ブロックチェーンを活用したプラスチッククレジットの発行でプラスチックオフセットを実現する「Plastiks」とは

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目次

  1. Plastiksとは?
    1-1. 仕組み
    1-2. 導入方法
  2. マーケットプレイスの存在
  3. プラスチッククレジットの未来

Plastiksとは?

「Plactiks」は、NFTを活用したプラスチック回収プラットフォームです。同プラットフォームでは「Plastic Recovery Guarantee (PRG)」と呼ばれる「プラスチック回収証明書」をNFTで発行しており、プラスチック回収を支援した事業者に発行される仕組みです。

引用:Plastiks

Plactiksはでは現在までに168万9,950キログラム(0.5Lのペットボトル1億8,269万8,918本分)のプラスチックを回収しています。

イメージとしては、カーボンクレジットのオンチェーンマーケットプレイスのプラスチック版です。カーボンクレジットも自社が排出した温室効果ガスを測定し、カーボンクレジットを購入することでカーボンオフセットを目指すと共にクレジット生成事業者を応援します。また、カーボンクレジットの購入(=カーボンニュートラルを目指す活動)自体が企業のブランディングに繋がり、顧客からの評価を高め、会社の評価を高めることにも繋がります。

Plactiksは「PRG(プラスチック回収証明書)」を「プラスチッククレジット」とも呼んでおり、カーボンクレジットの売買と近い思想から誕生していることが分かります。では、より具体的にその仕組みを見ていきます。

仕組み

まずは事業者目線での使い方を説明します。大きく以下の4ステップが存在します。

  1. プラスチックの回収目標の設定
  2. 支援する復興(回収)プロジェクトを選択
  3. 回収が実施されPRGの受け取り
  4. 社外へPR

1つずつ解説します。

①プラスチックの回収目標の設定

まずは企業毎の目標設定です。自社が排出しているプラスチック分を回収するのか、排出以上を回収するのか、自社ではあまり出していないがプラスチック回収に貢献したいのか、そういった具体的な数値目標を設定します。

②支援する復興(回収)プロジェクトを選択

ブラジルからケニア、タイに至るまで、世界中で10を超えるプロジェクトがあるため、最も共感を覚える復興(回収)プロジェクトを選択します。

復興プロジェクトは主に発展途上国に存在しますが、発展途上国は主に教育の欠如とリサイクルインフラの未発達が原因で、プラスチック廃棄物の最も大きな影響を受けています。Plastiksはこれらのプロジェクトを支援することで、プラスチック汚染の解決にも貢献しようとしています。

③回収が実施されPRGの受け取り

PRGは回収およびリサイクルされた特定の量と種類のプラスチックに対応するプラスチック回収証明書です。どのような種類と量が、どこから、どの法人から回収されたのかが記載されており、全てがブロックチェーン上で全て公開されるNFTです。

尚、ブロックチェーンはCeloを利用しています。

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④社外へPR

もちろんこれはマストではありませんが、企業としてプラスチックの回収を行う以上、収益向上に繋がる必要があります。Plastiksもそこは意識しており、支援してくれた企業にはブランディングに繋がるようにPRすることを推奨しており、そこに寄与するようなソリューションも提供しています。分かりやすい事例としてはPRGをフィジカルな媒体でも届けることで、オフィスや店舗などに飾ることができます。

さらに、Plastiksでは「サステナビリティ ダッシュボード」というツールを用意しており、ここではリアルタイムでプラスチックの回収状況が常に確認でき、その様子を顧客やコミュニティに公開することが可能です。また、後述しますがPlastiksの利用方法は単純にPRGを購入して支援するだけでなく、ECでの決済毎に支援をしたり、自社の売上に応じて支援するなど、顧客との関係を強化する形での支援も可能です。「サステナビリティ ダッシュボード」ではそれら顧客とのタッチポイントや利用状況も全て閲覧可能です。

以上、大きく4ステップにてPlastiksが利用されています。

導入方法

サステナビリティ ダッシュボードの解説でも少し触れましたが、企業がPlastiksを導入するには主に以下の方法が存在します。

  • 自社の排出量を計測しPRGを購入する
  • ECでの購入時にウィジェットに表示し顧客が自由な金額を支援できるようにする
  • ユーティリティNFTを作成しその販売収益をプラスチック回収に当てる
  • 商品の売上の一部を活用し購入する

なので、単純に購入したものをPRするだけでなく、顧客と共にプラスチック削減に貢献していける一種のロイヤリティ施策として導入が可能です。世界的にはZ世代を中心に環境問題への意識が高まっています。Plastiksを実店舗やECに導入することで新規顧客の開拓や既存顧客のロイヤリティ増加に繋がることが期待されています。

マーケットプレイスの存在

先述した通り、企業がユーティリティNFTを作成して、その販売収益をプラスチック回収に当てるというモデルも存在します。そこでは様々な企業がNFTを作成し販売しており、Plastiksはそのマーケットプレイスの運営もしています。これらのNFTは購入される毎にプラスチック回収のために利用されます。

引用:Collectibles

中でも2023年6月に世界的サッカークラブFCバルセロナとコラボしたNFTコレクションが発表され話題となりました。

このコレクションの収益はプラスチックの回収に利用されます。NFT購入者はデジタルコレクションとして保管して楽しめるのと同時に、2023年のバルセロナの選手のサイン付きユニフォームが当たる抽選券がついています。デジタルアート、環境への貢献、ファンにも嬉しいユーティリティ、これらを揃えた非常に面白い取り組みです。

プラスチッククレジットの未来

以上、ここまで「Plastiks」のプロジェクト概要について解説しました。

現在のReFi領域ではカーボンクレジット領域が盛り上がっていますが、プラスチックの廃棄も同様に環境問題の中の大きな1つであることは間違いありません。日本でも紙ストローの採用やエコバッグの推奨など、プラスチック削減に向けての意識が向上しています。

一般層という観点で見ると、目に見えない二酸化炭素の排出量よりも目にみえるプラスチック量の削減の方が認知度も高く、また意識が高いかもしれません。加えて、特に発展途上国の中でプラスチック汚染は深刻で、実害が分かりやすく出ている領域でもあります。そういった世論も踏まえて考えると、ブロックチェーンを活用したプラスチッククレジットの動きがこの先ますます加速していってもおかしくありません。FCバルセロナのキャンペーンのように、自社が排出しているプラスチックの削減のために、ユーティリティをつけてNFTを販売することでプラスチック削減に貢献する企業が続々と誕生しそうです。

プラスチックリサイクルの市場予測を見ると、化学的な処理を施すことで、プラスチックを再利用する「ケミカルリサイクル」市場が急速に拡大していることが分かります。2022年から2030年にかけて10倍になる見込みです。

しかし、プラスチックの過度な回収や過剰なプラスチックの回避は生態系に影響を与えてしまったり、例えばエコバッグの制作のために余計なエネルギーが消費されるなど別の問題の火種になりかねません。また、紙ストローの使い心地よりもプラスチックストローの方が好まれる場合も多く、人々の生活に無理ない範囲でプラスチック回収のモデルが組み込まれるには更なる検証や実験が必要です。

とはいえ、プラスチックの廃棄は解決しなければいけない問題の1つであることは間違いなく、またカーボンクレジットと同じくブロックチェーンとの相性が良いことは間違いありません。Plastiksの今後の活動やより広範囲のブロックチェーンを活用したプラスチック問題の解決にも注意して追いかけていきたいと思います。