ブロックチェーンで偽造品対策!日本酒「水端」がSBIのトレーサビリティサービス「SHIMENAWA」を導入

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米国のスーパーマーケット「ウォルマート」では、商品の追跡(トレーサビリティ)のために独自のブロックチェーンが用いられています。近年、食品やアパレル業界などでは、不正な流通を防ぐためや、問題が発生した場合の迅速な解決策としてブロックチェーンの採用が一般的となってきています。

そんな中、奈良県にある油長酒造が、SBIトレーサビリティが提供するブロックチェーントレーサビリティサービス「SHIMENAWA」の導入を決定したと、5月30日に発表されました。ブロックチェーンを採用する背景や、ブランド品がブロックチェーンをどのように活用するのか、以下で詳しくご紹介します。

目次

  1. 「水端」ブランド日本酒、SBIの「SHIMENAWA」導入へ
    1-1. 日本酒の偽造品とその問題性
  2. SBIトレーサビリティ「SHIMENAWA」の詳細
  3. 店頭で「未開封」の確認が可能
  4. 高級ブランドとブロックチェーンの関係性
    4-1. ブロックチェーン技術の基本的な概要
    4-2. トレーサビリティにブロックチェーンを活用するとは?
    4-3. ブロックチェーンによるトレーサビリティの具体的な事例紹介
  5. まとめ

①「水端」ブランド日本酒、SBIの「SHIMENAWA」導入へ

「SHIMENAWA」の導入は、油長酒造が誇る「水端(みづはな)」ブランドから始まります。特に注目すべきは、水端1568(mizuhana 1568)から導入が始まる点です。

SHIMENAWA

今後も、油長酒造の代表銘柄である「風の森(かぜのもり)」や、「御酒之日記(ごしゅのにっき)」に記載された菩提山正暦寺(ぼだいさんしょうりゃくじ)の醸造技術を採用した夏季醸造0段仕込みの「水端1355」などにも、「SHIMENAWA」が順次導入される予定です。

1355

1-1. 日本酒の偽造品とその問題性

油長酒造の他にも、「梵」を提供する福井県の加藤吉平商店や、「零響(れいきょう) – Absolute 0 -」を提供する宮城県の新澤醸造店といった、他のプレミアムラインの日本酒提供者も、「SHIMENAWA」を導入しています。

「梵」ブランドでは日本酒である磨き2割の純米大吟醸「梵・超吟(BORN:Chogin):完全予約限定品」と、純米大吟醸「梵・夢は正夢(Born:Dreams Come True)」の2銘柄も、この「SHIMENAWA」の導入を進めているといいます。創業162年の加藤吉平商店が提供する「梵」は、国賓歓迎晩餐会や国際行事で採用されるなど、105ヶ国に輸出される日本酒として知られています。海外市場では、空き瓶が高額で取引され、それを利用した偽造品が横行している問題があります。残念ながら、「梵」もその被害に遭っているとの報告があります。

このような「商品偽造」の問題を解決するため、「梵」は「コルダ」やNFC/RFIDを用いたデジタルペアリングを採用し、未開封の「梵」であることを確認できるようになりました。

② SBIトレーサビリティ「SHIMENAWA」の詳細

SBIトレーサビリティが提供する「SHIMENAWA(しめなわ)」は、米国R3社の開発したエンタープライズ向けブロックチェーン「コルダ(Corda)」と、サトー社のNFC/RFID技術を組み合わせたデジタルペアリングを利用しています。また、今回、日本酒の不正流通を防ぐための新機能が追加されました。

「SHIMENAWA」は日本酒の不正流通を防ぐ目的で、品質の「真贋証明」や「開封検知」、そして「日本酒のストーリー可視化」などのサービスを提供しています。ブロックチェーンを用いた「真贋証明」機能により、日本酒を購入する消費者に対し、酒造メーカーとして本物を提供する確証を与えることができます。これにより、消費者からの信頼性が向上することが期待されます。

また、「開封検知」機能を利用すると、銘柄が「いつ」「どこで」「どれだけ」消費されたかのデータを取得できます。このデータは、酒造メーカーにとっては経営判断の一助となるだけでなく、消費者に対しては、購入した特別な日本酒の希少性を強調するという新たな価値を提供することが可能となります。

2021年9月に発表された「SHIMENAWA」は、同年12月よりコンビニエンスストアのローソンで、生産地情報表示のプラットフォームとして導入されました。中国上海のローソンでは、おにぎりのパッケージにQRコードを添付し、それを「SHIMENAWA」で読み取ることで、使用されているお米の産地情報を確認することができるようになりました。

③ 店頭で「未開封」の確認が可能

「SHIMENAWA」は店頭での未開封確認が可能な仕組みを提供しています。具体的には、購入前の未開封の日本酒の瓶に対してスマートフォンをタッチするだけで、NFCタグから取得した情報とブロックチェーンの情報を照合します。デフォルト値と一致すれば、「SHIMENAWA」で「未開封」であることが確認できます。

また、日本酒を開封した後でも、ボトルをスマホでタッチすることで、NFCタグの情報が「開封済」に変わります。そして、ブロックチェーン上でデフォルト値(=未開封)が取得した情報に書き換えられ、「SHIMENAWA」上で「開封済」と表示されます。

