【暗号資産取引所の元トレーダーが解説】暗号資産初心者が短期トレードをすべきではない理由

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2020年には暗号資産(仮想通貨)市場が活況を呈しており、以前からの投資家からするととてもいい年になったのではないかと思います。ビットコインの最高値更新ニュースはマスメディアでも取り上げられ、一部の取引所はテレビCMも再開しています。色々な場面で暗号資産の関心が高まるにつれて、日本の暗号資産取引所の口座解説者数も大きく伸びてきています。

しかし、暗号資産投資家の中には投資の初心者も多いことで知られています。大きな利益を狙って、リスクの高い短期売買を行っている傾向があると、筆者としては感じています。ここでは、暗号資産取引のリスクについて認識して頂き、初心者は短期トレードを控えたほうが良いと考える理由について説明していきたいと思います。

目次

  1. 価格の急騰に興味を持つことが危険な理由
  2. 暗号資産初心者が短期トレードを行うべきではない理由
  3. 暗号資産初心者はまず中期的なトレードで慣れていくこと

①価格の急騰に興味を持つことが危険な理由

ビットコインやイーサリアム等、2020年に多くの暗号資産が年初来で数倍に高騰しました。さらなる成長性に期待して、暗号資産を取引してみたいと考える方も多いでしょう。しかし、投資家の中には、価格高騰の勢いに釣られて焦っていたり、新型コロナウィルス対策の影響で収入が減少しているなど心理的な焦りに駆られて暗号資産取引に取り組もうとしている方もいるかと思います。

まず、最初にお伝えしたいのは「価格の急騰を自分でも享受できると思うな」ということです。価格は実際に急騰しているため当然恩恵を受けることができる可能性はあります。

しかし、心理的に安定しない状態で取り組んでも、投資というのは上手くいきません。また価格の急騰に目が眩んで投資を行おうとしている方は特に注意してください。なぜなら、「価格の急騰が起きている=反対方向に大きく損失が出る可能性もある」という可能性を軽視しているからです。

価格の急騰に目が眩む投資家ほど資金的に余裕がなかったり、心理的に追い詰められていたり、生活に必要な資金を投資に回している場合が多く、そのようなお金を投資に回すべきではないと個人的には考えています。

これは暗号資産に限った話ではありませんが、投資は余裕資金で行うことというのが必須なので必ず全て失っても生活が変わらないという範囲の金額で行うようにしましょう。投資を行う上で大事なことは「リスクとリターンは表裏一体」ということを理解することです。値動きが大きいということは、リターンの可能性も大きいですが、その分反対方向で推移した場合のインパクトも大きいということです。そして、この値動きが大きい投資商品の資金管理やリスク管理というのはとても難しいものです。

値動きが大きいということはその分損失を確定するための損切りラインの幅は大きくしないといけないため、その幅をどのように設定するのか、またポジションの取り方はどのようなサイズが適切なのか等、値動きが小さい投資商品とは異なり考えるべきことや心理的な不安が大きくなるということはしっかりと理解しておきましょう。

②暗号資産初心者が短期トレードを行うべきではない理由

次に暗号資産初心者が短期トレードをいきなり行うべきではないということについて解説します。

暗号資産の場合、数秒で1%以上動いたりすることが頻繁にあるため、レバレッジを利用して証拠金として入金している金額以上のリスクを取ると、急に資産が急増したりするため、その点が魅力と感じる投資家も多いものです。

損小利大を実現するトレード能力が必要

しかし、数分のような短いスパンで細かくトレードを行う場合は、1取引毎に取引手数料がかかるため、その取引手数料以上のリターンを出すことが必須となります。また暗号資産初心者が短期トレードを急にスタートした場合にやりがちなミスとしては「損大利小」のようなトレードをしてしまうということです。

通常トレードの世界では「損小利大」というのが基本と言われています。損小利大というのは損失は小さく、利益は大きく取り、1勝1敗でも利益が出るようなトレードを指しています。

しかし、短期でレバレッジを利用して値動きが大きいビットコインのような商品でトレードを行うと、必ず利益が出た場合に「また利益がなくなる水準まで戻るのではないか」という不安が頭を過ぎるものです。筆者自身、今でもそのような考え方が頭を過ぎることは日常茶飯事です。それだけ投資をずっと行っている人でも常にトレードでは不安心理が頭を覆うことがあります。

不安心理に負けて短期的に利益が少し出ているからといって理由なく利益確定をして安心感を得てしまうと、今後も同様の行動をとってしまうことでしょう。しかし問題は次のトレードで少し損失が出た場合です。こうした場合、「また損失が0になった時点でポジションは決済しよう」という心理が働くものです。こうしたトレードでは損切りのラインを決めていないことも多いため、そのまま損失が0に戻らず損失が拡大した時でもそのまま保有を続けてしまうという人も珍しくありません。

そのような行動を行っている限り、何度トレードしても負けることでしょう。取引を重ねるということは、取引毎に発生する手数料分、期待値は低下することになり、その期待値が低下する分をカバーするトレード能力が必要になります。

暗号資産はリスクコントロールが難しい

また短期トレードをすべきではないもう一つの理由は「リスクコントロールが難しい」ということです。値動きが暗号資産のように大きく、すぐに大きな変動が短時間で生じる投資商品はとてもリスクコントロールが難しいものです。

暗号資産初心者の場合、ポジションを保有して急に反対方向に動き始めると不安が生じるものです。その値幅は他の投資商品と比較しても大きいことからその分心理的な負担は大きくなります。

この心理的負担をコントロールすることが投資ではとても大切なことなのですが、いきなり値幅が大きいもので挑戦するということは上級者向きであり、筆者としては最初から短期トレードに挑戦するということは難しいと感じています。

③暗号資産初心者はまず中期的なトレードで慣れていくこと

筆者の結論としては暗号資産初心者はまず中期的なトレードで暗号資産の値動きや癖を把握しながら慣れていくことが大切です。

投資商品の癖を把握することは、勝率を高める上で大事なポイントです。短期的に大きな値動きを取りに行きたいと思うかもしれませんが、まずは勉強期間を設けてしっかりと練習することを心掛け、淡々とトレードを行うことが大切です。

マーケットはなくなるものではなく、いつでもエントリーしたり止めることは可能です。焦らずゆっくりとリスクとの付き合い方をまずはしっかりと学び、その後トレードルール等考えながらステップバイステップで成長していけばいいと思います。

いきなり上級者に飛び級することは難しいということをしっかり理解して、プロと同じ土俵で戦っていることを意識しながらスタートしてください。自分に謙虚に素直に誠実に向かい合ってトレードするようにしましょう。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12