けるでしょう。特に、カーボンニュートラルを目指す世界各国の企業や政府が、効率的かつ透明性の高い環境価値取引を必要とする中、Xpansivの技術とプラットフォームは不可欠なインフラとなります。

展望として、Xpansivは単なる取引プラットフォームにとどまらず、環境価値の可視化やデータ分析機能の強化を通じて、企業の意思決定をサポートする役割を担っていくでしょう。企業がサステナブルな未来を築くためには、カーボンクレジットのような商品をいかに効率的に活用し、その効果を測定・報告できるかが重要です。Xpansivはこうしたニーズに応えるために、技術革新を続け、環境価値市場全体を牽引していく立場を強化していくと考えられます。

さらに、企業や投資家にとって、環境価値商品の信頼性と透明性が高まることで、カーボンニュートラル達成に向けた行動はより迅速かつ効果的になるでしょう。Xpansivは、グローバルな環境目標達成の一助となるべく、国際的な連携や新たな市場の開拓を積極的に進め、持続可能な未来に向けてその存在感をさらに高めていくことが期待されています。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12