さらに、商品情報に加えて、ユーザーがスマホでタッチした日付情報もリアルタイムに「SHIMENAWA」の商流情報に可視化されます。これにより、商品の真正性が証明されることになります。
SHIMENAWA2

④ 高級ブランドとブロックチェーンの関係性

日本酒と同様に、高級ブランド業界も模造品の横行により長年、大きな経済的損失を被ってきました。OECD(経済協力開発機構)によると、2016年に著作権侵害物の取引額は過去最高を更新し、その金額は5090億ドルと推計されています。このような被害を防ぐために、高級ブランド業界ではブロックチェーンの利用による対策が始まっています。

4-1. ブロックチェーン技術の基本的な概要

ブロックチェーンを一言で説明するのは難しいですが、その基本的な特性としては、中央管理者が不要でデータの改ざんが難しい、取引履歴を維持できるデジタル台帳という点が挙げられます。ブロックチェーンは仮想通貨の基盤としても知られていますが、その根底にある技術は、改ざんの難しい取引履歴の維持という目的を達成するためのものです。

ブロックチェーンは各ノードが台帳を共有し、取引履歴を分散的に管理するという特徴を持っています。そのため、ブロックチェーンは「分散型台帳技術」(Distributed Ledger Technology)とも呼ばれています。この構造により、ハードウェアの障害によるシステムの停止リスクを大幅に減らすことができ、誰でも取引履歴を追跡することが可能となります。

物流業界や食品業界では、このブロックチェーンの特性を利用して、生産元から消費者までの履歴の正当性を証明し、流通に関わる全ての業者がそのトレーサビリティを確認できるようなシステムを構築しています。

4-2. トレーサビリティにブロックチェーンを活用するとは?

ブロックチェーンの特徴と利用事例を高級ブランドの問題に適用すると、原材料や製品のトレーサビリティの高度化が期待できます。製品のライフサイクル全体にわたる情報をブロックチェーンに記録することで、その製品がどの段階を経て消費者の手に渡ったのかを追跡することが可能になります。

ブロックチェーンに情報を記録することで一元的に管理が可能となり、業者から消費者まで、真正なブランド商品を確認するシステムを構築できます。流通過程の記録や証明書などは、商品に付けられたQRコードをスマートフォンでスキャンすることで簡単に確認でき、真贋判定をスムーズに行うことができます。

例えば、アメリカの大手スーパーマーケットチェーンである「ウォルマート(Walmart)」では、ブロックチェーン技術を活用して食品のトレーサビリティを確立し、安心・安全な食品購入環境を提供しています。詳しい内容については以下のリンク先の記事をご覧ください:

米ウォルマートが行っているブロックチェーンを利用したトレーサビリティとは

4-3. ブロックチェーンによるトレーサビリティの具体的な事例紹介

確かに、高級ブランドのトレーサビリティに関して、ブロックチェーンの活用事例は増えています。以下に具体的な事例をいくつか挙げてみます。

高級時計ブランド「VACHERON CONSTANTIN」(ヴァシュロン・コンスタンタン)

ヴァシュロン・コンスタンタンは、世界最古の時計ブランドで、リシュモン・グループ傘下の3大時計ブランドの一つです。このブランドは2019年からブロックチェーン技術を活用して商品の真贋判定に取り組んでいます。

時計ブランド「Breitling」(ブライトリング)

スイスの時計ブランドであるブライトリングは、2020年に同社の限定版モデルの証明書をブロックチェーンで管理すると発表しました。ブライトリングとヴァシュロン・コンスタンタンは、ブロックチェーンを活用したデジタル認証を行う「Arianee」コンソーシアムに参加しています。Arianeeはイーサリアムベースの許可型チェーンを運用し、コンセンサスアルゴリズムとしてProof of Authorityを採用しています。

世界最大のファッション企業「LVMH」

LVMHはルイ・ヴィトンやクリスチャン・ディオールなどの高級ブランドを所有しています。この会社は偽造品対策の一環としてブロックチェーンを導入しています。マイクロソフトとConsenSysが開発した「Aura Blockchain Consortium」は、LVMHの傘下にある高級ブランド品の履歴情報の追跡や真贋の検証を消費者に可能にする目的で設立された共同事業体です。

これらの例は、ブロックチェーンが高級ブランドのトレーサビリティを強化し、偽造品問題への対策を可能にする方法を示しています。ブロックチェーンの透明性と不変性は、商品の生産から消費までのプロセスを追跡し、消費者に確かな情報を提供するのに非常に効果的です

⑤ まとめ

日本酒から高級ブランドに至るまで、ブロックチェーンによって真贋の検証が可能になる事例を見てきました。正規店での購入であっても、原材料の出所やそれまでの過程が明らかになることで、買い手・売り手の両者にさまざまなメリットが生まれることになります。

ブロックチェーンを活用した技術は一見すると難解な印象がありますが、その実、QRコードを読み取るだけで製品履歴を見ることができたりと気軽に利用することも可能な技術です。その裏側には解決すべき課題などもありますが、サプライチェーンの改革を担う技術として注目されるブロックチェーンについて、今後も情報を追い続けたいと思います。

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立花 佑

自身も仮想通貨を保有しているWebライターです。HEDGE GUIDEでは、仮想通貨やブロックチェーン関連の記事を担当。私自身も仮想通貨について勉強しながら記事を書いています。正しい情報を分かりやすく読者の皆様に伝えることを心がけています。